IT・システム全般

私がデジタル庁に期待したいこと

最近「デジタル庁」に関する話題を多く聞きます。

平成13年の「e-japan戦略」や平成25年の「世界最先端IT国家創造宣言」に比べると、話題性も高くなっており、良い傾向だと思います。
実際にハンコが減るなどの改善も見られていますし。

この記事では、一国民としてデジタル庁に期待したいことを挙げてみます。

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行政のスピード1000倍、コスト3分の1、品質向上

コンセプトを言えばこれです。QCD!
まずはこの3点を説明します。

行政のスピードを1,000倍速く

行政はとにかく「遅い」。

何か手続きをしようと思うと、役所やサービスセンターに行って、列に並んで・・と気が遠くなるような時間が掛かります。
そういう経験をするたびに「Amazonに運営を丸投げした方が良いんじゃね?」と思ってしまいます。(外資に依頼するのは良くありませんが、例えとして)

行政に限らず、組織は大きくなるほど意思決定や手続きが遅くなりがちです。
私自身、2,000~3,000人規模の一部上場企業で働いていた頃と、スモールビジネスを中心に支援している現在で比較すると、社長の意思決定は1,000倍は速くなっています。

比喩ではなく、大企業だと1年掛かる意思決定が、30人規模の社長だと10分で終わるのです。
ある程度は仕方ない部分もありますが、行政はとにかく遅い。(大事なことなので2度言います)

もっとITを活用して、スピードを1,000倍速めて頂きたい。
今まで1時間(3,600秒)掛かっていた処理を 3.6秒で終えるということです。
従来のやり方のまま気合で頑張っても無理な目標ですから、やり方を根本的に変える必要があります。

行政コストを3分の1に

動きの遅さと同じくらい気になるのがコストです。
行政の窓口に行くと、明らかにコストが掛かり過ぎているのが目につきます。

  • 窓口を案内するだけに何人も人が居る
    (どの窓口に行けば良いのか?分かりやすい掲示をすれば良いだけ)
  • オンラインで済むことを対面でやるので、人件費が高くつく
  • 庁舎がやたら立派な割に、一般利用しにくい
  • 補助金など、お金のあるところに電通などがハイエナのように・・

など、気になることばかりです。
わざと無駄をつくって、誰か既得権益者にお金を流しているとしか思えません。
それくらい効率が悪い。

一人ひとりの公務員は良い人が多い印象ですが、組織全体としてみると、非常にあくどい商売に感じてしまいます。

行政サービスの品質向上

人口が減り、高齢化していく社会において、行政が担わなければならないことは増えるばかりです。
そういう新たなサービスに対応するためにも、現状サービスは品質を高めて、利用者が迷うことを防ぐ必要を感じます。

窓口で人が対応するなんてもってのほか。(新型コロナのようなリスクもありますし)
オンラインで完結するものは完結させる。
ただし、単にオンライン化すれば良いものではありません。

その代表例が国税庁の e-tax(イ―タックス)です。
UX(使い勝手)が悪すぎて辟易したことが何度もあります。

ITリテラシーが高くない一般の方、高齢者でも、迷わず使うことができるように。
それが品質が高いということです。

デジタル庁に期待すること

ここまではコンセプトでした。
以下、具体的に期待することを列挙してみます。

ハンコをなくすのは、あくまでも表面的に今すぐできる対策に過ぎません。
もっと抜本的な改革が必要です。

マイナンバーカードの刷新と普及

日本の行政手続きが煩雑な理由は、国民IDが普及していないからです。
その結果、何度も住所や氏名を紙に書くという雑務が発生します。
給付金の手続きや配布に、余計な時間とコストが掛かったことは、記憶に新しいです。

マイナンバーカードが普及しなかったのは、運用が全く考えられていないからです。
様々な失敗システムを見てきましたが、その典型例と言えます。
ダメな企画をゴリ押ししてつくってみたものの、全然利用されないという。

一例ですが、暗証番号だけで4種類あります。
そんなものを覚えられる人がどれだけいますか?・・と。
しかも暗証番号を忘れると、地元の自治体にいかないとリセットできない(はぁ~)

総務省が立ち上げたものなので、他の省庁は追随しない・無視。
最近、ようやく経産省とかも使うようになりましたが、ザ・縦割り組織!
「まずは省庁を超えて方向性を合わせろや!」と文句を言いたくなるのは、私だけではないはずです。

デジタル庁には、縦割り組織を横からぶち壊して頂き、きちんと国民IDとして機能する仕組みを普及させて頂きたいです。
これが行政のスピードアップ・コスト削減・品質向上の肝になるはずです。

デジタル庁舎の実現と働き方改革

自治体の庁舎は立派過ぎて驚くことが多いです。

ちなみに私の住む横浜市は、先日から新庁舎での業務が開始されています。
この新庁舎に 749億円の総工費がかかるという予算案が出されています(2015年)。
30階以上のとっても立派なビルです。
私は横浜市民ですが、この新庁舎には行ったこともありません。

災害時にも機能する必要のある行政ですから、庁舎が必要ないとは言いません。
しかし、ホワイトカラーの行政業務大半はオンラインでできるのではないでしょうか。
(土木工事・水道などの物理的なものを除く)
議会も最先端を走ってオンラインで完結して欲しいものです。

