人間学

六中観(りくちゅうかん)と読書

多くのビジネスパーソンが苦労している1つが「読書」。
私自身、社会人になるまで読書習慣がなかったこともあり、読むのが遅い・難しい書籍が読めないなどの悩みがあります。

この記事では、六中観(りくちゅうかん)が示す読書のあり方と、私の考えをご紹介します。

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六中観(りくちゅうかん)と安岡正篤

六中観は、安岡正篤の座右の銘です。

安岡正篤は、人間学を学ぶと必ず出てくる、日本の哲学者・思想家です。
政界・財界・皇室が安岡を頼りにしていたことから「昭和最大の黒幕」と評されました。
ご本人は「自分はただの教育者にすぎない」と考え、「黒幕」と言われるのを嫌がったそうですが。

安岡は著作で六中観について、

私は平生ひそかにこの観をなして、いかなる場合も決して絶望したり、 仕事に負けたり、屈託したり、精神的空虚に陥らないように心がけている。

と述べています。

さて、六中観を見てみましょう。
解説は安岡正篤の著作によります。

  1. 忙中閑あり
    ただの閑は退屈でしかない。ただの忙は文字通り心を亡ぼすばかりである。真の閑は忙中にある。忙中に閑あって始めて生きる
  2. 苦中楽あり
    いかなる苦にも楽がある。貧といえども苦しいばかりではない。貧は貧なりに楽もある
  3. 死中活あり
    死地に入って活路が開け、全身全霊をうちこんでこそ何ものかを永遠に残すのである。のらくらと五十年七十年を送って何の生ぞや
  4. 壷中天あり
    世俗生活の中にある独自の別天地をいう
  5. 意中人あり
    常に心の中に人物を持つ。或いは私淑する偉人を、また要路に推薦し得る人材をここというように、あらゆる場合の人材の用意
  6. 腹中書あり
    目にとめたとか、頭の中のかすような知識ではなく、 腹の中に納まっておる哲学のことである

「六中観」にある「中」の字は、「中庸」の教えである 偏かたよらない、過不足のないことを示すそうです。
また「易経」では、「中る(あたる)」と読み、陰陽が相和して活発な創造に進み、寸分違わず的に中り的を射ることを示すそうです。

安岡先生は、六中観に「中」の字を入れることで、「調和・融合・一体化」の意味を込めているようです。

腹中書あり

六中観、1つ1つが深いので、ここではコメントを差し控えます。
この記事のテーマである6つ目、「腹中書あり」を考えましょう。

目にとめたとか、頭の中のかすような知識ではなく、腹の中に納まっておる哲学のことである

私は先日、『論語と算盤』を読みました。

数年前にちくま新書版の『論語と算盤』を読んでいたはずですが、初めて読んだ感覚でした。
つまり、以前に読んだことを、何も覚えていなかったのです。。
安岡先生の仰る「目にとめた、頭の中のかす」、あるいはそれ以下だったのかもしれません。

世の中は多読や速読が求められる風潮があります。
しかし私は決して、それだけではいけないと感じています。

その本を読む目的を明確にする

読書の大前提は、その本を読む目的を明確にすることです。

  • 仕事で使う知識を仕入れる(〇〇ができるようになる)
  • 資格試験に合格する(〇〇を解けるようになる)
  • 楽しむ(私がマンガを読むときは、これです)
  • 自らを躾ける(人間学・哲学書の多くはこれ)
  • 膨大な体系を時間をかけてインストールする(ドラッカーなどはこれです)

前半3つは、多読・速読が活きるのかもしれません。
(私はそれでも、最近は数冊の本を繰り返すことにしています)

しかし、人間学・哲学や、ドラッカー・7つの習慣など骨太な本を身につけるには、何度も読み返す必要があると感じています。
最初、ハードルが高いと感じる場合は、簡単な解説書から目を通しています。

本を読むのが苦手な私が実践している読書法名著と言われるような本は、分厚くて読むのが大変です。しかし知識社会である以上、読書は避けられません。この記事では読書が苦手な私の読書法をご紹介します。1. 目的を明確にする 2. 易しい本からステップアップ 3. 構造を把握する、そして気負わず、使えれば良いという割り切りです。...

「腹の中に納まっておる哲学」を確立するには、時間をかけながら、刷り込んでいく以外ない。と今のところ感じています。
安岡先生は、知識・見識・胆識という言葉を仰いました。

単に読んだだけでなく、「知識」を経験・学問を積み「見識」にし、更には実行力の伴う「胆識」とすることを推奨されていたのです。
単に楽しむ以外の読書には、何らかの目的があります。

その目的を達成するには、読んで終わりではなく、自分自身で行動につなげることが求められます。
今は知識社会と言われますが、表面的な知識ではなく、見識・胆識を身につけていきたいものです。

なお、私が運営している「継続コミュニティ」では、ドラッカー読書会を隔週で行っています。
難解な本は自分ひとりだと、なかなか読めませんので。。
読書会を運営することで、強制的に読む機会を設けています。
また、個々人が感じたことをシェアすることで、学びを深めることができています。

今は名著『エッセンシャル版 マネジメント』の後半をやっています。

継続コミュニティー着実に自分を前に進めるための場所 会社員から独立・起業するまで。 独立・起業してから、真に自分のビジネスをつくるまで。 あるいは、...
まとめ
  • 六中観とは、安岡正篤先生の座右の銘
  • 生きることに必要なエッセンスが詰まっている
  • 腹中書あり。哲学になるような読書をしたいもの

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【編集後記】
GW後半にトライアスロン合宿に行ってきました。
未だにカラダが重く怠いです。
ただ、今日は企業研修の収録です。
スタジオで(せめてその瞬間だけは)元気に振る舞ってきます。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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