IT・システム全般

AI(人工知能)活用は業界全体のPDCA自動化を目的に

前回の記事で、業界の壁を壊す企業に求められる条件の1つとして、

業界のことを良く知りつつも、ビジネスとAIを結び付けられる企業

を挙げました。

業界の壁を壊せるのは、いつだって中小企業だ業界の壁を壊してきたのは、いつだって中小企業でした。特にこの20年間はインターネットネイティブ企業が強かった。これからは、どのような企業が業界の壁を破壊していくのでしょうか?特徴を挙げてみました。...

AI(人工知能)というと手元の業務プロセス自動化を目的に語られていることが多いと感じます。その面も確かにあるのですが、業界の壁を破壊する意味では、業界全体のPDCAを自動化させることにこそ、AIの真価があると考えています。

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部分的なIT化、AI化では効果は少ない

AIに限らず、ITを活用する上で高い効果を上げるには、その適用範囲を大きくすることが大切です。今の業務を変えずに、業務プロセスの一部分をデジタル化したところで効果はたかが知れているのです。

この記事で現金(アナログ)をキャッシュレス(デジタル)に変えただけでは、業務負荷が軽くならないことをお伝えしました。それと同じです。

アナログをデジタルに置き換えるだけでは効果が薄い(キャッシュレスの例)単に現金をキャッシュレスに変えただけでは、お店側にとってのメリットは、ほぼありません。せっかくキャッシュレス対応するなら、業務プロセスそのものを変えることで、初めて大きな成果が得られるのです。飲食店のキャッシュレス化を事例として、学んでみましょう。...

ITを活用するときには、その特徴を理解して、業務プロセスそのものを変えることを考えた方が良いのです。ただITツールに慣れていない場合は、まずは小さく小さく始めることを推奨しています。

特にAI活用についても同様です。
今回のテーマである「業界の壁を破壊する」ことを考えた場合、より大きな範囲で考える必要があります。

余談ですが、その意味でRPAとは問題解決の次元が全く異なるのです。RPAは現在の仕事のやり方を変えないまま、目の前の業務負荷を軽くする「つなぎのツール」。一方、AIは業界そのものを変えるインパクトを持つものです。

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業界を破壊するイノベーションは、業界全体のPDCA自動化から生まれる

1つの例としてCADソフトで有名なautodesk(オートデスク)の例を挙げます。CAD業界ではトップ企業ではありますが、この会社は「我々は建設業に参入する」と宣言をしているそうです。もちろん、建設業界におけるポジションはありません。

autodeskのCADは建設業界だけでなく、自動車業界など、様々なところで利用されています。ただ、建設業界には非常に無駄が多い(つまり生産性が低い)と言われています。例えば、埋立地に送られるゴミのうち40%は、建設現場から出た廃材だそうです。

ゴミを出さない・水もリサイクルが前提になりつつある製造業と比べると「無駄だらけ」というわけです。これを設計(CAD)の段階から何とかしようとしているのです。

同社は「Generative Design」にて、過去の設計図などから最適な設計をAIが提案する仕組みを構築しています。また「Construction IQ」にて、建設現場におけるデータを収集・分析し、ユーザーの判断を支援しようとしています。大和ハウスと手を組んで進めているプロジェクトもあります。

この件に関しての詳細は、湯川さんの記事や、こちらの記事が参考になります。

この事例のポイントは、業界における自社のポジションだけでなく、業界のサプライチェーン全体を対象にしていることです。autodeskの領域は「設計」ですが、それだけAIで最適化しても部分最適になる可能性があります。そうではなく、設計から調達・製造・建築という業界全体に対して、AIでPDCAを回しているのです。

サプライチェーン全体に対してPDCAを回すことで、顧客に対する価値にフォーカスしつつ、経験を積み、より良い商品・サービスを創り上げることを意味します。業界トップが守っている既得権益も破壊するのでイノベーションになるのです。

このPDCAを人が回すと時間が掛かってしまいますが、AIで自動化することによって、圧倒的にスピードと検証のコスト削減を実現しています。

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ビジネス(経営)・現場・AIエンジニアが手を組む

このような業界全体のPDCA自動化を実現させるためには、

  • ビジネスが分かる人(経営者)
  • その業界の現場の困りごとが分かる人
  • AIを扱える人

の3者が手を組む必要があります。

継続性を持たせるためには、事業として成り立たせねばなりません。経営者が必要なのです。業界の壁を壊すイノベーションを起こすには、その業界が抱えている課題や、顧客に負担や不便を強いていることをリアルに感じる人がいなければなりません。そしてこれらに対してPDCAを高速に回していくためには、AIを扱える人がいなければなりません。

このような体制を組むのは、非常に難易度が高いのではないでしょうか。スタートアップでもこの体制を組めている企業は稀ですし、一般の中小企業では皆無と言って良いでしょう。

難しいからこそ、需要が生まれますし、こういう体制を組めた企業・チームは成果を上げていくでしょう。前回の記事でお伝えしたように業界トップ企業は既得権益があるため、このようなチャレンジができません。中堅以下の企業や、官公庁・大学・地域が手を組んで、このようなチーム・プロジェクトを推進していくのです。

まとめ
  • 業務プロセスの一部ではなく、業界のサプライチェーン全体に対してAIを活用する
  • それによって業界全体が抱える無駄が省かれてイノベーション(新たな価値)が生まれる
  • 経営者・業界に詳しい人・AIエンジニアの体制が必要
  1. 業界の壁を壊せるのは、いつだって中小企業だ
  2. AI(人工知能)活用は業界全体のPDCA自動化を目的に(←この記事)
  3. 1社単独で戦うよりも、地域・産学チームをつくれる組織が伸びる
  4. 社会問題に向き合う企業が、業界の壁を破壊していく

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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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