前回、客単価・購買頻度を上げるために新商品・サービスをリリースすることをお勧めしました。
今回は、新商品・サービスを企画・開発するための大まかな流れをお伝えします。
Contents
顧客は誰か?何に困っているのか?
最初に定義すべきは、顧客が誰で、何に困っているのか?です。
良くIT企業などに商品企画をしてもらうと、
「IoTで新商品をつくりたい」
「AI(人工知能)を使ってみたい」
と技術からアプローチしてくるケースが、非常に多いです。「IoTでなんかやれ」という上司から命令されるパターンもあります。
技術者として、新しいものにチャレンジする気持ちは素晴らしいと思います。しかし、その背景に明確な「顧客のお困りごと」があれば良いのですが、多くの場合、そんなことはありません。
新技術に触れたいのは勝手な自分の都合です。そうであれば、自分・自社で学ぶ機会をつくれば良いのです。いわゆる基礎研究であって、顧客に何かを提供する段階ではありません。
商品・サービス企画としては、顧客が抱えている問題を解決しない限り、売れるものはつくれないのです。
この点、技術系企業は、頻繁に陥る罠です。
経営に携わる方であれば、商品企画は「顧客の課題からスタートする」と決めた方が良いでしょう。
既に事業がある程度まわっている企業であれば、前回お伝えした通り、「既存顧客」のお困りごとを考えてみましょう。新規顧客を狙う商品企画は、経験を積んでからで十分です。
一方、創業・起業直後であれば、既存顧客はありませんから、獲得したい顧客と、そのお困りごとを仮説で立ててみましょう。
商品・サービスを決める
続いて、商品・サービスを決めていきます。
当然、顧客のお困りごとを解決するための商品・サービスです。
商品そのものだけではなく、どこで・いくらで・どうやって、提供するのか?を考えましょう。
例えば、この記事でお伝えしている内容は、普段、私がコンサルティングや研修で提供しているものです。コンサルティングなら2時間5万円。研修は時間の長さなどによって、価格は上下します。
私(渋屋)という人間が、口頭やプレゼンテーションでお伝えしています。しかしそれだけでは、私と直接お会いした人にしか伝えられません。さらに、お伝えできるのは、お会いしている間だけ。お客様が復習しようと思っても、そう簡単にはできないのです。そういう問題があったため、このブログ記事で、私の経験を無償で共有することにしたのです。
そのためこのブログという(無償の)商品は、
- 私の既存のお客様に向けて(誰に?)
- コンサルティングや研修でお伝えしたことを本当に活かしていただくためのフォローアップ(何を?)
という価値をお届けしていることになります。(もちろん、これからお会いするかもしれないお客様に向けても書いているのですが)
戦略マップで定性面を徹底検討
- 顧客は誰か?
- 何に困っているのか?
- その困りごとを解決する商品・サービスは何か?
このような思考を支援するとき、
私は自作の「戦略マップ」というツールを活用しています。
戦略マップは、このようなものです。(抜粋版)
商品・サービス企画の「大まなか流れ」とお伝えしましたが、一方通行ではありません。
- 顧客
- 困っていること(価値)
- 商品・サービス
- 商品・サービスを提供するためのリソース
の間を行ったり来たり、何度もグルグルと考え続けるのです。
時間がかかるところですが、ここがブレると商品・サービスが中途半端なものになってしまいます。個々の枠をしっかりと具体化し、さらに全体として一貫性が感じられるまで、徹底して行いましょう。
シミュレーションで販売計画・体制を構築する
ここまでは定性的な商品コンセプトが中心でした。
しかし、実際に商品を売るためには、その開発コストや販売体制(コスト)も考慮しなければなりません。実現可能な計画でなければ、絵に描いた餅になってしまいます。中小企業にそんなお遊びをしているゆとりはありません。つまり定量的なシミュレーションが欠かせないのです。
これを行うことによって、
- いつから、どれぐらいの売上が必要か?
- マーケティングコスト(例:Web広告)をどれだけかけられるのか?
- 初期リリースまでの開発期間と人員の最適解は?
- 営業体制をどう組めば良いか?代理店は必要か?
- 原価はいくらまでかけられるのか?
という判断ができるようになります。
このように定性的・定量的な検討を通じて、ようやく商品・サービスを開発し始めることができます。全体像を図式化すると、このような流れです。
詳細は省きますが、これが新商品・サービス企画の大まかな流れです。
商品・サービス販売後の再評価
さて、改めて基本に戻ります。
新商品・サービスを企画するのは、客単価や購買頻度を上げるのが目的でした。
リリース後、本当にこれらが改善されたのか?を評価し、次の行動計画につなげていきます。
「評価できないことは改善できない」のですから、常に客数・客単価・購買頻度は測定できるようにしておきましょう。と言うより、日常的に測定しておくことが必要ですね。
「利益を生み出す種と仕掛け」編のまとめ
最後にこの連載「利益を生み出す種と仕掛け」を振り返りましょう。
売上を伸ばす方法には5つの方法があります。
- 新規顧客を獲得する
- 流出する顧客を食い止める
- 単価を上げる
- 購買点数を増やす
- 購入頻度を上げる
これに支出を減らす施策を組み合わせることで、会社に利益を残す仕組みをつくり上げることができます。
繰り返しになりますが、売上・利益を上げ続けられる組織には、必ずその仕掛けがあります。その仕掛けは、この5つの方法を組み合わせることで表現できるのです。
具体的な打ち手として、
- 顧客の状態をデータで把握すること
- 顧客への接点をデザインすること
- 新商品・サービスをリリースすること
などをご紹介してきましたが、実際に打てる手は、もっともっと、数限りなくあります。
(私自身、手元でリスト化しています。効果が上がるまで、あらゆる手を打ち続けるのです)
打ち手をどう組み合わせるのか?は経営層が示すべき指針です。そして、示すだけでなく、評価を行い、次の判断を行うのも経営層です。この仕掛けは、短期間でいきなりできるものではありません。時間をかけて、土台を固めていくような取り組みだからです。
ですから、いち早く始めて、PDCAをまわしてみることが先決です。
少しずつ貴社のビジネスの「礎(いしずえ)」を築いていきましょう!
まだまだお伝えしたいことはあるのですが、「利益を生み出す種と仕掛け」編はいったん、これで終わりにします。本連載の記事を以下にまとめておきます。
- なぜ売上や利益が必要なのか(利益は目的ではなく血液のようなもの)
- 継続的に利益を上げる組織には、仕掛けがある
- 利益率は経営者がデザインするもの
- 「売上30%アップだ」は経営者の思考停止でしかない
- 集客の悩みの真の原因は・・・・新規顧客の獲得ではない
- 顧客流出を防ぐためのデータ活用方法
- 思いつきで顧客に会ってはいけない
- 新商品で客単価・購買頻度を上げる
- 新商品・サービスを企画・開発する流れ(←今回はここ)
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