IT・システム企画

会社支給パソコンを止めて、BYODを実現するための環境と従業員の役割

前回、会社個々人のパソコン・ITスキルを向上させるために、パソコンの支給を止めることを提案しました。

従業員のパソコンスキルを上げるための確実な一手従業員個々人のパソコンスキルをもっと高めたくないですか?そのためには会社がパソコンを支給するのを止めて、一定金額を渡す。その上で個々人が自分でパソコンを選んで購入し、自分で設定することが効果的です。いわゆるBYODです。...

この記事では概念だけをお伝えしたので、もう少し具体的に誰が何をやるのかをお伝えします。

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BYODを実現しやすい環境

会社支給のパソコンを止めて、BYOD(Bring Your Own Device)を実現するためには、事前に環境を整える必要があります。何の準備もしないままBYODを実現するには無理があります。その事前準備とは、業務で利用するソフトウェアとデータをクラウドに移行することです。

ソフトウェアのクラウド化

1台1台のパソコンにインストールするソフトウェアが多いほど、BYOD化したときに従業員の負担が重くなってしまいます。それに帳票を印刷しないと業務が回らないようだと、個々人がプリンタの設定をしなければなりません。

しかしクラウド中心になっていれば、ネット環境とブラウザさえ整っていれば、あとはログインするだけです。インストールもプリンタの設定も不要です。

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業務の全てがクラウドだけで対応できてしまうことが理想です。ただ多くの場合、実際には、マイクロソフトOfficeを中心に、どうしてもインストールしたいソフトウェアが残るでしょう。

データのクラウド化

また、データをパソコン本体に保存してしまうと、パソコンを交換するときの作業が大変です。また個々のパソコンでバックアップをしなければならなくなります。

組織としてファイルの置き場所もクラウド化することで、パソコンの交換やバックアップも、スムーズに対応できるようになります。

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社内にファイルサーバーがある場合は、これを機会にクラウドストレージに移行してしまいましょう。そうすれば、場所を選ばず、どこからでもデータを活用できます。

従業員が果たす役割

こうした環境が整った上で、BYOD化すると従業員が新たに果たす役割が生まれます。非常にザックリと言えば、以下のように変わります。

  • 従来)システム担当者からパソコンを受け取ったら、すぐに使える環境
  • BYOD)自分の環境は、自分で準備する

前回の記事でも述べましたが「自分のことは自分でやる」がBYODの基本です。社長であろうと誰であろうと例外なくです。それによって組織全体のパソコン・ITスキルが上がっていくのです。自分の服は自分で選んで買う、それと同じですね。

以下、具体的な役割を見ていきましょう。

パソコンの購入・故障したときの修理

パソコンは各自で選び、購入します。各自の業務要件に基づいてパソコンを選びます。今までは何も言わずともシステム担当者がパソコンを選んでくれていました。

しかし、限られた予算の中から自分で選ぶと、失敗できないので真剣に選ぶことになります。これがスキルアップにつながるのです。

故障したときや調子が悪いときの切り分けや修理も自分で行います。

  • ハードウェアやOSが悪い場合→自分でメーカーに問い合わせて修理する
  • 会社から提供されているソフトウェアが悪い場合→システム担当者に依頼する

今までは困ったことがあれば、まずは情報システム担当者に連絡をすれば何とかしてくれました。しかし、BYOD環境においては、自分のことは、自分でやらねばなりません。パソコン本体(ハードウェア)やOS(Windowsなど)の調子が悪いときは、自分で何とかしなければなりません。

Wi-Fi・プリンタなどの環境設定

会社から提示された情報に応じて、Wi-Fiやプリンタなどの環境設定を行います。プリンタを設定するときに「ドライバ」などの概念も学ぶことになるかもしれません。(最近のOSは、ほぼ何もしなくても自動的に設定できてしまいますが)

従来は会社が設定をした上でパソコンが配布されたり、あるいは詳細な手順書が配られて操作に困ることがなかったりしたでしょう。BYOD環境では、会社からの情報提供は最低限ですから、各自が分からないことは調べることになります。

業務で必要なソフトウェアのインストール・設定

マイクロソフトOfficeなど、パソコンにインストールするタイプのソフトウェアが必要なこともあるでしょう。そのようなソフトウェアのインストールや初期設定も、各自で行います。

これだけ読むと「従業員の負担ばかりが増える」と文句を言われてしまうかもしれません。確かにそういう面が短期的にはあるのですが、長い目で見ると良いことも多くあります。

次回、会社側(情報システム担当者・経営者)が果たす役割と、従業員から見たBYODのメリットについて、お伝えします。

BYODを実現するための会社側の役割BYODを実現すると、会社側の業務も変わります。パソコンやセキュリティポリシー策定など、新たに発生する業務がある一方で、パソコンのキッティングや資産管理などの業務がなくなります。最初は大変ですが、BYODを実現することで得られるメリットは多々あります。...
まとめ
  • BYODを実現するには、事前にソフトウェアとデータのクラウド化が必要
  • 従業員は新たに、自分のパソコン環境は自分で整える役割が生じる
  • その役割を通じて、一人ひとりのパソコンスキルが向上する

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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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