IT・システム全般

中小企業支援機関に求められるIT相談の姿とは?

中小企業がITを導入・活用するときに、誰に相談できるでしょうか?

本来であれば中小企業を支援する機関、例えばよろず相談窓口、商工会議所・商工会などが機能して欲しいところですが、私の見る限り、まだまだ機能していません。では具体的にどうすれば良いのか?を考えてみました。

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中小企業のIT活用状況と抱えている問題

中小企業のIT活用状況

まず最初に中小企業のIT活用状況を見てみましょう。

さすがにワードやエクセルなどの一般オフィスシステムや電子メールの活用は進んでいるのですが、それでも55%程度。スケジュール・業務情報共有やコミュニケーションのグループウェアに至っては12%程度しか活用されていません。

私の実感としても、グループウェアをちゃんと活用できている企業は、まだまだ少ないです。それにパソコンやOS(Windows)・オフィスのバージョンも古いものを良く見かけます。

ITが事業の基盤となっていないのが現実だと感じています。

IT導入活用できない3つの理由

平成30年中小企業白書によると中小企業がITを導入利用できない理由のトップ3は

  1. コストが負担できない
  2. 導入の効果がわからない、評価できない
  3. 従業員がITを使いこなせない

となります。

中小企業がITを導入・活用できない3つの理由とその対策中小企業がITを使いこなせない理由トップ3は以下の通りです。1.コストが負担できない 2.導入の効果が分からない、評価できない 3.従業員がITを使いこなせない。本記事では、これらの悩みを解決してITを使いこなす方法について解説します。なかなかITを活用できないと悩んでいる経営者は必見です。...

これら3つの理由を潰すような支援が求められるということです。これらの理由の根本はIT人材がいないことにありますので、「IT人材の育成」は支援機関に喫緊に求められるメニューだと考えています。

IT支援の2つの方向性

支援機関に求められるIT支援の方向性は2つあります。

1つは、既に世の中にあるツールを活用すること。もう1つは、自社独自の事業を立ち上げるときなどのシステム開発支援です。簡単に言えば「活用支援」と「開発支援」です。まず、これらを混同してはならないと考えています。

「活用」の相談に乗れるようにするには?

まず、多くの中小企業に必要なのは前者です。前述のグラフからも分かる通り、既に便利なツールが山ほど存在しているにも関わらず、それらを活用できていない企業が多いからです。こういうところに「つくる(開発)」が得意な専門家を当ててしまい、無駄な時間とお金を使ってしまっているケースを見ることが多いです。

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クラウドやスマートフォン・タブレットを活用し、今ある業務をまずは徹底的に効率化し、生産性を上げる。そのような支援が支援機関には求められます。

ではなぜ、このような支援が現状できていないか?と言えば、支援機関自体がITを活用できていないからです。はっきり申し上げると、彼らのIT活用レベルは、20年は遅れています。

例えば、未だに「セミナーの申込はFAXだけ」などという支援機関を見たりします。ITに不慣れな事業者を支援するために活用するならいざ知らず、自分たちが積極的に足を引っ張ってどうするのでしょう?

自分たちがIT活用の経験を積んでいないのに、他者の相談に乗れるわけがありません。支援機関の業務は、そんなに複雑なわけではありません。世の中にあるツールを有効に組み合わせれば、かなりの手間を省くことができるはずです。

「つくる」相談に乗れるようにするには?

一方、システム開発が必要になるケースもあります。新たな事業・サービスを立ち上げるときなど、世の中にないものを生み出すときには、システム開発が必要です。

「活用」の相談と異なり、「つくる」相談に乗るには専門家が必要になります。

  • どのような事業を行うのか?という経営面からの深い理解
  • 開発を依頼するITベンダーの選定、調達
  • どのようなアーキテクチャーで開発するのか?
  • プロジェクトマネジメント、アジャイル開発
  • 新事業・サービスのマーケティング

例えば、これらの理解や支援が必要になりますので、より高い専門性が要るからです。支援機関の職員だけではどうにもならない領域ですから、ITに知見のある専門家を活用しましょう。

ただし、繰り返しになりますが、何でもつくれば良いというものではありません。既に使えるツールがあるなら、それを活用する提案が求められます。

IT相談メニューを最上位に、かつ詳細メニューをつくるべき

現状、支援機関におけるIT支援は、明確にメニュー化されていないケースが多いです。この記事を書くにあたり、いくつかの支援機関のメニューを見ましたが、そもそもIT相談に関するメニューが見つからないのです。

資金・融資などはトップメニューにあるのですが、お金と同様に大切なITがトップメニューにないのは、支援機関のITに関する弱さが露呈していると言わざるを得ません。

例えば、公益財団法人 神奈川県産業振興センターのページを見ますと、最上位のメニューは以下の8つです。

  • 起業・創業したい
  • 資金調達したい
  • 新分野進出したい
  • 取引先を増やしたい
  • 経営の見直しをしたい
  • 海外に・海外から進出したい
  • 事業承継
  • よくあるご相談

まずここにITがないことが問題です。さらにITに関係ありそうなメニューを選んでもITに関するメニューが出てこない。。ちなみに、他の支援機関も同じでした。

「活用する」「つくる」そして「IT人材の育成」などと、詳細メニューをつくるべきでしょう。中小企業に関わらず、IT投資の一番重要なところは人材投資です。

IT投資で最も注力すべきは、人材への教育中小企業におけるIT導入・利用における問題は、スキルのある人材不足によるところがほとんどです。しかし、ますますIT人材の不足が深刻化しつつあり、採用することは困難です。このような状況を受けて、最も注力すべきIT投資は「人材への教育」です。ITで経営を変革したい経営者は、この点を認識しておくべきです。...

支援機関には、このようなメニューを無理にでもつくり、専門家と協力しながら、経験を積んでいくことが求められています。なお、今回は中小企業支援機関を主な対象にしましたが、金融機関にも同様のことが求められていると考えています。

ITベンダーは自社で取り扱っていないツールの支援などはできません。ビジネスにならないからです。そういう部分を救っていくのが、支援機関の役割だと考えています。(と同時に、中小企業診断士にも求められていることです)

まとめ
  • 中小企業支援機関は、IT支援がまだまだ機能していない
  • 「活用する」「開発する」「人材育成する」の3つの支援メニューをつくるべき
  • 経験を積むためにも自分たちのIT化を推し進めるべき

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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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