ITを知らずに事業をダメにしてしまう経営者。
そのような経営者の事例が次から次へと出てきます。
この記事では経営者がITを知らないと、どんなことになってしまうのか?事例を通じて解説します。中小企業の経営者に読んでいただきたいです。
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ネットの可能性を無視して倒産(米国ブロックバスター)
1つ目は少し古い事例です。
米国を中心にビデオ・DVDのレンタルチェーンを展開していたブロックバスターです。
日本で言えば、TSUTAYAのような存在。
2004年のピーク時は6万人以上の従業員、9,000店舗以上展開していました。
しかし、2010年に連邦倒産法第11章を申請して倒産。
その原因はITやデジタル化を全く理解しない経営者でした。
2000年代、インターネットがビジネスや日常生活にも浸透してきた時代です。
当時、あるスタートアップ企業が、ネットで商品を選び、郵送でレンタルするサービスを始めていました。当時は動画をダウンロードできるほど、インターネットが広帯域ではありませんでしたので。この企業は、後に定額性、今でいうサブスクリプション型のサービスを展開しています。
このスタートアップ企業は、順調に事業を成長させていましたが、資金繰りに苦しんでいました。ブロックバスターに事業提携・事業売却の提案をしてきましたが、ブロックバスターは拒否しました。インターネットの可能性を理解していなかったのでしょう。
同時に、大企業にありがちな、スタートアップの市場規模が小さすぎたためもあったと言われています。
とは言え、さすがに社内でもインターネットを活用したビジネスが検討されていたそうです。このスタートアップと同様のサービスも展開し始めていて、店舗からネットへのシフトも進めようとしていました。
そんなとき、店舗ビジネス出身の新しいCEOがやってきます。
このCEOは、ネットへのシフトの動きを止めてしまいました。
代わりに「店舗でUSBメモリに動画をコピーするサービス」を展開しようとします。
呆れ果てた古くからの幹部が会社を去ったそうです。
組織はボロボロ、急成長するネット市場。顧客は離れる。
そして2010年に倒産。ピーク時から、わずか6年での出来事でした。
ちなみに勘の鋭い方はお気づきでしょうが、上記の「スタートアップ企業」はNetflixです。
- インターネットという未知の世界を学ぼうとしなかった
- 競合他社を小さな存在として、見て見ぬふりをした
- 短期的な利益に走り過ぎた
この事例はいわゆる「イノベーションのジレンマ」と言われるものです。
単にIT無知だからとは言えない難しさもあります。
ただ、経営者がITに無知すぎたことが原因であることは否めません。
経営者がエンジニアのように細かな技術を知る必要はありません。
しかし、ITを活用してビジネスや、消費者の生活がどう変化していくか?を見ていなかった責任は重いでしょう。
事業のコアを丸投げしていた素人経営者(7pay)
次はもっと最近の日本事例です。
セブンアンドアイホールディングスが2019年7月1日に始めた決済サービス「7pay」が、2~3日後には新規入金停止。同9月30日にはサービス停止に追い込まれました。
決済サービスですから、セキュリティは最重要視されます。
しかし不正使用が発覚し、記者会見に対応した当時の社長が「二段階認証」すら知らないことが大問題になりました。
事業の最も重要なコアな部分を、何も知らない素人経営者に任せている。
そのことが社会的な信用失墜を招き、「7pay」は市場から即、追放されました。
事業に直結する部分であったこともあり、1つ目のブロックバスターCEOよりも酷いと言わざるを得ません。ただ同じようなことは、中小企業の社長と会話していても、度々感じます。
- 自社の業務の流れ(業務プロセス)を知らない
- 自社の情報の流れを知らない
こういうシーンに実に良く出会うのです。例えば、
「月次決算が1ヶ月近くも掛かってしまう。でも顧問税理士さんにお任せしているから、どうにもならない」
「案件の依頼をもらってから見積提出までに1週間かかる。営業部と製造部の間で調整しているらしいけど、何でそんなに時間かかるんだろうね」
というようなことを平気で仰います。
経営者の懈怠と言われても仕方ないのではないでしょうか。
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新型コロナ感染者の個人情報を流出させた愛知県
もう1つ、直近の事例です。
愛知県が新型コロナウイルス感染者の個人情報を流出させました。
(愛知県のホームページより。赤線は筆者追加)
事故を起こしてしまった事実だけでなく、このホームページ内容から見て、経営者(と役所は言わないでしょうが)がIT音痴であることが明確です。
