利益を生み出す仕組み

数字目標だけでは、人の気持ちは動かない【メタアップ&ブレイクダウンの勧め】

前回は、「売上」という目標を例に、構成要素に分解しました。(ブレイクダウン)
より目標を具体化することで現場が動きやすくなるのでした。

経営数字とロジカルシンキング(売上分析の例)ロジカルシンキングを身に着ける例として「売上」を考えてみます。「売上を上げろ」というのは何も指示していないのと同じです。構成要素に分解する方法・注意点を知ることで、ロジカルシンキングの基本を身につけましょう。...

今回は逆に視野を広げるための思考法をお伝えします。

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ブレイクダウンとは逆のメタアップ

前回は売上を構成要素に分解することで、目標を達成するための手段を具体化しました。

例えば既存顧客の流出を防ぐことで、顧客数を維持する。
あるいは新規顧客を獲得することで顧客数を増加させる。
結果として、売上を伸ばすことができる。という流れです。

今度は逆の発想をしてみましょう。

「何のために売上を達成するのか?」
「売上の上位概念は何か?」

色んな答えがあると思います。
経営者にとって、実は現時点では売上自体は目的ではなく、チームを強化するために売上という共通目標を掲げただけかもしれません。

ただ、ここでは分かりやすくするために、同じく数値目標である「利益」を求めたとしましょう。図にするとこんな感じです。

今まで考えていたのは、赤い点線で囲われていた部分です。
何のために売上を上げるのだろう?と考えた結果、利益を確保したいのだ、と分かりました。
このように上位概念を考える思考法のことをメタアップと言います。

売上以外に利益に関係する要素として費用がありますので、それをブレイクダウンすると、原価と販管費に分解されました。(固定費と変動費など、別の分け方もあるでしょう)

このようにブレイクダウンとメタアップを繰り返すことで、より幅広く、詳細に思考することができるようになります

利益の上位概念まで考えると、さらにこのような図になるかもしれません。

利益を上げること自体にも目的があります。

  • もっと多くの仲間(社員)が欲しい
  • 仲間により多くのお給料を払いたい
  • 競争力を高めるための投資をしたい
  • 良い技術を持っている会社を買収したい
  • 新たな商品・サービスをつくるための原資が必要
  • 家族にもっとゆとりのある生活をさせたい

ここまで来ると、定量的な数値目標ではなく、真の目的に近づいてきた感じがしますね。
経営者の価値観が感じられるものも一部あります。

真の目的は何か?

このようにメタアップを繰り返していくと、経営者の強い想いを軸とした「真の目的」にたどり着きます。ただ、そこまで考えいない経営者が多いことも事実ですが・・

ですから、私のコンサルティングでは、何のために売上・利益が必要なのか?を経営者に考えてもらうために、メタアップを繰り返すこともあります。

繰り返しになりますが、売上も利益も、企業が存続するための条件に過ぎません

なぜ売上や利益が必要なのか(利益は目的ではなく血液のようなもの)企業経営における利益とは何でしょうか?利益は目的ではなく、事業を継続し、投資するための必要条件に過ぎません。その先のビジョンがなければ、事業の目的を見失ってしまい、ゲームの高得点を狙うように、利益を得ることが目的になってしまいます。そうならないために経営者に必要なマインドをお伝えします。...

この記事でご紹介していますが、お金は企業にとって血液のようなもの。
不足し過ぎると死んでしまいますが、満たされたからといって、幸せが約束されるものではありません。

単なる数値目標だけでは、人は動くことができません。

  • 真の目的(=経営者の強い想い)を伝えること【メタアップ】
  • それを達成するための具体的な手段【ブレイクダウン】

この双方が揃って初めて、現場は動くことができるようになります。

メタアップ&ブレイクダウンで現場は動く

最もやっていけないのは「売上目標は〇〇円だ!頑張れ!!」です。
ここまででお分かりの通り、メタアップもブレイクダウンもしていないからです。
経営者としては、残念ながら思考停止状態と言って良いでしょう。

「売上30%アップだ」は経営者の思考停止でしかない前回、利益率は経営者がデザインするものであり、偶然の結果ではないことをご紹介しました。 https://100athlon.com...

ブレイクダウンだけ行った場合

次にブレイクダウンだけ行った場合を見てみます。

  • 一緒に買ってもらう商品点数を増やすために、クロスセルの提案をしよう
  • 購入頻度を上げるために、キャンペーンを行ってみよう

現場は「売上いくらだ!」と言われるだけの状況から比べると、ずいぶん動きやすくなります。やるべきこと・やらなくて良いことが明確だからです。

ただ、このやり方ですと、短期的には良いのですが、中長期にはつらくなってきます
現場で働くスタッフは、自分たちのことを売上・利益製造マシーンのように感じてしまうかもしれません。
何のためにこの仕事を行うのか?理由が分からないからです。

メタアップだけ行った場合

逆に夢を語ることに長けているものの、具体的な手段レベルへの落とし込みが下手なケースがあります。

  • この事業を成長させることで、世の中をこのように変えていきたい
  • 一人ひとりが、こんな風になった社会を実現したい

このような夢はいくらでも語るのですが、現場のオペレーションになると、途端に飽きてしまって現場任せになってしまうのです。

現場で働くスタッフは「この会社の想いは好き」
でも、「何をすれば良いのかが分からない」という事態に陥ってしまいます。

  • 現場を混乱させない【ブレイクダウン】
  • 中長期に同じ方向を向いて組織の一体感を培う【メタアップ】

このように、どちらか一方に偏ることなく、双方が必要なことを感じていただけたらと思います。

前回・今回と「売上」を例に行ってみましたが、他の目標・KPIについても同様です。
ブレイクダウンとメタアップを繰り返し、より強い組織づくりを目指しましょう。

まとめ
  • 目標の上位概念・真の目的を明確化するには、メタアップを行う
  • 中長期で組織の一体感を培うにはメタアップが有効
  • 現場を動きやすくするブレイクダウンと合わせて使うと効果的

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【編集後記】
今日から春休みです。
1週間ほど、仕事のペースを落として、家族旅行に行ってきます。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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