新規事業を立ち上げる前に、目の前の顧客に対して、新商品・サービスを提案することをお勧めしています。
この記事では、
- 目の前の顧客のニーズを把握し、刺さる提案をするための力
- 目の前の顧客のニーズを一般化し、競争力のある商品・サービス企画をするための力
を養うための方法を、事例を交えてお伝えします。
<スポンサードリンク>
ゼロから新商品・サービスを企画しない
今年は、「新商品・サービスをつくりたい」という依頼を最もいただいた年でした。
全て受託開発やSES(ITエンジニアの派遣)を主とする企業です。
元々、下請け・孫請けに限界を感じていた矢先に、新型コロナが直撃。
「直接、顧客と接点を持っていないとヤバイ」
「自社商品を持ちたい」
という危機感にも近い想いが、各企業で溢れ出たのでしょう。
30名程度までのスモールビジネスであれば、最初から社長に対するコンサルティングで支援しますが、100名を超えるくらいの企業になると、まずは研修を通じて、基本的な考え方を身に着けてもらっています。
その際、ゼロから企画するよりも「目の前の顧客の困りごとを発見しましょう」とお伝えしています。
こちらの記事で「右上を攻めるべきだ」と提案しているところですね。
顧客のニーズを把握して、刺さる提案をつくるには?
右上を攻めるには、大きく分けて2つの段階があります。
- 目の前の顧客のニーズを把握して、刺さる提案をするための段階
- その提案を一般化して、その他の顧客にも刺さる商品を企画する段階
図にするとこんな感じです。
目の前のお客様を観察していると、自社が提供している商品・サービスだけでは満たされないニーズがあるはずです。
私がITエンジニアとして現場で働いていたときの事例をご紹介します。
10年以上前のこととは言え、さすがに書けないこともあるので、一部ぼんやりと。
私が属する会社は、ITインフラ(ネットワーク・サーバー・ストレージなど)を提供する会社でした。
保守サービスは提供していましたが、障害が発生するまでは、保守部隊は動けません。
お客様は日々、ITインフラを監視し、何かあったら問題を切り分けます。
- 問題はキャリアが提供する回線にあるのか?
- それとも機器の問題か?
- あるいは誤検知か?
大きなシステムほど関係する要素も複雑で、問題の切り分けも難易度が増します。
いかに専門チームを持っている大企業とは言え、そう簡単なことではありません。
問題の切り分けに難儀するうちに、システムの利用者(エンドユーザー)からクレームが発生し、その対応に追われてしまうこともしばしば。
企業の情報システム部門が最も注力すべきは
- 障害が発生したことによる影響範囲は?
(システム目線ではなく、利用者にとって使える・使えないサービスは何か?) - それがいつ復旧する見込みなのか?
をエンドユーザーに適切に伝えること。
問題の切り分けは、よりプロフェッショナルである私たちが提供した方が良いだろう、と考えました。
そんな話をお客様の課長としていたところ、お客様自身のシステム運用をITILなどのリファレンスに則って、大きく変えるべきだとの意見をお持ちでした。
(当時、日本でITILを知っている人は、大企業でもごく一部でした)
よりユーザーフレンドリーな部門に変わるべきで、プロに任せる部分は任せたい、と。
私は、この課長と自分の考えをまとめて、システム運用に長けた会社に相談しました。
大きな話になりそうなので、自社の役員クラスも巻き込みました。
新サービスを正しく理解し、伝えられるように、ITILを学び資格を取りました。
約1年後、全体構想の一部ではありましたが、新サービスを提供開始しました。
自社にとっては、保守以外に定期的な売上が見込める、新しいサービスでした。
ニーズを一般化し、競争力のある商品・サービスを企画するには?
ここまでは私が担当していた顧客のニーズを満たしただけです。
ただ、このニーズは他の大企業にも間違いなく当てはまる確信がありました。
少なくとも当時は、大企業のシステムは複雑に入り組んでいることが普通でした。
基幹システム(勘定系)、情報システム、増え続けるコミュニケーション系のシステム、新たに登場してきたSaaS。
これらを下支えするITインフラが止まると、そのインパクトは尋常ではありません。
数千人、数万人の業務が一斉に止まるのですから。
情報システム部門を単なるヘルプデスクから「サービスデスク」へと昇華させる。
システムを提供するだけの部門から、ビジネスを支える部門に生まれ変わらせる、ということです。
- エンドユーザーのことを親身に考えている
- 事業を支えるITの立場を理解している
- ITILなどの新しい考え方を取り入れる姿勢がある
このような特徴のある顧客に提案すれば、新サービスは他社にも売れるだろう・・と予測しました。
自分の顧客への導入が終わると、私はそのサービスを立ち上げた背景などをまとめて、社内で発表会・勉強会を繰り返しました。
ただ残念なことに、これらの条件を満たす顧客は、そう多くはありませんでした。
(それ以前に、当時、モノ売りに徹していた自社の営業達が、この価値に気づいてくれませんでした。私の説明が拙かったのは、言うまでもありません・・)
私の知る限り、この新サービスは新たに数社にしか売れませんでした。
それでも現場で働く1人のITエンジニアが、会社の新サービスをつくったのです。
※私がすごかったのではなく、知見を持つパートナー企業と巡り会えたこと。そして本質的な問いを持っていた顧客を担当していた私の運が良かっただけです。
今回は理論ではなく事例でお伝えしました。
- 目の前のお客様が困っていることを発見する
- それを解決するための方法を導き出す
- 同じようなことに困っている人・組織がいないか?汎用化する
- 汎用化したものを新商品・サービスの企画とする
という流れで進んだのがお分かり頂けたのではないでしょうか。
1~2が、目の前のお客様への提案。
3~4が、他の顧客にも売れるようにする企画です。
提案力を高めるためには、自社が売りたいモノではなく、顧客が真に欲しているモノを探し出すこと。
そのためには、お客様と何でも会話できる信頼関係を構築することが一番です。
企画力を高めるには、ニーズを一般化し、誰にでも伝わる形にすること。
自分が良く知る顧客に提案するわけではないので、「あ、それはウチのことだ!」と思っていただける企画にしない限り、相手に刺さりません。
一朝一夕でできることではありません。
私もまだまだ学んでいる途中です。
だからこそ、1日でも早く取り組んだ企業が、提案力・企画力で優位になっていくのだと考えています。
- 目の前の顧客が真に欲しているモノを探し出す
- そのためには顧客との信頼関係を築くのが一番
- 企画力を高めるには、ニーズを一般化し、誰にでも伝わる形にすること
[the_ad id=”2141″]
【編集後記】
昨日は、よこはま月例マラソン(10km)に参加。
筋肉的な疲労は、ほぼありません。(お尻と裏腿が軽く筋肉痛かな・・)
年末年始はしっかりカラダづくりをする予定です。
メルマガ『経営は100種競技!』を毎日配信しています。
マーケティングやITを身につけたい。
ビジネスを楽しみたい。
変化・成長したいというビジネスパーソンにお読みいただいています。