また、地方に出張すると、その土地で一番立派な建物が役所という場面を見ることがあります。
税金の使い道、それで良いのですか?と。。
建設業にお金を流しているだけなのでは?と思ったり。

ですから庁舎を最小化して、「デジタル庁舎」で業務を回せるようにして欲しいものです。
民間企業に働き方改革を求めている以上、政治家や役人が率先してそれを実現すべきでしょう。
霞が関の働き方はキングオブブラックですが、このままでは優秀な若者が近づきません。
国力を維持・向上せるためにも、特に霞が関から働き方を徹底的に改革して欲しいです。

ネット選挙の実現

我が国では、いつまで経ってもネット選挙が行われません。
何故でしょうか?
ここでも既得権益が邪魔しているように思えてなりません。

1回の国政選挙を行うたびに、500億円単位のお金が消えている。

なぜ未だにインターネット選挙は実現しないのか?選挙が終わりましたね。 結果そのものについて、ここで意見を述べるつもりはありませんが、今回、大雨&台風の選挙だったこともあり、改めて選...

しかも入院していたり、選挙会場に行けない人を差別している。
こんな状況をいつまで放置しておくのでしょうか?
先述した国民IDが機能すれば、ネット選挙はすぐにでも行えるはずです。

行政手続きの全オンライン化・オープンデータ化

何かことがあるたびに、役所に行ったり、行政サービスコーナーに行ったり。
紙を出力しないと手続きができないのが現状です。

例えば住民票や戸籍謄本を印刷して銀行に提出するのではなく、個人(国民IDを持った人)が許可をして銀行が戸籍データを参照できるようにする。
それによって、余計な紙も、印刷コストも、そのための時間も不要になります。

さらに政府統計や行政データはオープンデータ化して、民間が利用しやすい形で提供します。
決してPDFや、グチャグチャになったエクセルファイルで提供してはなりません。
CSVやJSON形式、またAPIを通じて提供するのが良いでしょう。

また長くなるので詳細は省きますが、教育、医療、税金、補助金・助成金に関する行政のIT活用も徹底して頂きたいですね。
新型コロナで休校された子供たちをデジタルを使って救うときです。

業務プロセスとシステムの標準化

地方行政システムは標準化すべきでしょう。
現在は各自治体がシステムインテグレーター(SIer)に発注しています。
どう考えて似たようなシステムがあちこちで乱立しています。
しかも微妙に法解釈が変わっていたりするからややこしい。

業務プロセスとデータ構造を完全に標準化する。
その上で、システムも標準化すべきです。
各自治体がシステム仕様を検討して、ベンダーに相見積もりを依頼して・・などと繰り返している無駄を今こそ止めるときです。

自治体にぶら下がっている SIer が倒産してしまうかもしれませんが、それは必要なことではないでしょうか。
長くIT業界にお世話になっている人間として、正しい淘汰は必要だと感じています。

優秀な人材を標準業務に割り当てるのではなく、その地方ならではの企画業務になどに割り当てて、その地方の価値を向上させる方が建設的です。

IT人材の教育強化

国は情報処理技術者試験を実施するなど、IT人材の強化に一定の活動をしてくれています。
ただ、まだ弱いと思います。

膨大なデータを扱う公務員には、もっとエクセルなどの教育を施した方が良いと感じます。
また、民間企業(特に中小企業)に向けてIT教育を強化すべきと感じます。
経営者に向けたIT教育は非常に重要ですが、全体を網羅したカリキュラムがなく、断片的なものが多いです。

中小企業支援機関におけるIT教育をより徹底することが、産業の強化につながると考えています。

最後に

・・と、他にも書きたいことはあるのですが、この辺で止めておきます。

何れにせよ、日本という国が存在感を示し続けることができるかどうかは、国・行政が変われるかどうかに大きく掛かっていることは間違いありません。
(もちろん、民間企業やNPOなどの活躍も重要なのですが、現在は国・行政が規制や低効率業務でそれらの足を引っ張っているので)

おそらく最後のチャンスだと思います。
このタイミングで、大きく変わって欲しいと切に願っています。
また、このブログをお読みの方も、ジブンゴトとして考えていただき、意見を出して頂きたいと思います。

現在、アイデアボックスのサイトがオープンしています。
このように政府が国民の意見をオープンに募集していることは、意義のあることだと感じています。
中身を見ると、投稿に対して返事も下さっているようです。

意見がある人は、積極的に投稿してみてはいかがでしょうか。
国民として、自分の国にどうなって欲しいか?を考える、良い機会にもなると感じています。

まとめ
  • デジタル庁には、行政のスピード1,000倍、コスト3分の1、品質向上を目指してもらいたい
  • 肝となるのは国民IDの普及
  • 国民が声をあげ続けることが重要

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【編集後記】
2015年頃に読んだ本を再読したら、凄いことが書かれまくっていて、衝撃を受けました。
本棚に残しているので、良い本だとは認識していたのだと思いますが、全く覚えていませんでした。
ようやく、この本の良さを理解できるくらいにはなったのだ・・と。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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