時事通信社の記事によると、感染者情報を「エクセル」で管理していたそうです。
そもそも、個人情報の管理はエクセルで行うべきではありません。
(理由は以下の記事をご覧ください)
それにエクセルの表から、個人情報などを除いてホームページに掲載するという作業を毎日やっていたというから驚きです。毎日毎日、同じ作業を繰り返すのであれば、ミスが発生しないようツールを使うでしょう。それが経営者として行う判断です。
そのような判断を怠っていたからこそ、事故は起きてしまった。
にも関わらず、「ダブルチェック(さらに人手をかける)等の対応を徹底」と宣言していることから、全くIT活用ができていないことを、さらに露呈させてしまいました。
7pay同様、社会的な信用失墜を招いた事件だと考えています。
重要な個人情報を扱う役所が、事業のコアに対して認識が低すぎるからです。
役所は倒産しないから、危機意識が低すぎるのではないでしょうか。
私だったら、そもそも手作業はさせません。
各地の病院や保健所からデータを集める方法を自動化します。
イメージはこのようなものです。
各病院、保健所などの現場にてデータを入力してもらいます。
パソコン入力が難しければ、紙を読み込ませてデータ化するサービスなどを使います。
貴重な医療従事者に、毎日繰り返しの事務作業をさせるのは、経営者の怠慢です。
入力してもらったデータはネットワークを通じて、1ヶ所に集められます。そのデータから、個人情報を取り除き、ホームページに自動的にアップします。
このようにしておけば、人為的なミスが発生することはありません。
「ダブルチェック等の徹底」が意味をなさないことも、ご理解頂けると思います。
働く人にミスを犯させない。仮に悪意を持ったとしても、仕組みでそれを防ぐ。
それが経営者の仕事です。
ちなみに今回の新型コロナの件だけでなく、病院のリソース(病床や治療器具、医療従事者やその専門性など)も同様に管理できるはずです。
この取り組みについては、こちらの記事でもご紹介しています。
そうすれば、患者の転院に伴う病床の空き確認などを電話やFAXに頼る必要がなくなります。人手を介さず、自動化することも可能になるはずです。
しかし、役所が動いてくれないので、現場から変えてやろうという動きが始まっているのです。そういう気概がある人達が活躍することは嬉しいことです。
その一方で県や厚生労働省が、このような取り組みの旗振りができないことを、非常に残念に思います。しかもIT音痴な人が無理に旗振りしようとするから、こんな動きも出てきてしまいます。
これはサイボウズとは別の話。キントーンなら10億円もかからないよね。(笑)
厚労省が新型コロナ感染者情報を一元管理する新システム、開発費用は10億円 https://t.co/hlMaB6slRS
— 青野慶久/aono@cybozu (@aono) May 4, 2020
新型コロナ感染者情報を一元管理するだけなら、10億円も掛かりません。
私のイメージ図のような仕組みを使えば、良いだけですので。
そのような判断ができないのも、IT音痴な人が、システム開発会社に適当な要件を伝えるからです。そろそろ税金を無駄に使うのを本当に止めて欲しいです。
経営者は意思決定できるまで学ぶべき
さて、ずいぶん長い記事になってしまいました。
ちなみにこれらは、ITに限った話ではなく、法務も経理も同じです。
ビジネスに大きなインパクトのある重要な契約を結ぶのに、現場に丸投げ。
キャッシュフローが分からずに、感覚で経営してしまい倒産寸前。
そのような話を、実に頻繁に聞くのです。
中小企業経営者は、元々、何らかの職人であることが多いでしょう。
だからこそ、意識的に経営者としてスキルアップする必要があります。
いつまでも「営業」「技術者」「デザイナー」のままでは経営できないのです。
分からないことは現場から教えてもらいつつ、自ら学ばねばなりません。
少なくとも自分で意思決定できるレベルにまでにならなければ、経営者として仕事をしていないことになります。
より良い経営をするためには、経営全般を見渡し、意思決定できるだけの知識が必要です。
IT知識は、その重要な1つです。
面倒くさがらずに、知識を仕入れていきましょう。
- 経営者がIT知識がないために、事業をダメにする事例を紹介
- ITに限らず、経営者は全般的な知識の仕入れが必要
- 自ら意思決定できるレベルまで知識をつける
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【編集後記】
読書記録をつけている「ブクログ」のAndroidアプリがリリースされていました。
今まではブラウザから登録してたので、少し便利になりそうです。
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変化・成長したいというビジネスパーソンにお読みいただいています。