IT・システム全般

DX(デジタルトランスフォーメーション)について思うこと

DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉があちこちで散見されます。
ただ私は、もうこの言葉に踊らされるのは止めた方がいい、と考えています。

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9割の企業、9割の人にとって「DX」は関係ないこと

DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が安易に使われ過ぎていると考えています。(その理由は後述)

DXとは、デジタル技術を使って「変革」すること。
デジタル技術を用いて、従来の業界の常識であるビジネスモデルを変えることです。
ただ、こう言われても多くの人はピンと来ないのではないでしょうか。

DXとは「破壊」である

もっと具体例で見てみましょう。

  • 今、稼ぎ頭である事業を止めること
  • 既存の顧客を失うこと
  • これまでの事業に貢献してきた人・企業との関係を断ち切ること

タワーレコードが店舗を閉店し、店舗で働く人たちを解雇する。
これまで店舗に頻繁に訪れてくれた顧客を失う。
そして、Apple Musicや Spotifyのようにデジタル配信・サブスクリプションでビジネスできるでしょうか?

フジテレビが CMを一切やめて、電通や博報堂らと手を切る。
Netflixのように価値あるコンテンツを制作、デジタル配信する。
そういう視聴者からのサブスクモデルに転換できるでしょうか?

トヨタがリセラーを通じた販売ビジネスを止める。
消費者にECサイト(オンライン)で車を直接販売する。
あるいはカーシェアとして時間貸しする。
さらには自社で運行サービスを提供する。
これまで販売・メンテナンスで貢献してくれた企業を敵に回すような変革を、行えるでしょうか?

何れも無理な気がします。
今の事業が成り立っているということは、これまでその事業に貢献してきた人やビジネスモデルがあります。
当然、その事業を通じて関係構築してきた顧客がいます。

極論ですが、そういうモノを破壊することが DXです。

DXには「覚悟」が必要

つまり DXとは、経営者のとんでもない「覚悟」が必要なのです。
そして「覚悟」だけではなく、「自分達が当事者でない」ことが DXを行うための条件ではないか、と考えています。

Amazonが本屋さんを破壊し、小売業全般を破壊できたのは、自分達が本屋・小売じゃなかったからです。
紀伊国屋書店には、Amazonが行った破壊はできませんでした。
(正にイノベーションのジレンマと言えます)

テスラが EV市場をつくり、エネルギー業界の産業構造すら変えようとしているのも、これまでの当事者ではないからです。
上述の通り、トヨタにはテスラのような動きはできませんでした。

実際に DXしようと思ったら、新規事業を別会社として立ち上げるなど、組織を別にしなければ(ほぼ)実現不可能に思います。特に大企業の場合。

DXに関わるのは、せいぜい1割の企業・人だけ

というわけで、デジタル技術を用いて業界を破壊するくらいの動きができるのは、多く見積もっても、せいぜい 1割の企業ではないでしょうか。
日本には 300万者以上の事業者がありますが、DXできるのは 3万者もいない気がします。
実際には、1%もないのでは?

つまり、ほとんどの企業・人にとって、DXなど関係ないのです。

(ひょっとすると先進企業に潰されてしまうかもしれないけれども)今まで通りのビジネスを営みたい。
既存の事業や、人との関係性を破壊してまで、新しい事業に取り組みたいとは思わない。
実際にはこういう企業・人が大半だからです。

私自身、会社員を辞めてから約7年になりますが、ビジネスモデルは変わっていません。
そう簡単に変えられない、とも感じています。
そんなわけで、安易に「DX」という言葉を使いたくありません。

ITゼネコンは「DX」という前に ITゼネコンを破壊せよ

にも関わらず、巷では安易に「DX」という言葉が使われまくっています。
これは売り手である IT業界、そのなかでも昔から日本市場に君臨し続けている ITゼネコンに問題があります。

官公庁や金融・エネルギーなど、社会インフラとして機能している組織を相手に、システム開発を担っている企業たちです。
具体的に言えば、富士通・NECらです。

彼らのWebサイトでは、やたらと DXを強調しています。

(富士通のトップページより)

(NECのトップページより)

彼らは社会インフラである大手顧客から、IT予算を引き出すことでビジネスを継続しています。
「DXしないと、他社・他国に置いていかれますよ!」という売り文句を言いまくっているのでしょう。

長くIT業界に関わってきた人間として言いたいです。
そんなに DXが重要なら、

  • まずは自分達自身が ITゼネコンを破壊すべきでは?
  • 顧客からシステム開発を受注して、納品することによって収益を得るビジネスモデルを止められないのか?
  • システム開発をいつまでも外注しているのか?
    (管理という名で仲介料を取っているだけの場合が多い)

と感じます。

こういう痛みを伴う改革を自分達自身が行った上で、初めて「DX」という言葉を使ってもらいたいもの。
インフラ企業にぶら下がり続け、自分達が何も変革していないのに、偉そうにDXなどと言わないで欲しいです。

ゆっくり変わっていくことも大事

日本に300万者以上存在する事業者のうち、本当に DXを必要としている企業は、果たしてどのくらいあるでしょうか。
いわゆる「スタートアップ」と呼ばれる企業たちや、新規事業を立ち上げようとしている組織では、DXが必要でしょう。

しかし、その他の 9割以上の組織・人にとって、「DX」は不要です。
少なくとも短期的には。

それより大事なのは、今の事業をよりスムーズに運営するためのカイゼンです。
DXなどと大それたことを言わず、いわゆる普通の「IT活用」をする。
DXとの対比では、「デジタル化(デジタイズ)」などと呼ばれるものです。

  • DXは、断絶を乗り越える不連続な変化。つまりイノベーション
  • カイゼンは、日々の絶え間ない連続的な変化

ちなみにIT企業の多くが、普通のカイゼンを「DX」などと言うことも多いです。
例えば「RPAを活用して自動化」をDXなどと謳っているのですが、それはカイゼン。
私たちは言葉を正しく使う企業と、長くお付き合いしたいもの。

そして DXとカイゼンは、どちらが良い・悪いではありません。
その事業にとって、今どちらを重視するか?という選択です。

私が日頃、中小企業とお付き合いしている限り、多くの企業に直近必要なのは「カイゼン」の方だと実感しています。
断絶を乗り越えるような変革(=破壊)ではなく、ゆっくりと変わっていくカイゼン。
その重要性は、日本の歴史を振り返れば十分に理解できるはずです。

私たちはIT企業や霞が関が声高に主張する、「謎のDX」に振り回されることなく。
自社の方向性や戦略に真摯に向き合うことが重要でしょう。

まとめ
  • DXとは破壊を伴う、経営者の覚悟が求められるものである
  • ITゼネコン各社は、まずは自分達の DXをすべき
  • ゆっくり変わっていくカイゼンも大事

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【編集後記】
新規プロジェクトの関係で、インプット(学習)の量が増えています。
ついでに年初から続けている数学が面白くなってきており、1日3~4時間くらいはインプットしています。
ただ学ぶだけでなく、アウトプットにつなげたいです。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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