ツール活用

RPAとは何か?RPA以外にはどのような選択肢があるのか?

前回はRPAの利用シーンについて解説しました。あまりに間違った利用が多いので注意・啓蒙のための記事でした。

RPAの正しい利用シーンとは?間違った使い方は組織を改悪させる間違ったRPAの使い方をしていませんか?RPAの利用は、問題の本質的な解決にはなりません。業務の整理整頓と、適切な場面で利用することにより、RPAは活きてきます。この記事では適切なRPAの活用方法についてご紹介します。ITベンダーから、そそのかされないように気をつけましょう。...

超要約すると「業務の整理もしないまま、ツールに頼らないで」ということでした。この記事では「そもそもRPAって何?」という基本的なことをご紹介します。

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RPAとは何か?

Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略です。パソコン上でのコピー&ペーストや転記、照合や入力などの画面、キーボード、マウスを操作して行う作業を自動化させる仕組みのことです。「ロボット」と呼ばれるソフトウェアが人力で行っていた作業を代行します。

ただ「ロボット」というと少しイメージが違うかな、と思います。人が行う作業を記録する「マクロ・レコーダー」や「ワークフローの自動化」という表現の方が適切だと感じます。

RPAは効果が誰にでも分かりやすいことから注目を集めており、国内の市場規模も急成長しています。ITRによると、2017年度のRPA市場売上金額は35億円、前年度比4.4倍と急成長、2022年度には400億円に達すると予測されています。(記事はこちら

またRPAメーカーの1つであるUiPathが4億ドル超を調達するニュースも出ており、RPAへの期待感は、まだまだ高まっているようです。

RPAの導入形態

ここまで「RPA」と全てを一緒くたに書いてきましたが、ロボットが動く場所によって、3つのタイプに分かれます。

最初はデスクトップ型です。パソコン1台で利用するものでRDA(Robotic Desktop  Automation)とも呼ばれます。このブログの主な読者層である中小企業・フリーランスにとっての選択肢は、これになるでしょう。

次にサーバー型です。サーバーで処理を実行するため、いくつもの部門をまたいだ処理なども対応可能です。前回ご紹介した横浜市の事例などは、サーバー型が適しているケースもあるでしょう。

最後がクラウド型です。ロボット(ソフトウェア)がクラウド上で動きます。

デスクトップ型の場合はパソコンの電源が入っていないと使えない。そのパソコンでないと使えないなどの制限があります。またサーバー型の場合は高いサーバーを購入する(サーバーを設置・保管する場所も合わせて)必要があることがハードルになっています。クラウド型はインターネットの向こう側で動きますので、導入が比較的容易です。

ただ、Webブラウザで動く業務しか対応できないので、オフィスソフト(エクセルなど)や会計ソフトなど、インストール型のソフトウェアを自動化したい場合には利用できません。

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RPAの認識・記録方式

ところでロボット(ソフトウェア)が自動化、と言っても、具体的にどのように実現するのでしょうか?ここでは3つの方式をご紹介します。

1つ目はプロパティ方式です。Webで使うソフトウェアの多くは「プロパティ」と呼ばれる属性・構造の情報を持っています。

ブラウザで住所や名前などの入力フォームで、過去の入力データを元に、氏名・住所・メールアドレスなどが勝手に入力されることがあると思います。それは「この枠は氏名ですよ」「この枠はメールアドレスです」という情報がWeb(正確にはHTML)に組み込まれているので、その情報を元に入力候補が出てくるのです。

このプロパティ情報を使って、ロボットに記憶させるのがプロパティ方式です。

2つ目は画像方式です。文字列や画像情報を記憶させて操作します。そのためWebシステムだけでなく、エクセルや会計ソフトなどインストール型のソフトウェアにも利用できます

3つ目が座標方式です。プロパティ方式でも画像方式でも対応できないソフトウェアがある場合、「画面上のこの位置のボタンをクリックしてね!」という感じに操作します。頻繁に画面が変わるクラウドサービスには利用しない方が良いでしょう。

RPA以外の選択肢

さて、ここまでRPAについて書いてきましたが、RPAはあくまでも手段です。業務の効率化・自動化を目指すのであれば、別の方法も考える必要があります。ツールである以上、適している・そうでない利用シーンがあるからです。

業務そのものをなくす、改善する

前回の記事で主張したのがこちらです。まずは業務そのものを見直すことが重要です。面倒だから自動化・効率化して誤魔化すのではなく、根本原因を取り除くようにしましょう。

RPAの正しい利用シーンとは?間違った使い方は組織を改悪させる間違ったRPAの使い方をしていませんか?RPAの利用は、問題の本質的な解決にはなりません。業務の整理整頓と、適切な場面で利用することにより、RPAは活きてきます。この記事では適切なRPAの活用方法についてご紹介します。ITベンダーから、そそのかされないように気をつけましょう。...

