大企業の市場(エンタープライズ)を中心に展開されていたマーケティングオートメーション(MA)。
最近では中小企業向けの製品も増えてきました。
価格がお手頃だったり、操作が簡単だったり。
ただ、MAは有効に使われずに多くの失敗を生んでいることを知っておくべきでしょう。
最初に結論を述べておくと、お手軽価格だからという理由で飛びつくと、失敗します。
私の基本的な ITツールに対するスタンスは「まず使ってみましょう!」です。
しかし MAやSFA/CRMに限って言えば、それは止めるべきです。
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MAは失敗だらけ
上述の通り、日本における MA(マーケティング・オートメーション)は、成功事例よりもはるかに多くの失敗事例があります。
使いこなして本当に成果をあげている企業が、果たしてどれだけあるのでしょうか?
MAツールを導入するだけなら、どの企業でもできます。
現在のツールはクラウドベースですから、導入に手間取ることはありません。
基本的な設定だけなら、1日もあれば十分に行えます。
しかし、MAの目的は案件創出(デマンドジェネレーション)することです。
有効な案件を営業に引き渡すこと。
例えば、受注案件全体のうち、デマンドジェネレーションによって創出された案件の割合がどれだけあるか。
営業の引き合いによる受注が多い日本においては、10%もいかないことが多いです。
MAを活用することによって、その割合をどれだけ伸ばすことができたか?
MAの成功基準は、そこしかありません。
しかし、この成功基準から目を背けて、運用されている話を良く聴きます。
単なるメール配信スタンドになっている
メルマガやステップメールの配信スタンドになっているケースです。
確かに BtoBにおいて、メールは今でも最も有効なチャネルであることは間違いありません。
しかし、メール配信するだけなら、もっと安価で使いやすいものが数多くあります。
MAのコストを支払っていることを考えると・・(汗)
スコアを見て楽しんでいるだけ
MAで顧客ごとのスコアを見て楽しんでいるだけ、というケースも良く聴きます。
スコアは確かに、顧客の興味・関心の高さを測る基準にはなります。
しかし、興味関心の高さと、案件になるか?は別です。
営業に引き渡せるのは、興味関心が高い上に、案件になる見込み確度が高い顧客です。
単にスコアが高いだけで営業に引き渡したら、実は競合や採用希望者だった・・なんて笑えません。
要するに営業へ有効な案件を引き渡せていないのです。
MAを活用する上では、まずは案件創出(デマンドジェネレーション)の基本を把握することや、営業との認識合わせが必要です。
営業が季節によって繁閑の差があるなら、それに応じて引き渡すべきリードの質も変わってくるはずです。
年に1回しか営業と認識合わせしないようだと、ズレが生じてくるでしょう。
MAで失敗する組織の特徴
次に MAを活用できずに失敗してしまう組織の特徴をご紹介します。
MA の目的を理解していない
MAの目的をちゃんと理解していないケースが多いです。
「自動的に顧客を集めてくれるんでしょ?」というお気楽すぎる発言。
「ネットで集客などできるわけがない。馬鹿にするな!」という反論。
どちらも MA を正しく理解していません。
MAは案件創出(デマンドジェネレーション)を行うためのプラットフォームです。
自動的に顧客を集めてくれる都合の良いツールなど存在しません。
MAはリアル・オンライン双方からの情報を活用するツールであり、ネット(オンライン)に特化したものではありません。
では、どうやってウチの会社は、案件創出するのか?
ウチの潜在顧客にとって、どういうプロセスを設計するのが良いのか?
営業はどういう案件(リード)を欲しているのか?
そういう理解や設計をしないまま、イメージだけで議論を進めても、何も生まれません。
リードが圧倒的に足らない
MAを活用しようとするなら、リードを獲得し続ける仕組みが必要です。
それがないのであれば、MA導入の前に、その仕組みづくりが必要です。
- 展示会に出展する
- Webからの流入を増やす
- 広告を出す
- 社内の営業・技術が持っている名刺を集める
(マーケティング以外の部署が協力してくれるようネゴが必要です)
など、やれることはいくらでもあります。
リードが枯渇してしまったら、MAは機能しなくなることを理解しておきましょう。
コンテンツが足らない
獲得したリード(顧客)の興味・関心を高めたり、不安を取り除くためのコンテンツが必要です。
- 商品・サービスを知った顧客は、次に何を知りたがっているか?
- 初めて貴社を知った顧客は、どうやって不安を取り除くか?
顧客が貴社を認知してから、興味関心を抱き、競合と比較する。
絞り込んだ2~3社から提案を受け、見積もりを比較し、社内で稟議を上げる。
そして発注に至る。
このような流れのなかで必要なコンテンツが揃っている必要があります。
少なくとも案件創出(デマンドジェネレーション)においては、営業に連絡を入れたくなる手前までのコンテンツが必要です。
組織においてコンテンツ(記事)を生み出し続ける体制がなければ、MAは失敗します。
営業組織への特権を認めている
案件創出(デマンドジェネレーション)を行うためには、全社的な協力が必要です。
特に営業と引き渡す案件の条件について、認識を合わせておくことが前提条件となります。
逆に言うと、条件を満たした案件を、営業がしっかりとフォローしなければなりません。
しかし日本の営業組織は業務範囲が非常に広く何でも屋であることが多いです。
結果として、「営業部門だけは特別」という会社が散見されます。
MAを始めるとき、例えば「俺の客に勝手にメールを出すな!」みたいなことを言い出す営業が多いのです。
いや、お客様は営業の資産ではなく、会社の資産ですよね・・
経営者がそういう特権を認めてしまうと、MAは機能しません。
顧客接点となる全ての組織が連携しなければならないからです。
マーケティングの基本設計を行うことを優先
MAに限らず、SFA/CRMでも、ホームページやランディングページ(LP)をつくることでも、あるいは展示会に出展したり、セミナーを主催することでも。
全てに共通していることは、経営層から現場まで、一定のマーケティング知識が必要だということです。
マーケティング担当だけが知っておけば良いことではありません。
経営者やマーケ部門以外は専門ではないので、細かなことまで知る必要はありません。
ただ、共通言語を持って戦略から日々の活動を行わない限り、MAはその威力を発揮できません。
顧客に見つけてもらうところから、ファンになるまで。
その各プロセスを設計し、誰が(どの部門が)?何を行うのか?
各プロセスにおける達成基準は何なのか?
この意識が組織全体で合っていることが、マーケティングに強い組織と言えるでしょう。
スモールビジネスも例外ではありません。
組織が小さい分、認識合わせするのは大企業より簡単です。
大企業がノロノロやっているうちに、マーケティングリテラシーを高めて、成果をあげてしまいましょう。
最後に、こんな記事を書いておいてなんですが、スモールビジネスにおいては MA活用の前に、やるべきことがもっと多いと感じています。
なので、この記事のメッセージは「MAで失敗する前に、他にやるべきことをやりましょう!」です(笑)
- MAの基本を理解しないままツール導入して失敗するケースが多い
- マーケティングの共通言語を社内で合わせる必要がある
- スモールビジネスでは、MAの前にやるべきことがある(急いでMAを活用する必要はない)
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【編集後記】
スモールビジネスでは、MAの前に、基本的な顧客管理・案件管理を徹底した方が良いです。
つまりSFA/CRMの活用、あるいはその前にまずはエクセルやスプレッドシートでデータ共有することから始めましょう。
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