IT・システム全般

IT業界におけるイノベーター理論

前回はイノベーター理論をご紹介しました。商品・サービスを企画するときに、理想とする顧客像を描きますが、そこにイノベーター理論を組み込むと効果的です。伝えるべきメッセージが明確になるからです。

顧客像を描くときに必要なイノベーター理論商品・サービスの企画をするときに必要なのが顧客像です。この顧客像において、イノベーター理論の層を組み込んでおかないと、方向性が全くズレてしまうのをご存知でしょうか?この記事ではイノベーター理論(イノベーションのベルカーブ)の基本をご紹介します。...

今回はIT系ツールを例にイノベーター理論を復習します。

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顧客の層ごとに、伝えるべきメッセージは異なる

どの層に自社の商品・サービスをアピールするのかによって、届けるべきメッセージは異なります

イノベーターやアーリーアダプターに刺さるメッセージ

イノベーターやアーリーアダプターにアピールするのであれば、その「先進性」を伝えるべきです。

かつてはWindows、最近だとiPhoneが次々と新しいバージョンをリリースし続けるのは、「新商品」を望み続けるイノベーターにアプローチするためです。この顧客層は、細かな商品スペックよりも、とにかく新しいことに価値を見出します(特にイノベーターは)。

「新技術」であることを伝えることも有効です。今、スマートスピーカーを購入している人たちは「人工知能」を体験したいと考えている層が中心です。声や音が、新たなユーザーインターフェースとして、どれだけ可能性を秘めているのか、体験しています。

この層は、オピニオンリーダーになり流行をつくるのも特徴です。「開封の儀」などでレビュー記事を書くなど。新商品・サービスで彼らの需要を喚起しつつ、オピニオンリーダーとなってもらうことで、その後の層へアプローチできることになります。

余談ですが、Windowsは「10」を最後として、見た目のバージョンを変えない戦略に変えました。(実際には結構、大幅に機能などが変わっているのですが)
パソコンのOSという成熟した市場において、イノベーターやアーリーアダプターを牽引するやり方に限界を感じたのかもしれません。

Appleが今でも新バージョンをリリースし続けるのは、ハードウェアと一体であるからこそなのか、それともスマホという市場がパソコン市場に比べて、まだまだ若いからなのか?その辺りの実態は、向こう数年くらいで見えてくるのではと考えています。

マジョリティ層へは実績や顧客の声を伝える

マジョリティ層へアプローチするのに「先進性」をアピールするのは、むしろ逆効果です。
失敗を避けたい彼らには、「実績」「顧客(利用者)の声」が重要です。

例えば企業の情報システム部門はトラブルを回避したいもの。そのため、新しいバージョンに飛びついて導入したりはしません。検証して、問題なく使えることを確認するためには、他社の実績や声を重視しています。

また、きちんと商品の特徴を伝えて、コストパフォーマンスの良さを伝えなければなりません。支払う金額よりも、価値を享受したいと考えているからです。

あくまでも一例ですが、どの層に買ってもらいたいのかによって、伝えるべきメッセージは全く異なります。

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スモールビジネスは全部を狙わなくて良い

市場を大きくしたい大企業は、全ての層にアプローチしていきます。

まずは「イノベーター」「アーリーアダプター」に「先進性」をアピールして、小さな市場をつくる。これらの層が盛り上がっている「実績」を活かして、「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」を攻めていきます。

最近ですと、スマートスピーカーが正にこの状態になっているのではないでしょうか。今は前者16%を攻めて終えて、マジョリティ層を攻めているように見えます。このように日本市場全体を拡大させようとしています。

ただ、スモールビジネスやひとりビジネスにおいては、この5つの層全てを狙っていく必要はありません。一部の層からしっかりと支持を得れば、十分ビジネスはまわるからです。また、限られたリソースですから、市場の一部を狙わざるを得ません。

  • 新商品・新技術を生み出して、「イノベーター」「アーリーアダプター」だけを狙う
  • 衰退していく市場において、「レイトマジョリティ」「ラガード」だけを狙う
  • 市場の中でも独自のポジションを築き、「マジョリティ」の一部を狙う

一般的には、このような絞り込みが必要になるのではないでしょうか。

「ラガード」を狙う具体例をIT業界で挙げるなら、メインフレームでの開発を続ける企業があります。

確実にCOBOLやPL/Iエンジニアの数が減っている一方、そのニーズは確実に存在します。スモールビジネスであれば、その小さな市場で圧倒的な地位を築けるのです。

今からメインフレームでの開発・運用をする企業を立ち上げるのは困難です。ただ、中小企業においても情報資産が増え始めているのが現状ですから、保守的な考えが強い企業を理想の顧客像とするビジネスは、これからも需要は増えていくものと思います。

まとめ
  • 自社にとって狙うべき顧客層はどこなのか?
  • イノベーター理論を活用して、顧客の商品・サービスに対する姿勢を決める
  • その顧客層に向けて発するメッセージにはブレがなくなり、効果が出やすくなる

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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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