システム化(既存システムへの改修を含む)

繰り返し作業がある場合、RPAを使う以前に、ちゃんとシステム化した方が良いケースがあります。RPAは即効性がありますが、根本的な業務プロセスの改善にはならないからです。

ただ、中小企業やフリーランスの場合、よほどのことがない限り、ゼロからシステム開発をするのは非現実的です。

どういうときにシステム開発するべきなのか?中小企業には基本的にゼロからのシステム開発を勧めていません。ただ、どうしても開発が必要になることもあります。その典型的な「3つのパターン」をご紹介します。システムの活用を考えている方は、要チェックです。 ...

RPAを検討するような定型業務については、自社の業務の流れにシステムを合わせるのではなく、既に存在するツールに自社の業務を合わせた方が、間違いなく効率化されます。自社で開発するのは、自社の商品・サービスの本丸部分だけにしましょう。

システム間連携の機能を使う

既に利用しているシステムが、他のシステムと連携する機能を持っていることがあります。特にクラウドサービスでは、他システムとの連携が進んでいます。(これがクラウドを使う大きなメリットの1つです)

例えば私が日々利用している顧客管理システム(CRM)では、連携できるシステムが数10・数100以上あります(数えきれません)。

このような設定をすれば、AシステムからBシステムにデータを引き渡すことが容易にできます。わざわざ帳票を出力して、人手で再入力するという最悪なオペレーションをすることはなくなります。AシステムからCSVでダウンロードして、データを加工した上で、Bシステムにアップロードする、ということもなくなります。

連携ツールを使う

IFTTTやZapier、Microsoft Flowのような連携ツールを使うことで、簡単にシステム間の連携ができます。AシステムとBシステムを自動で連携できるのです。

Xという条件が発動したら、Yという処理を行う

というようなことが、簡単にできます。具体的には以下のようなものです。

  • 問い合わせフォームから連絡があったら、スプレッドシートの最終行に追加する
  • 受注連絡が入ったら、タスクをTrello(タスク管理ツール)に追加する
  • 期限の迫ったタスクがあったら、担当者にメールする

中堅以上の、もう少し規模の大きなシステム間を連携させるには、各種専用ツールがあります。HULFT、DataSpider、ASTERIAなどです。このレベルになると、専門知識が必要になってきます。

スクリプトなどを書く

エクセルなどオフィスソフトでの処理を自動化するならVBAが活用できます。良く誤解されますが、VBAはエクセルに特化したものではなく、Micosoft Office全般のみならず、Windows OSの処理の一部も自動化できます。

またGoogleのオフィススイートであるG Suiteを使っている場合、Google Apps Script(GAS)を使うことで、VBAのように自動化ができます。最近、創業したばかりの企業はMicrosoft OfficeよりG Suiteを使っている企業が増えているように感じます。

VBAやGASは、中小企業・フリーランスにとっては非常に有力な選択肢になるでしょう。自分たちでやれば、追加費用が掛かりませんので。私がGASを勉強しているのも、G Suiteや、その他のツール(GoogleカレンダーやGoogle Analyticsなど)を連携させることに可能性を感じているからです。

VBAをやる人は、会社から見ると「勝手に何かやっている」と見られることが多く、悲しい声を聴きます。「会社のために自動化を進めているのに、疎まれる」と。経営者や管理職は、このような取り組みをする人を、しっかりと応援できるようにしたいものですね。

まとめ
  • RPAには3つの導入形態、3つの認識・記録方式がある
  • RPA以外にも、業務を自動化・効率化する選択肢は多々ある
  • それぞれの特性を知った上で、最適な選択肢を選びましょう

なお、この記事でご紹介した画像は、私も学ばせていただいているネットコマース斎藤さんが運営する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー(Libra)」のものを利用させていただきました。

私が活用しているITの情報源(Web、雑誌、その他)変化の激しいITのことを把握するには、情報収集が避けられません。この記事では私が実際に利用している情報源を、Web・雑誌・その他の3分野から、それぞれご紹介します。ビジネスでITをもっと活用したいとお考えの方は、要チェックです。...

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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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