IT・システム企画

ソフトウェアはまず「使う」、いきなりつくらない(開発しない)

ソフトウェア(ITツール)を、いきなりつくると痛い目に遭います。
その前に、まず使うことを徹底しましょう。

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最初に「使う」べき理由

なぜソフトウェア(ITツール)を使うのでしょうか?
事業で使う以上、何らかの目的があるはずです。

その目的を達成するためであれば、使う・つくる、どちらでも良いはずです。
ただ、手早く・手軽に成果を上げるには、まずは使うことをお勧めします
以下、その理由をお伝えします。

多くのITツールが揃っている

既に世の中には多種多様なソフトウェア(ITツール)が出揃っています。
特に企業で一般的に行われているような業務については、選択肢が多すぎて迷うほどです。

ゼロからつくるのではなく、選ぶ方が大切です。

コストメリットが大きい

しかも、既に出ているツールの価格が、10年・20年前とは比較にならないほど、安くなりました。1桁どころか2桁安くなっていると言っても、過言ではありません。
1人当たり、月額数100~1,000円で、多くのツールが利用できます。

外部に開発を依頼したらら、この100万円程度は、あっという間に掛かってしまいます。
つくるよりも、使う方が、コストメリットが大きいです。

成果がすぐに出る

既に存在するツールですから、すぐに使えます。
今から開発したら、出来上がるまでに何ヶ月も掛かってしまうでしょう。
まず使って、成果を上げましょう。

なお、進化し続けるツールは顧客の声をとらえていることも多いです。
使いやすく・成果を上げやすく成長し続けているのです。

使うことによって要件が明確になる

ソフトウェア(ITツール)が建物などと異なるのは、イメージしにくいことです。

家ならば「家族3人で住む。必要な部屋はいくつで、それぞれの用途は・・」と要件を挙げることができます。
しかしソフトウェアに対しては、このような要件を整理することが難しいのです。

結果的に、外部に開発を依頼すると、失敗するリスクが急激に高まります
ですからまずは、既存のツールを使うことで、要件を明確にするのです。

もしつくることになったとしても、既存のツールを使い込んでからでも遅くはありません。

使うことでITリテラシーが上がる

使い慣れていくことで、ITリテラシーが上がっていきます。
世の中に出回っているツールで、「これは普通にできる」という感覚が身につくのです。

その感覚が身につけば、「新たにつくるべきもの・そうでないもの」の区別がつきます。
逆に、その感覚がないままに外部に発注してしまい大損している例は、未だに後を絶ちません。

「つくる(開発する)」ときに注意したいこと

まずは「使う」ことを優先しましたが、それでもつくる(開発)ニーズは出てきます。
もし開発することになった場合には、以下の点を注意しましょう。

細かくつくる

世の中に存在しない、全く新しいビジネスを立ち上げるなら話は別ですが・・
一般的な業務については、開発するにしても、範囲を小さくしましょう。

例えば、この記事でご紹介したような「ツール間の連携」の場合です。

freeeとkintoneの連携は可能性が広がる(BizTech hack振り返り)営業部門が使うkintoneと経理部門が使うfreeeの連携について。部門ごとに使うツールが異なると、余計な連絡の手間、それによるミスが発生します。ツールは連携させて、マスターデータは一ヶ所で管理する。それによって各部門が本来業務に集中することができます。...

既にAというツールと、Bというツールを使い込んでいるものの、この2つが連携しないから手間が発生するようなケースです。連携部分「だけ」をつくるのが重要です。

上記の例でいう、kintone / freee の部分をゼロからつくったら、1億円あっても足りません。それにコードが増えるほどに、それを管理する手間もかかってしまいます。

外注に頼り切らない

ソフトウェアを開発するというと、日本ではほぼ外注が中心になるでしょう。
しかし、開発会社に頼り切ってしまうと、そこに依存するリスクが高まります

  • 足元を見られて高い金額で見積もられる
  • IT素人すぎるとリスク回避のために見積が高くなる
  • つくったソフトウェアの変更やメンテナンスが不自由になる
  • ソフトウェアの中身がさっぱり分からない

