IT・システム全般

ITベンダーと利用企業の狭間に浮いているもの

ITツールを利用する利用企業(ユーザー企業)の経営者と会話をしていると、ITベンダーに対する不満を聴くことが多いです。端的に言うと「直接的に金になることしかやらない」というわけです。

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「カネにならないことはやらない」は、ただの怠慢

「あの会社、カネになることしかやらないよね」と言われたら終わりです。お客様からの信頼を失っているからです。

私はこのような事態に陥ってしまう理由は大きく2つあると考えています。

1つは商品ラインナップの設計ミスです。
そしてもう1つがITツールを使いこなす先駆者になれていないことです。

以下、1つずつ見ていきましょう。

商品ラインナップの設計ミス

一般的に、商品には大きく3つのカテゴリがあります。

  1. 提供商品
  2. 最初に買ってもらう商品(フロントエンド)
  3. 後から買ってもらう商品(バックエンド)

1つ目は「提供商品」です。名前の通り、タダで差し上げる商品です。
例えば私(渋屋)にとって、このブログやメルマガは提供商品です。
お客様から1円もいただくことなく、情報提供をしています。

タダで提供するものですが「商品」という位置づけです。
そういう意識を持っておかないと、品質がどんどん落ちていくからです。

提供商品の目的は、潜在顧客に知って頂くこと。
そして私(渋屋)や私の提供するサービスに興味を持っていただくことです。

したがって広告は最も分かりやすい提供商品の例です。

2つ目は最初に買ってもらう商品、いわゆるフロントエンドです。
比較的金額は安く、その分、利益も低くなります。
お客様にとっては、抵抗感少なく、最初の購買をしていただくことが可能です。

3つ目はリピートのお客様に買っていただきたい、いわゆるバックエンドです。
お客様との関係性は深くなり、その分、売上・利益ともに高くなります。
最も高い価値を提供しつつ、お客様とより深い関係性を構築します。

「カネになることしかやらない」と言われるのは、提供商品とフロントエンドが機能していないからです。これらがきちんと機能していれば、

  1. 知ってもらう
  2. 興味をもってもらう
  3. (小さく)買ってもらう
  4. 商品・サービスを利用し、満足してもらう
  5. リピートしてもらう

という流れが自然にできるのです。
この流れが不自然だから、お客様には「いきなりカネ寄こせ」と見えてしまうのでしょう。

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ユーザー企業よりも先駆的な利用者であれ

2つ目の理由は、ユーザー企業よりもITツールを使いこなす先駆者になり切れていないことです。多くのITベンダーは、自社が提供するツールのことは良く知っていても、それ以外のことはてんで知らないということが良くあります。

例えば、RPAベンダーがIFTTTZapierなどを知らないということがあります。同じ「自動化」ジャンルに属するツールであるにも関わらず。IFTTTやZapierを使うと、例えばメールに添付されているファイルを自動的にDropboxに保存するなど、複数のツールを連携させることができます。

わざわざRPAのロボットをつくって対応するよりも、IFTTTやZapierでできることなら、そちらの方が簡単です。しかしRPAベンダーは、自社商品を売ることしか考えていないから、他の便利なツールがあるにも関わらず、それを知らず、使いこなせないのです。

結果として「カネのかかる方法しか提案してこない」と言われてしまうのです。

ユーザー企業としては、同じことが実現できるのであれば、できる限り手間もコストも掛からない方法が良いはずです。そういう気持ちをもって日々ITツールを駆使していれば、ユーザー企業よりも先駆的なユーザー企業になれるはずです。

お客様の立場に立つ

こういう話をITベンダーにすると、「IFTTTやZapierを提案しても、カネにならない」と言われます。それが1点目の商品ラインナップの設計ミスなのです。

最初からカネのかかる方法を提案するのではなく、手軽な方法を教えていれば、ユーザー企業からの信頼を獲得することができます。「ITのことなら、あの会社に相談しよう」となります。その上で、手軽にはできないような要件が発生したときに、しっかりとビジネスをすれば良いのです。

先駆的なユーザー企業になることのメリットはお客様の気持ちが分かることです。無駄なコストや時間をかけたくないというのは、お客様の気持ちとしては当然のことなのですが、売り手になると見逃してしまいやすいのではないでしょうか。

また、ビジネスは「売り手」と「買い手」の関係であるよりも、「先輩(経験者)」と「後輩(未経験者)」の関係であった方が、上手くいくように感じています。売り手として提案するのではなく、「うちはこうやって成果が出ましたよ」と提案した方が、受け入れられやすいと思います。

こうしてお客様の立場に立つという基本を徹底すると、ITベンダーとユーザー企業の間にある「浮いたところ」を上手く埋めていくことができるようになると考えています。

まとめ
  • 「カネにならない作業には関わらない」という姿勢がITベンダーの失敗
  • 商品ラインナップを設計して、お客様との関係性を構築しやすくする
  • 自らが先をゆくユーザー企業となって、顧客の立場で提案する

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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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