経営

私が補助金・助成金の申請代行をやらない3つの理由

私は基本的に、補助金・助成金の申請代行をやっていません。これまでに実施したのは、顧問先のお客様に限ったことで、片手で数えられる程度です。

一般的に中小企業診断士は補助金支援を仕事の柱に置いている人が多いのですが、私はそうしていません。この記事では、その3つの理由をお伝えします。

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経営の基本は、強みにフォーカスすべきだから

理由の1つ目は、経営の基本である「強みにフォーカス」したいからです。

私にとって、他者(国や自治体など)の指示にしたがって資料を作成するのは、明らかに苦手分野です。細かな指示が書いてある募集要項を読み込むのは苦手です。民間が作成する資料と比べて「意図」が読み取りにくいです。(慣れの問題があるのでしょうが)

国や自治体が提供している穴埋め式の古臭いフォーマットを埋めていく作業も苦手です。

「Web入力で十分だろ」
「会社名・代表名、何度も同じこと書かせるな」
「誰がこんな無駄なフォーマットを作成しているのだろう?」

とか余計なことを考えてしまうのです。

そんな理由で、補助金申請は、頑張れば出来なくはないのですが、私にとっては全くモチベーションが上がりません。私は一人で運営している微小事業者です。気持ちの上がらないタスクがあっても他者に任せることはできず、仕事全般に悪い影響を与えてしまいます。

ですから、顧問先の補助金申請を支援したときも、以下のような手順を取りました。

  1. その補助事業の抑えるべきポイントや事業者であるお客様の責任を説明
  2. お客様が申請したい内容をヒアリング
  3. ヒアリングした結果に則って、資料をどのように作成すべきか説明
  4. お客様に資料を作成いただく
  5. 適宜、内容を確認し、私(渋屋)が修正・追記
  6. お客様と最終版を確認したら事務局に提出

なお、不明点を事務局に問い合わせるときは、私が問い合わせして、不明点を明確にするようにしました。(事務局が曖昧な回答をしてくることもあるので)

私自身の強みは、このような事務ワークにあるのではなく、

お客様が心から本当にやりたいと感じる事業を構想すること

を描き出し、それを事業計画に落とし込んでいく部分だと考えています。ですから、私はできる限り強みにフォーカスし、事務ワークが必要であれば、知人の専門家にお願いするようにしています。

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外部環境に依存する経営をしたくないから

「今期の年商はいくらです。補助金支援は○件成功しました。」というような話を、中小企業診断士の世界では良く聞きます。でも、そういう話を聞いても、全く「そちら側に行きたい」と思わないのです。良い悪いではなく、私の個人的な価値観の問題です。

そもそも苦手分野で事業展開したくないからですが、もう1つの理由は、外部環境に依存する経営をしたくないからです。

補助金や助成金の仕事は、国や自治体が予算を確保して初めて成り立ちます。しかも、金額や対象となる経費、そしてスケジュールまでが、国や自治体の言いなりです。自分の仕事の繁閑くらい、自分でコントロールしたいと考えています。

事実、補助金支援をメインにしている人たちは、申請締切の直前になるとバタバタしています。同じ理由で、私には税理士は出来ないと確信しています。国に決められた決算のタイミングで、あんなに多くの税理士が馬車馬のように働いているのが、個人的には信じられません。(繰り返しですが、良い悪いではなく、私の個人的な価値観の問題です)

もし申請の締切時期が、子どもの運動会や卒業式、あるいは私のトライアスロンのレース日程などと被ったら、それらが楽しめなくなってしまいます。別のお客様の商品リリースの日程と被るかもしれませんし。

だから直接支援するのは、顧問先に限っているのです。新規のお客様に対して、補助金支援を提案することはありません。仕事の質・量は、自分でコントロールします。国や自治体に振り回されたくありません。

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悩みながら申請書を書くことで、経営者の頭脳が鍛えられるから

ここまでは私の仕事観が理由でしたが、3つ目の理由は経営者に対してです。申請書のフォーマット(様式と呼ばれますが・・)は、実に古臭くて書きにくいものです。

しかしそれでも、事業計画を考え文書に落とし込んでいくこと自体には、大きな価値があります。自分で書こうとすればするほど、自分が抱いていたイメージが実に曖昧だったことに気づきます

  • ちょっと調べただけで同様の商品・サービスを扱っている競合を発見したり
  • 収支計画が雑すぎて、黒字化の目処が立たなかったり
  • アイデアは良くても実行する体制が現実的につくれなかったり

こういうことは良くあることです。

ですから、時間をかけてマーケティング・組織・お金など、多方面から検討して申請書を書くことで、経営者自身の頭が整理されるのです。

その結果、実際に事業を推進していく段階になったときに、スタッフの方々と確実なやり取りをすることができます。スタッフの方々から見ると「社長、そこまで考えているんだ。この事業は本気だな」と感じるようになります。

補助金や助成金で大変な書類を書かされるのには、一応、相応の目的があるのです。(もちろん、事務局側が審査するための材料が欲しいこともありますが)

ですから、顧問先を支援するときも、まずは経営者自身に書いていただき、私がチェックする流れにしています。

と言うわけで、顧問先の皆様は、私に補助金・助成金支援を過大に期待しないよう、お願いいたします・・笑。代行(書類のゼロからの作成)は基本的にやりませんが、私が知る限りの情報をお伝えして、資金調達の選択肢にしていただけるようにしています。

まとめ
  • 私は補助金・助成金申請の書類作成代行は、基本やりません(過去実績は顧問先のみ)
  • 理由は、自分の強みにフォーカスし、外部環境に振り回されたくないから
  • 申請書類を作成することで、経営者の頭が鍛えられる効果もある
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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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