実際私も、このような状況に陥って苦しんでいるお客様を見たことがあります。
開発会社から見ると、「素人すぎて、毎回言うことが変わるから、リスク回避しておこう」となるのです。必ずしも悪気があるわけではないのです。

もしソフトウェアをつくる(開発する)なら、自社もできる限り関与しておきましょう
ITスキルが高いと思われれば、仮に相手が悪徳業者でも、騙されにくくなります。

日本とアメリカのソフトウェアに対する違い

ここでソフトウェア先進国のアメリカと、日本の違いを見ておきましょう。

情報通信白書より抜粋)

同じソフトウェアを活用すると言っても、大きな違いがあります。

パッケージソフトの活用が少ない

1つ目はパッケージソフト(既存ITツール)の活用が少ないことです。

ウチに合うものがないから、つくってしまえ!

と、日本は安易に開発してしまうことが多いのです。

今の業務プロセスを変えることなく、ソフトウェア開発をしても、得られるものは少ないです。ツール活用は、同時に業務プロセスを見直し、改善していくこととセットでなければ成果が出にくいのです。

パッケージソフトには、多くの会社の良い業務プロセスが反映されています。
ツールに合わせて、自社の業務プロセスを変えていけるようにしましょう。

「つくるより、まず使う」というのは、この点からも提案しています。

受託開発(外注)が多い・自社開発が少ない

日本はパッケージソフトの利用が少ない分、開発が多くなっています。
その際、「自社開発」が少ないので、グラフ上は見えないレベルになっています。

日本ではITエンジニアの7割以上は、IT企業に勤めています

中小企業もIT人材の採用・強化を急ぐべき(IT人材白書より)日本のIT人材は、IT企業に偏っており一般企業で活躍する人が少ないです。そのような市場において、中小企業が必要とする「IT企画人材」を採用することは困難です。経営者自身がIT企画人材になるのがベストで、好事例も生まれてきています。 ...

しかしこれは、日本の特殊性です。
他の先進国では、ITエンジニアの半分以上は、IT企業ではない一般企業に勤めています

結果的にアメリカなどの他国は、開発をすぐに行うことができます。
日本は、社内にITエンジニアがいないので、都度ITベンダーを探して見積もりを取って・・と時間とお金が掛かってしまうのです。

ITエンジニアは雇うのではなく育てる

とは言え、日本の一般中小企業が、いきなりITエンジニアを雇うことはできないでしょう。雇っても何をお願いすれば良いのか、分からないでしょうし。

ですから、その前段階としてITツールを使いこなすのです。
社内でノウハウを蓄積することによって、ITに強い人が生まれてきます。
そのうち、ちょっとした連携・自動化であれば、コードを書く人が出てくるかもしれません。

新たにITエンジニアを雇うよりも、教育によって、コードを書ける人材を育てる方が、現実的なのではないでしょうか。

IT投資で最も注力すべきは、人材への教育中小企業におけるIT導入・利用における問題は、スキルのある人材不足によるところがほとんどです。しかし、ますますIT人材の不足が深刻化しつつあり、採用することは困難です。このような状況を受けて、最も注力すべきIT投資は「人材への教育」です。ITで経営を変革したい経営者は、この点を認識しておくべきです。...

自社のビジネスや事情を良く知っている人が、ITエンジニア的なスキルを身に着けた方が、良いものを提供してくれるでしょう。よりスキルの高い外注を活用するときも、この人が翻訳者として活躍してくれます。

まとめ
  • ソフトウェア(ITツール)はつくるよりも、まず使う
  • 開発する場合も、外注に頼り切らない
  • ITエンジニアは採用するのではなく、自社で育てていく

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【編集後記】
今朝はメルマガ読者限定のIT活用ミニセミナーを実施。
参加者の方から、生産管理システムなど、知らないツールをいくつか教えていただけました。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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