この記事では、介護サービス事業者が経理・給与労務の効率化を行った事例をご紹介します。東京都大田区にある、従業員35名ほどの株式会社カラーズさんです。
この事例は平成30年版の中小企業白書に書かれています。その内容を元に私なりの解釈を加えてお伝えします。
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事務代行を止め、専門家活用へ
株式会社カラーズさんの事例を図にすると、このようになります。
(中小企業白書を元に、著者作成)
元々、経理(領収書の処理)や給与計算などの事務作業を、税理士や社会保険労務士に代行依頼していました。しかし、顧客や従業員の増大に伴って、事務代行先の対応が困難になってしまったそうです。おそらく小規模な代行先だったのでしょう。
結果的に、ここで代行先が限界に来たことはラッキーだったと思います。後述するように、当社にとって大きな改善をするキッカケになったからです。
新たな代行先を探していたところ、クラウド会計のアドバイザーを務める税理士を見つけて、クラウド会計の導入を進めました。従来、代行先にアウトソーシングしていたため、社内での経理処理の経験を積むために、税理士にはクラウド会計の導入だけでなく、経理事務の改善も依頼しました。
これがうまくいったので、クラウド人事労務も導入。会計と人事労務を連携させることで、給与関係のデータ(給与振り込み、社会保険料、源泉徴収された所得税や住民税の預かり金)がすぐ会計に反映されるようになりました。また、経費精算した会計データも人事労務側の給与明細に反映されるように。
これによって得られた効果は以下の通りです。
- 年間の事務代行費用50万円が、クラウド費用の月額数千円まで下がった
- 事務処理が2ヶ月掛かっていたが、社内で30分で終わるようになった
(会計と人事労務が自動連携した効果が大きい) - 専門家や社員と経営課題を共有し、相談できるようになった
(浮いた費用で、税理士や社労士を代行先としてではなく、相談先として活用できるようになった)
それまで事務代行先でしかなかった専門家が、経営課題を共有する相談先に変わったことが大きいでしょう。各種経営指標や試算表をリアルタイムに共有しながら、経営の相談ができるようになりました。
最初の年にクラウド導入コンサルティングに30万円掛かっていますが、その後は事務処理コストが削減できた上に、専門家が活用できるようになったのです。
本事例の成功要因
私は本事例には、3つほどの成功した理由があると感じています。
クラウドを活用したこと
1つ目の理由はクラウドを活用したことです。本ブログでは口が酸っぱくなるほど頻繁に書いていますが、中小企業のシステム・ツールの選択肢は、クラウドが最優先です。コスト面だけでなく、本事例でも出てきたように、システム間の連携がしやすいからです。
ちなみにクラウドを導入・活用するならIT導入補助金などが使える可能性があります。
システムを自社で開発・所有する場合には、IT導入補助金は使えません。(ハードウェアは補助対象外です)
業務プロセスを柔軟に変えたこと
2つ目の理由は、経理や人事労務の業務プロセスを柔軟に変えたことです。ここが多くの企業でできない点です。
- 今までのやり方を変えたくない
- 経理などの事務作業が、経営者にとってブラックボックスになっている
- その結果、経理担当者などに丸投げで、改善する余地が生まれない
このような理由で、業務のやり方を変えられないのです。本事例では社長が積極的に関与して業務プロセスそのものを改善したことが、大きな成功要因です。
社長自身がITに親しんでいたこと
3つ目の理由は、社長がITに親しんでいたことです。この事例には書いていませんが、会社のホームページを見ると、社長は元々IT業界に勤めていたことが分かります。
本事例では、社長はこのように語っています。
「中小企業の予算規模では自社システムの開発や所有はコスト面で非現実的であり、拡張性を考えればクラウド・サービスの一択だと考えた。導入前は業務フローを細分化した上で業務の優先順位付けを、導入後は従業員への使い方説明を、それぞれ徹底した。(略)」
私が中小企業はクラウド一択と言っているのと、同じ考えです。普通、介護サービス会社の社長はこんなこと知りません(笑)。また、単にシステムを導入するだけでなく、業務を整理していることや、従業員への教育を徹底していることも、「勘所」が分かっていらっしゃると感じます。
余談ですが、このような事例を見ていると、ITに強い人が、どんどん他業界に出て行って、活躍して欲しいと感じます。
当然、全ての社長がITに強いわけではないですから、そのような場合には、勘所が分かる専門家を活用していただきたいと思います。
- コストを削減しつつ、事務代行からクラウド活用&内製化に成功
- 専門家を相談先として活用できるようになった
- 業務プロセスを変えたり、従業員教育を徹底したことが見逃せない
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