前回は、スマートフォンが生み出した価値と、破壊した市場についてご紹介しました。
今回はスマートフォンが生み出した新たな市場についてご紹介します。
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移動通信ネットワークの高速化・大容量化
スマホが浸透したことにより、通信網はさらなる増強を求められました。単なるメール送受信と、簡易的なWebページを閲覧していただけの携帯電話(ガラケー)から、マルチメディアを扱うスマホへシフトしたからです。
パソコン並みのWebページ、写真、動画、さらにはゲームや本などのデジタルコンテンツがスマホで見られるようになっていきました。
携帯電話が広まった1990年代~2000年代前半は、CDMAを基本とした384kbps~2.4Mbps程度の通信速度でした。いわゆる第3世代移動通信システム(3G)です。しかし、3Gではマルチメディアに対応しきれません。
2006年から各移動通信キャリアは第3.5世代移動通信システム(3.5G)に対応していきました。3Gでは2時間の映画をダウンロードするのに30時間程度掛かっていましたが、3.5Gでは45分~1時間程度に短縮されました。
さらに、2004年頃からデータ通信量の定額制サービスが始まったことで、利用者は通信量を気にせずサービスを楽しむことができるようになりました。
2015年頃には4G(LTE-Advanced)が普及し、100M~1Gbpsの時代となりました。2020年以降、10Gbpsの5Gの時代がやってきます。5Gだと2時間映画のダウンロードは3秒になると言われています。
このような通信網の拡大が、後述する新しい市場の礎になっています。
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SNSの普及
スマホが普及したことにより、一気に広がったのがTwitterやFacebookなどのSNS(Social Networking Service)です。
いつでも手元にあるコンピュータ(スマホ)と、常につながっているネットワーク。この2つが揃ったことで、友人とネットワークでもつながることができるようになりました。ネット上の掲示板という一部ユーザーのものではなく、誰でも使うSNS。オンライン上での情報交換が当たり前になりました。
消費者自身がコンテンツを作成するという、UGC(User Generated Content)という概念が生まれたのも、この頃です。ブログが広まった頃から、UGCの概念はありましたが、一気に普及したのは手軽に投稿できるSNSが浸透したからでしょう。この概念は、後にYoutubeなどにもつながっていきます。
TwitterやFacebook、後に生まれたInstagramなどは、プラットフォームを提供しているだけです。これらの会社はコンテンツを提供しているわけではありません。消費者自身がコンテンツを生成し、それをキッカケとした交流を楽しむという「場」を提供しました。
ちなみに、SNS企業は基本的に「広告業」です。広告を配信することでマネタイズしています。
センサー類が廉価になり、新たな時代へ
スマートフォンの広がりは世界的な潮流でした。ちなみに米調査会社IDCによると2018年通年の世界におけるスマホの総出荷台数は14億490万台だそうです。
これだけスマホが大量に出荷されると、スマホを構成する部品はコストが下がっていきます。特にセンサー類が安くなったことにより、GPSやカメラなどが容易に扱えるようになりました。
IoT時代の到来
実世界にセンサーがばらまかれ、あらゆる物事がデータ化される。そしてネット側の世界に実世界のコピーをつくってしまおう、という発想が生まれました。このような考え方をデジタルツインと言います。
いわゆるIoTの時代がやってきました。それまでも機器同士が通信するというM2Mという考え方はありましたが、下記のようなスマホのインパクトによって、IoTの時代が生まれたのです。
- 小型コンピュータのコストが下がったこと
- 移動通信網が潤沢になったこと
- GPSや加速度センサー、温度センサーなど多様なセンサーが安価になったこと
ウェアラブルデバイス
スマホによって生まれたものの1つがウェアラブルデバイスです。
スマホは真のパーソナルコンピュータとなりましたが、まだ利用者との間には距離がありました。その距離をゼロにして、常に身につけてしまおうという発想が生まれました。最もメジャーなのは腕時計型のものですが、他にはメガネ型、洋服型などが出ています。
さらにはコンタクトレンズ型や身体に埋め込むタイプなどの研究も進んでいます。このキッカケとなったのも、スマホです。
ドローン
センサー類が安価になって生まれたのが、ドローンです。加速度センサーやGPS、カメラを搭載して、小さなものなら素人でも簡単に飛ばせるようになりました。
単にオモチャとしてではなく、新たなサービスも生まれました。その代表例が建機大手のコマツです。それまで工事現場における測量は、人手がかかる大変な作業でした。しかし、ドローンを飛ばして空撮することにより、一気に時間と人手を削減することができるようになりました。
- ドローンで空撮して、地面の状態をデータ化
- そのデータを元に、IT化された建機で(ほぼ)自動で工事を実施
- 工事後のデータを再度、ドローンでデータ化
という繰り返しで、人手不足や天候に左右される建設現場の問題を解決しようとしています。
他にも農薬散布にドローンが使われる事例も出てきています。この分野では従来は国産メーカーのヘリコプターが使われていましたが、DJIを筆頭とするドローンに一気に市場を奪われました。
ますますドローンが活躍する場は広がっていくことでしょう。そのキッカケをつくったのもスマホです。
自動運転車+MaaSの世界
見逃せないのは自動運転車です。自動運転車のことを「走るスマホ」と表現する専門家が居るほど、その構成要素はスマホに近いものがあります。
ガソリン車から電気自動車になることによってモーターとバッテリーの勝負に戦場はシフトしています(バッテリーが重要なのはスマホと同じです)。また自動運転するために必要なAIの開発競争も進んでいます。
また、自動運転車の世界にIoTを適用したものがMaaS(Mobility as a Service)です。車などを所有することなく、「サービスとしての移動」になります。
自動運転だけでなく、
- 交通情報や運転情報、気象情報などのビッグデータ
- 交通監視や制御などの利活用サービス
- 実世界における歩行者や自転車、車両などのセンシング
- それらの情報をつなぐ通信網やクラウド
というような、実世界とネット世界におけるデータの総力戦になるのです。
まだまだ書き足りないところはあるのですが、いったん、この辺にしておきましょう。
スマートフォンが世の中に与えたインパクトを、少しでも感じていただけたらと思います。
- スマホが移動通信網を進化させた
- スマホがセンサー類の価格を引き下げた
- それらによって、新たな市場が次々と生まれている
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