IT・システム全般

サービス提供型ビジネス(SaaS)へのシフトで注意すべきスキルの差

受託開発型や、派遣・SESを主たる業務にしている企業から、サービス提供型のビジネスへシフトしたいという相談が増えています。

受託開発からサービス(SaaS)へシフトできない理由IT企業の支援をしていて良く聴く悩みの1つが「ビジネスをサービスモデルにシフトしたいのにできない」こと。今回はこの理由を少し掘り下げたい...

この記事では、サービス提供型ビジネス(主にSaaSを想定)へシフトするために注意すべきスキル・体制の差をご紹介します。

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受託開発、派遣/SESとサービス提供型ビジネス(SaaS)は、そもそもビジネスモデルが大きく異なります。そのため、必要とされるスキルが大きく異なります。まずは、そのスキル差を埋める必要があります。

サービス企画

サービス提供型ビジネス(SaaS)は、多くの企業に同じサービスを提供するものです。1社ごとにフルオーダーメイドのシステムを開発する受託開発とは、この点で大きく異なります。どちらが良いというわけではなく、大きく異なることを認識する必要があります。

フルオーダーメイドのスーツのお店と、量販店の違いです。

前者は、眼の前の顧客1人のニーズをしっかり聴いて、提案することが必要です。
後者は、ターゲットとする顧客のニーズを自ら定義して、企画することが必要になります。

なお、派遣/SESの場合は、人を送り込んでいるだけで、フルオーダーメイドのスキルもないので、スキル差を埋めるのはもっと大変です。

顧客を開拓するマーケティング

さらに大きく異なるのがマーケティングスキルです。受託開発のビジネスはSaaSと比べると、少ない顧客で大きな利益を得るビジネスです。SaaSは多くの顧客から少ない利益を得るビジネスですから、より多くの顧客に知ってもらうマーケティングが必要になります。

多くのSaaSベンダーがWebマーケティングに力を入れているのは、そのためです。1社当たりの顧客獲得コストが大きくなりすぎると、利益の少ないSaaSは苦しくなりますから、Webでの集客が有力な選択肢になるのです。

ただ、これまで受託開発や派遣/SESを生業としてきた企業の多くは、Webマーケティングに不慣れです。少ない顧客を経営者や営業が対面で開拓していることが、多いと感じます。

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顧客を維持する教育・サポートなど

受託開発型のビジネスは、システムを開発して納品するまでが勝負です。本来、納品したシステムを顧客に活用してもらい、成果を上げるところまでが勝負なのですが、納品時点で売上が上がってしまうビジネスである以上、どうしてもそこで関係が切れてしまいがちです。

現実として、納品完了したら、多くのエンジニアは次のプロジェクトに投入してしまうのではないでしょうか?顧客との関係を維持するのが、元々、難しいビジネスなのです。

しかしSaaSは月額いくらのモデルですから、顧客に使い続けてもらうことがキモです。「チャーンレート(解約率)」が彼らの重要な業績評価指標(KPI)になっているのは、そのためです。

使い続けてもらうためには、使い方を教育・サポートしたり、顧客同士をつないで価値を感じやすくするなど、工夫が必要です。顧客がサービスを利用し続けることに価値を感じてもらえれば、解約されずに使い続けてもらうことができます。

システム開発・運用体制(アジャイル開発・DevOps)

SaaSを提供するためには、システムを自社で運用する必要があります。24時間365日、システムを運用し続けるスキル・体制が必要になります。

また、ソフトウェアも順次アップデートしていくことになります。開発と運用が一体になったDevOpsが重要になりますし、開発もウォーターフォール型からアジャイル型へのシフトが必要になります。

システム運用は受託開発では求められないスキルですし、開発体制もプロジェクトマネジメントのやり方も大きく変えなければなりません。

クラウドを使いこなすスキル

そのためにはクラウドを使いこなさなければなりません。自社でサーバーを購入して、インターネットを通じてサービスを提供して・・などとやっていたら、お金・人などのリソースがいくらあってもたりません。

今までのようにOS/ミドルウェア上に自社ソフトウェアを開発するモデルではなく、クラウドを活用したクラウドネイティブなスキルが求められます。サーバーレス、コンテナ、マイクロサービス等を当たり前の環境として活用できなければ、SaaSで利益を上げることは厳しくなります。

たまにIaaS環境上に従来通りの開発をして「クラウド」と言っているケースを見かけますが、それは数年前には卒業したい状態です。昔のやり方を継続していたら、固定費が高くなりすぎてしまいます。

まとめ
  • SaaS型のビジネスには、企画・マーケティングが重要になる
  • 顧客を維持するための仕掛け(教育・サポート・コミュニティなど)が必要
  • 開発・運用体制が大きく変わる
  • クラウドネイティブなスキルが求められる
  1. 受託開発からサービス(SaaS)へシフトできない理由
  2. サービス提供型ビジネス(SaaS)へのシフトで注意すべきスキルの差 (←この記事)
  3. SaaSにシフトするために超えるべき「お金の流れ」
  4. SaaSが提供しているもの(価値)は何なのか?
  5. 実例から学ぶ、受託開発からSaaSへシフトするために大事なこと
  6. SESや受託開発からSaaSへ移行するための第1ステップ

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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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