受託開発や派遣/SESからサービス提供型ビジネス(例:SaaS)にシフトするためには、スキルのギャップを埋めるだけでなく、お金の流れが変わることを知っておかなければなりません。
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お金の流れの変化
前回はスキルのギャップを埋める話でしたが、今回のメインはお金の話です。経営者として、お金の流れが変わることは、決して見逃せません。
結論から言うと、受託開発・派遣/SESと比べると、SaaSビジネスはお金のマネジメントが難しくなります。
受託開発型のビジネスの場合、受注金額を元に開発体制を整えることになります。理論上は、赤字にならないモデルです。(案件がないときに人件費がかさむ、という問題は、ここでは置いておきます)
派遣/SESはもっと単純です。「1人月いくら」と決まった売上が上がります。人を送り込めば利益が出るし、人がいなければコストがゼロ。受託開発以上にリスクが少ないのです。このビジネスを「止めたくても止められない」という経営者が多いのが、リスクが低く、確実に利益を稼ぎやすいモデルだからです。
SaaSは先行投資が必要なモデル
これら2つと異なり、SaaSは先行投資が必要となるモデルです。まずサービスを開発しなければビジネスを始められないのですが、そのためには開発・マーケティングが必要になるからです。
やっとサービスを開始して顧客獲得を始めても、顧客数がランニングコストを超えるまでは、赤字が続いてしまいます。ここまでが経営的に、非常に苦しいのです。しかも、前回お伝えしたように、従来型ビジネスとSaaSでは必要なスキルが全く異なるため、スキル差を埋めるまでに、かなりの時間が掛かってしまいます。そのため、上手くいったとして、黒字転換するまでに2〜3年単位かかるケースも良く見受けられます。
ただ逆に、損益分岐点売上高を超える顧客数を獲得したところから、一気に利益体質に変わります。顧客1社・1人に掛かる変動費が、非常に低いビジネスモデルだからです。特に解約率が低い場合には、売上が安定する上に利益もしっかり稼げる、盤石なビジネスができあがります。
つまりSaaSビジネスにシフトするために経営者は、数年単位の投資が必要であることを認識すべきです。スキル・人材育成の期間、黒字転換するまでの期間を、耐えなければなりません。
既存事業があることは、強みでもあり、弱みでもある
起業・創業直後にSaaSをビジネスにする場合、黒字転換するまでの期間は、銀行からの融資やVCなどからの投資で耐えなければなりません。一方で、受託開発や派遣/SESなどの既存事業がある場合は、これらの事業で得る利益をSaaSの開発・マーケティングに投資することが可能となります。
キャッシュフローで見れば、これは大きなメリットです。リスクを少なく、新規事業に投資することができるからです。仮に1つ2つ失敗しても、利益が出続けていれば、再度チャレンジをすることができます。ただ、既存事業で投資できるほどの利益が出ていることが前提です。
逆にデメリットもあります。全く異なるビジネスを展開するためには、組織のあり方・組織文化を大きく変える必要があります。既存事業があることによって、組織文化をなかなか変えることができなくなってしまうのです。経営者から見ると、SaaSビジネスの成長と共に、少しずつ既存事業から新規事業に人材を移していくことが理想的です。
しかし既存事業と新規事業では、組織文化が全く異なります。例えば、プロジェクト運営がウォーターフォール型からアジャイルに変わるなどです。また、お客様に「システムを納品」することがゴールとなるのか、お客様に「システムを活用してビジネスの成果を上げてもらう」ことが価値になるのか。この間にも、大きな断絶があると言って良いでしょう。
- 受託開発とSaaSでは、お金の流れが大きく変わる
- SaaSは先行投資が必要なビジネスモデル
- 損益分岐点を超えると盤石なビジネスになる
- 既存事業の存在はメリットもデメリットもある
- 受託開発からサービス(SaaS)へシフトできない理由
- サービス提供型ビジネス(SaaS)へのシフトで注意すべきスキルの差
- SaaSにシフトするために超えるべき「お金の流れ」(←この記事)
- SaaSが提供しているもの(価値)は何なのか?
- 実例から学ぶ、受託開発からSaaSへシフトするために大事なこと
- SESや受託開発からSaaSへ移行するための第1ステップ
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