受託開発や派遣/SESからSaaSへシフトする連載を書いていたら、最高のタイミングで事例が発表されていました。現在7名の会社で、受託開発からSaaSを始め、5年で2,000社弱の有料ユーザを獲得した企業のスライドが公開されています。それを読み解いてみましょう。
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受託開発→SaaSを軌道に乗せるまでの取り組み
スライドはこちらです。
資金調達をせず、受託を基本としながら、非常に限られたリソースでサービスを立ち上げ伸ばしていくために、行っている工夫や取り組みの話
ということで、SaaSシフトを考えている企業であれば、知りたいことど真ん中でしょう。
12~13スライドで、受託をやりながらだと開発が進まない苦労が書かれています。ただ、28~29スライドで書かれている通り、自己資金だけでSaaSに取り組んでいるので、スタートアップのように焦る必要はないという経営者の気持ちが感じられます。
受託開発からSaaSになると、お金の流れが大きく変わります。
融資・投資などの外部からお金を入れてやるか、自己資本だけでやるか、経営者の決断が求められるところです。
スキルの差をどう埋めていったか?
14スライド、受託開発からSaaSに取り組む上で、足らないスキルが多々あることが書かれています。
こちらの記事でも書きましたが、開発者視点で見ると以下のようなスキル習得も必要なんですね。
- 自動テスト
ウォーターフォール型の開発から、アジャイル型に変わりますので、テストの自動化が欠かせません。 - UI/UX改善
SaaSの場合は利用者が操作に迷わないことが非常に大切です。本当は受託開発でも大切なのですが、おざなりにされてしまうことも多いのです。
その他にも企画・ユーザヒアリングから始まり、マーケティング(SEO、PR:広報、広告、CV改善、KPI)、CSなどがあります。
ただ、同時に色んなスキルを習得することはできないので、第1優先を開発とサポート、第2優先に企画・PR(広報)・SEOと、集中すべきものを絞り込みました。(18スライド)
この絞り込みの判断が素晴らしくて、経営者の方が顧客・自社・競合(いわゆる3Cですね)のことを良く見た結果だと感じています。
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開発における変化
その後のスライドは、経験してきたからこそ書ける、当時の苦悩や決断が感じられる内容です。SaaSにチャレンジしたい経営者の方は、じっくり目を通していただきたいです。私が感銘を受けたのは、”「多機能」ではなく「(ユーザ視点での)完成度」”というところでした。
受託開発はウォーターフォール、SaaSはアジャイルとお伝えしていますが、具体的な数字が出てくると実感が湧きます。リリース回数は以下の通りです(42スライド)。
- 2016年:43回
- 2017年:49回
- 2018年:39回
受託開発や、パッケージソフトの開発だったら、年に1~数回ではないでしょうか。年間50回近くもリリースするということは、毎週のようにリリースしているということです。半年ごとにロードマップを公開しつつ(こちら)、開発に集中されているとのことです。
また開発においても自社で集中すべきところを絞っています。初期はパフォーマンスをお金で買ったり(大きいインスタンスを使う)(44スライド)、セキュリティは外部の専門家を頼っています(45スライド)。
受託開発をやりながらの開発ですから、無駄なものはつくらない。厳選したものだけをつくっているそうです。では、どうやって厳選するか?それは商品の世界観・思想・方針が判断基準になります(46スライド)。
受託開発で2次・3次請けをしている場合、顧客の声に触れることがありません。この事例では最初からサポートを第1優先にしたところが素晴らしいです。開発者自身がサポートに関わるメリットは、ぜひ確認いただきたいです(47スライド)。
- スキル差は、優先順位をつけながら埋めていく
- サポートやヘルプも大事なユーザ体験
- 商品の価値観・コンセプトを守って、取捨選択する
この連載の目次です。
- 受託開発からサービス(SaaS)へシフトできない理由
- サービス提供型ビジネス(SaaS)へのシフトで注意すべきスキルの差
- SaaSにシフトするために超えるべき「お金の流れ」
- SaaSが提供しているもの(価値)は何なのか?
- 実例から学ぶ、受託開発からSaaSへシフトするために大事なこと (←この記事)
- SESや受託開発からSaaSへ移行するための第1ステップ
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