利益を生み出す仕組み

顧客流出を防ぐためのデータ活用方法

前回、集客の真の問題は「新規顧客獲得」ではなく、むしろ「既存顧客の流出」であることをお伝えしました。

集客の悩みの真の原因は・・新規顧客の獲得ではない前回、「売上を上げろ!」という指示は、何も言ってないのに等しいことをお伝えしました。ちゃんと現状把握をして、それに伴って売上を上げるため...

では、既存顧客の流出をどうやって防止するのか?今回はその具体的な方法についてご紹介します。

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「流出顧客」を定義する

最初にやるべきことは、「顧客の流出」を定義することです。どれくらいの期間、取引がなくなったら「流出」と定義しますか?

コンビニやスーパーだったら、1ヶ月も来なくなれば、何らかの原因で来なくなってしまったと言えるでしょう。車の販売だったら、1年来なくても流出とは考えにくいです。このように、ビジネスの内容によって、流出と判断されるまでの期間が異なります。

ただ、車の販売のように取引の間の時間が長いビジネスにおいても、いったんは1年くらいを流出と定義すると、上手くいくことが多いです。逆に言うと、1年に1回くらいは取引が行われるように「ミニ商品」をつくっておくと良いのです。詳しくは後述します。

最短で1ヶ月~最長1年として、どのくらい取引がなくなったら「流出」とするか、まずは決めましょう。

顧客との最終取引日を洗い出す

次に既存顧客との最終取引日を洗い出します。対法人のビジネスであれば、会計データや請求書データを集めることで、過去の取引履歴を一覧にすることができます。売上日を基準にするのか、入金日を基準にするかは、一度決めたら、それを継続します。

私はこんな感じのやり方で行います。エクセルが得意な人だったら、もっと上手くやれるのかもしれません。簡単にまとめると以下のような手順です。

  • 取引先→取引日(新しい順)でソート(B、C列)
  • COUNTIF関数で同じ取引先に対する取引数をカウント(G列)
  • フィルタを使って、カウント数が1のもの、つまり最新の取引だけを表示します(G列)
  • TODAY関数と取引日のセルを引き算して、経過日数を出します(H列)
  • 365日を超えたセルを条件付き書式で色を変えます(H列)

私の独立以来、約4年間の全データで行うと、こんな感じになります。(グーグルからの広告費収入だけ面白いので載せておきました(67行目)笑)

残念ながら、取引がなくなっている顧客が、結構あります。つらいですが、それを見つけるための作業ですから、淡々と行いましょう。また直近の対策を練る場合には、4年間もデータは要らず、2年程度あれば十分です。

ちなみに取引先をソートするとき、古い日付順にすれば、初回取引日からの経過日数も分かります

ここまでは作業です。会計データや請求書データ、あるいはECサイトの取引データを元にする場合にはエクセルで作業することになるでしょう。CRMやSFAを使って顧客管理をしている場合には、これらのレポートが自動的に出力されるように設定しましょう。

なお一般消費者向けのビジネスの場合、個人を特定できない問題があります。ポイントカードなどを導入したがるのは、個人を特定するためなんですね。またEC化が進むのは、顧客の利便性を追求しているのもありますが、個人を特定する意図もあります。法人ビジネスであれば、顧客が特定できるので、ありがたくデータを活用しましょう。

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最終取引日から一定期間経過したら連絡する

大切なのは、最終取引日からの経過日数を知ることではなく、その条件に応じて、対策を練ることです。基本となるのは、連絡を入れることです。

「例の件、その後いかがでしょうか?」
「商品の使い勝手はいかがでしたか?」

などと連絡するだけでも、一定数の顧客から反応があります。私もつい先日、連絡を入れて法人顧客のビジネスが復活したところです。

また新商品・サービスの連絡をすることで取引が復活することもあります。季節の商品をご案内するのも良いですね。あるいは、何らかの情報をお伝えするのも良いでしょう。貴社の最近の動きを伝えたり、業界ニュースを伝えたり。

特に長期間離れてしまった顧客ではなく、期限に近づいている顧客に効果が高く出ます。1年(365日)を流出と定義したなら、10ヶ月(約300日)程度から、連絡を入れてみると良いです。もっと言えば、既存顧客に何らかの方法で、月に1度は連絡を入れるようにしたいですね。(私がメルマガで既存顧客のフォローをしているのは、そういう理由です)

効果測定して改善を繰り返す

実際にやってみて、効果を測定していきます。そして連絡の入れ方や、その中身について改善を加えていきます。バケツの穴(流出)を完全に防ぐことはできなくても、何もやらないよりは、かなり高い効果が出てきます。

新規顧客を1社獲得するよりも、既存顧客1社の流出を防ぐ方が、明らかに効果は出やすいですし、コストも時間も掛かりません。こうやってバケツの穴を防ぐ方法を組織として習得しつつ、新規の獲得を目指しましょう。

まとめ
  • 会計・請求書・CRM/SFA・ECサイトなどのデータを活用する
  • 最終取引日からの経過日数を割り出す
  • もうすぐ流出してしまう顧客、流出直後の顧客に連絡を入れる

次回は顧客との関係を良好に保つためのコミュニケーション・デザインについてお伝えします。

思いつきで顧客に会ってはいけない前回まで、「売れる仕組み」をつくるために、まずは顧客の流出を防ぐことから始めることをお勧めしてきました。 https://100a...

本連載の記事を以下にまとめておきます。

  1. なぜ売上や利益が必要なのか(利益は目的ではなく血液のようなもの)
  2. 継続的に利益を上げる組織には、仕掛けがある
  3. 利益率は経営者がデザインするもの
  4. 「売上30%アップだ」は経営者の思考停止でしかない
  5. 集客の悩みの真の原因は・・・・新規顧客の獲得ではない
  6. 顧客流出を防ぐためのデータ活用方法(←今回はここ)
  7. 思いつきで顧客に会ってはいけない
  8. 新商品で客単価・購買頻度を上げる
  9. 新商品・サービスを企画・開発する流れ

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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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