マーケティング思考

どの顧客層にアプローチするのか?「ホールプロダクト」を知っておく

新商品・サービスを企画するとき、「どの顧客層にアプローチするのか?」は重要な問いです。

変化を積極的に体験したい「イノベーター層」なのか?変化を最後まで拒む「ラガード層」なのか?顧客層については、こちらの記事をご覧下さい。

顧客像を描くときに必要なイノベーター理論商品・サービスの企画をするときに必要なのが顧客像です。この顧客像において、イノベーター理論の層を組み込んでおかないと、方向性が全くズレてしまうのをご存知でしょうか?この記事ではイノベーター理論(イノベーションのベルカーブ)の基本をご紹介します。...

どの層を狙うのかによって、提供する商品・サービスも変わります。
それが「ホールプロダクト」という理論です。

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ホールプロダクトとは?

「ホールプロダクト」は、ハーバード大学大学院のT・レビット教授が1960年代に提唱した考え方です。

ホールプロダクトは下側の円状部分です。その上に私がイノベーター理論の顧客層を追加しました。

ホールプロダクトとは「完全な商品」のことです。
企業が出荷する商品の機能と、購入者の課題の差を埋めない限り、商品は顧客の期待に応えることはできません。

コアプロダクト

企業が出荷する商品そのものです。
特に最初に出荷する商品を指すこともあるようです。
その商品が提供する「中核的なベネフィット」とも言えます。

例えば、デスクトップパソコンの場合には、筐体だけが入っていて、ディスプレイ・キーボード・マウスなどは含まれていません。

「イノベーター」「アーリーアダプター」にとっては、周辺機器のカスタマイズも楽しみの1つですから、コアプロダクトだけで十分かもしれません。

一方、それ以降の顧客層にとっては、使うために必要なものが入っていないわけですから、怒り出す人がいても不思議ではありません。

昔はパソコンで良くあったトラブルの1つです。
売る側の立場からすれば、「自分の環境にあったディスプレイを選んでよ」と思うかもしれませんが、それこそがイノベーター・アーリーアダプターの発想であることを知っておくべきです。

期待プロダクト

期待プロダクトとは、商品やサービスに対する顧客の期待が形成されたものを表わします。

デスクトップパソコンの例で言えば、ディスプレイ・キーボード・マウス、さらにはOSがプレインストールされていることを期待しているかもしれません。

「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」にとっては、パソコンを自分で組み立てたり、OSをインストールすることは、邪魔くさい作業に他なりません。
デスクトップパソコンの箱だけあっても、何の役にも立たないのです。

「箱から出せば使える」状態を顧客が期待しているのだとすると、それが期待プロダクトとなります。

この期待は、当然のことながら顧客層によって変わります。
特にイノベーター・アーリーアダプターと、それ以降の間には大きな「断絶」があると言われます。
テクノロジー業界でマーケティングする人にとっては絶対に知っておくべき「キャズム」です。
(上図の赤線部分です)

イノベーターはコアプロダクトがあれば十分である一方、ラガードに近づくほど、後述する拡張プロダクト・理想プロダクトへの期待が高まっていきます。

拡張プロダクト

拡張プロダクトは、顧客がその商品・サービスを購入した目的を達成するために必要なものです。

ビジネスでデスクトップパソコンを購入する場合、それ自体は目的ではありません。
仕事をすることが目的ですから、

  • ネットにつながる
  • 文書作成するためのソフトウェア(表計算やワープロ・プレゼンテーション)
  • チームでコミュニケーションするためのツール(Web会議やチャット)
  • 故障したときの問い合わせ窓口

などが揃っていないと、「仕事をする」という目的は達成できないでしょう。
もちろん、最初から全て揃っている必要はありません。
これらを追加で購入できるような選択肢(メニュー)を用意しておくことが重要です。

理想プロダクト

さらに、顧客の期待・予想を大きく超える理想的な商品・サービスのことを理想プロダクトと言います。レビット教授は理想プロダクトを提供できれば、「市場の中で圧倒的なシェアを獲得できるだろう」と言っていました。

ホールプロダクトの成功例「iPhone」

ホールプロダクト理論の例として良く出てくるのが iPhone です。

物理的な iPhone に留まらず、iPod以来、音楽等のECサイトとして機能していた iTunes、さらにアプリのECサイトである App Storeを加えました。
Apple Storeとジーニアスバーを世界に約300店舗オープンして、顧客接点やサポートも整えました。

本体のみならず、購入からサポートまで一貫した顧客体験を提供できたことが、iPhone人気の土台となり、圧倒的なシェアを獲得するに至ったのでしょう。

BtoBでもホールプロダクト理論を活用する

BtoBにおいて、コアプロダクトだけで差別化することは、ますます困難になってきました。
そうなるとコアだけ提供する企業は、よほどイノベーター・アーリーアダプターを惹き付ける何かを持っていない限り、戦い続けることはできません。

一般的には、アーリーマジョリティ以降の84%(ラガードを除いても68%)を無視するのは厳しいでしょう。

そのため、コアプロダクトだけでなく、どんな付加価値を追加することで差別化するのか?が商品・サービス企画の上で大切になってきました。

まずはコアプロダクトをアジャイルでつくって市場にリリースしつつ、同時に顧客へのインタビューやアンケートを通じて、付随する機能・サービスを追加していく柔軟性が求められます。

イノベーター理論による顧客層ごとの特徴把握、そしてホールプロダクト理論によって顧客層ごとに必要な商品・サービスを整理する。
これがテクノロジー系企業におけるマーケティングでは、必須となるスキルです。

まとめ
  • イノベーター理論によって、顧客層ごとのニーズを整理する
  • ホールプロダクト理論によって、ニーズに応えるための商品・サービスを企画する
  • 特にアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に存在する「キャズム」を意識する



【編集後記】
3連休が暖かかっただけに、急に寒くなった気がしますね・・
週末の自転車100kmレースが不安です。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとIT、そしてデータを使った「売れ続ける仕組みづくり」「業務改善」が得意。コンサルティングや研修・セミナーで中小企業の経営支援をしています。元IT企業でエンジニア→マーケティング。中小企業診断士。
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