ITアーキテクチャの変遷を学ぼうシリーズ。
ITが専門ではない経営者にとって、ITアーキテクチャの変遷を学ぶことは、メリットが多いです。
前回は1964年に登場したメインフレームをご紹介しました。
業務別にバラバラに存在していたコンピュータ(専用機)が、メインフレーム(汎用機)に置き換えられていきました。
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アーキテクチャを初めて導入
ITアーキテクチャの変遷を学ぶ上で、最初にメインフレームをご紹介したのは理由があります。「アーキテクチャ」という概念が、コンピュータに取り入れられたのは、メインフレーム(System/360)が初めてだったからです。
今、私たちが一般的に使っている
- ハードウェア
- OS(オペレーティングシステム)
- アプリケーション
という区分が取り入れられました。
例えば、iPhoneというハードウェア、iOSというOS、その上で動くアプリ。
私が今、この記事を書いているのは、ThinkPad X1 Carbonというノートパソコン。
その上で動くWindows 10、アプリケーション(ブラウザ)は Chrome を使っています。
それまでの業務別専用機の時代は、ハード・OS・アプリの区別がないまま、各社が個別にコンピュータ・システム(ハードからアプリまで)を、まるっと開発・生産していました。
技術仕様の標準化を進めた
System/360はアーキテクチャの概念を導入した上で、各機能、インターフェース(接続方法)を定義し、その技術情報を公開しました。
正に、現代のコンピューターアーキテクチャの基本的なスタイルを確立したのです。
それによって、様々なメリットがありました。
エコシステムの発展
1つ目はエコシステムの発展です。
今までは各社が勝手にコンピューター・システム(一式)丸ごとを開発・販売していました。
しかしアーキテクチャが整備され、技術情報が公開されたことによって、エコシステムが発展しました。
System/360で動くソフトウェアや、プリンタなどの外部接続装置を IBM以外の会社が開発・販売しました。
ソフトウェア専業の会社、プリンタ専業の会社などが生まれました。
IBM中心ではありましたが、IT業界にエコシステムが発展するキッカケとなったのです。
何でも自社で抱え込むのではなく、他社と連携することによって業界全体が発展することを、IBMは示してくれました。
当時は、外部接続点(インターフェース)だけの公開でしたが、しばらくして全てをオープンにする流れにつながっています。オープンアーキテクチャと言います。
具体的には、Linux(OS)や MySQL(データベース)などが相当します。
互換性が生まれた
アーキテクチャの導入により、ハードウェア・OS・アプリケーションが独自のものとして開発されるようになりました。
つまり、部分的なアップデート・交換が可能になったのです。
ハードウェアである iPhoneを買って、しばらくすれば iOSのアップデートがあります。
ハードは同じなまま、OSだけを更新できるのです。
しかもアプリは従来通り使えます。(たまに使えなくなりますが・・)
アーキテクチャが導入される前は、何か1つを変えようと思ったら、全体を交換するしかありませんでした。
手間やコストを考えると、とんでもない違いですよね。
開発方法の標準化
コンピューター本体や周辺機器、プログラムなどの開発方法の標準化が進みました。
結果として、
- 開発生産性の向上
- (エコシステムの発展と共に)外部開発の促進
- コスト削減
が進んでいきました。
これらが活かされて、のちにコンピューターの小型化やパソコンの登場につながっていきます。
ベース技術の確立
1964年に登場したメインフレームですが、その後もしばらく発展し続けました。
最近は大企業でも減ってきましたが、2010年頃であれば、大企業ではメインフレームを使っていた企業が、かなり残っていた印象です。
同じメインフレームを40年以上、稼働させ続けていた会社も見たことがあります。
そんなメインフレームが生み出したものは、アーキテクチャやエコシステムだけではありません。
今でいう基礎技術も、メインフレームに実装されていました。
例えば、System/360には「仮想マシン」が、後継機である System/370には「仮想ストレージ」が実装されていたようです。
パソコンで「仮想マシン」がマトモに実装されたのは、2006年に登場した「VMware Infrastructure 3」が最初ではないでしょうか。
私は個人的に2000年頃、仮想マシンを動かしてみました。
しかし、当時のパソコンレベルのCPU・メモリでは、仕事で使うには耐えられないレベルでした。
それがメインフレームでは1960~70年代に動いていたのですから驚きです。
パソコンや、のちのクラウドで利用される基礎技術の多くが、実はメインフレームに実装されていました。
その後のIT発展の礎になったという意味でも、メインフレームが果たした役割は偉大でした。
- ITアーキテクチャの変遷を知るメリット
- メインフレームから学ぶ、ITの歴史(1964年 System/360登場)
- メインフレームから学ぶ、ITの歴史(標準化とエコシステム)【← 今回はココ】
ITアーキテクチャの変遷を学ぶシリーズ、まだまだ続きます!
- メインフレームは、ハードウェア・OS・アプリケーションという構造を取り入れた
- それによって分業(エコシステムの発展)、開発方法の標準化などが進んだ
- 現代も使われている技術の基礎をつくった
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【編集後記】
改めて情報を整理してみると、当時のメインフレームの「先見性」に驚かされます。
単にコンピュータの話として見るのではなく、ビジネスのつくり方にも共通するところがあるように感じています。
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