今、「なぜ日本のIT活用が進まないのか?」を考えています。
こういう問題を分析するときに、私が使っているコンサルティング・メソッドをご紹介します。
あらゆる仕事を計画するときに使える方法論です。
そして、世の中で仕事が上手く進まないときの課題も、この方法論に関連付けると理解が進みます。
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Contents
コンサルティング・メソッドの全体像
私がコンサルティングをするときに、常に頭の中に描いている絵があります。
コンサルティングに限らず、あらゆる仕事は、この図で表現できます。
なぜなら、全ての仕事には目的があり、それはギャップを埋めることだからです。
現状と目指す姿の差がギャップ(=課題)です。
現在、既に目指す姿を達成しているのであれば、仕事をする必要はないはず。
仕事をするということは、現状と目指す姿の間にギャップがあるからです。
例えば、私は初めて管理職になったとき、「業務の標準化」を進めました。
課題をこのように認識していたからです。
現状
- 仕事が属人化している
- そのため、お互い仕事のフォローができない
- 成長が個々人に委ねられている
目指す姿
- 個々人の良いところや高い技術力は維持しつつ
- 身につけるべきスキルや、評価基準を明確にする(=標準化を進める)ことで、
- 個々人が何を身につければ良いのか?カリキュラムを組みやすくし
- チームで仕事を進められるようにする
課題
- 業務を進めていく上での、標準的なプロセスやチェックリストを整備
- 階層別のスキル標準を整備
- 評価基準を明確にして、本部内や人事部と調整
- 仕事を個人単位でのアサインから、複数人へのアサインに変えていく
というように取り組みました。
このように、全ての仕事はこの図の「現状」「あるべき姿」「課題」を明確にすることから始まります。
メールを1通送るだけなどの小さな仕事においても、厳密に考えれば、この3つが成り立っています。
ちなみに、この図は非常にシンプルで分かりやすいですが、簡単ではありません。
随所で問題が起こるからです。
現状を把握する上での問題点
まず現状把握をする上で、問題が発生することがあります。
問題があるのに問題として認識されない
その最たる例は、「問題を問題として認識していない」ことです。
例えば算数ができるようになった子どもがいるとします。
まだ中学校以降の数学の存在を知りません。
すると、もう算数が十分にできるので、何の問題もないように感じてしまいます。
それと同じことが、仕事でも起こりえるのです。
過去に何とかやってこれた会社ほど、他業界・他社の動きを見ていないため、浦島太郎状態になりがち。
「今のままで十分でしょ」と。
問題を問題として認識していなければ、「変えよう」とも思いません。
中学校以降、まだまだ数学の道が長いことを知る。
しかも、高等数学が実社会の色んなところで役立っていることを認識する。
試験や受験にも数学が必要なことを知る。
その時点で「あ、このままだとヤバイわ」と気づくのです。
現状を誰も理解していない
もう1つは、現状を誰も分かっていないことです。
例えば、業務プロセスが可視化されていないので、全員が「なんとなく」仕事をしています。
まずお互いが何をやっているかを共有して、可視化する必要があります。
私がIT活用や業務プロセス改善の仕事をさせて頂くときは、このヒアリングから入ることが多いです。
目指す姿を設定する上での問題点
次に目指す姿(=目標)を設定する上での問題点です。
目指す姿の時間を設定する
中小企業の社長と会話をしていると、良く起きる問題が2パターンあります。
- 現実からあまりにも乖離した目標になる
- 現実に近すぎて目標が小さくなり過ぎる
1つは現場・現実からかけ離れて、理想を追いかけ続けるタイプ。
理念やビジョンを持っている方に多いタイプです。
1980年代から iPhone(2007年に発表)を追いかけ続けてきたスティーブ・ジョブズなどは、その典型的です。
もう1つは逆に、現実ばかり見過ぎてしまい、思考を遠くに飛ばせないタイプです。
現場の小さな改善には強いのですが、理念やビジョンなどの方向性を示すのが苦手。
エンジニアなどは、この手のタイプが多いように感じます。
私が社長と会話するときには、目指す姿の「時間を設定」するようにしています。
前者のタイプは、5年後・10年後を描きがちなので、1年後くらいの現実的な目標を。
後者のタイプは、今日・明日の改善に目が向きがちなので、3年後・5年後くらいに視点を飛ばします。
このように時間を設定することによって、「〇〇までに、こういう状態になっていたい」と計画性が出てきます。
目指す姿があいまいになる
なお、目指す姿(=目標)は、現状の把握に比べると、抽象的になりがちです。
未来のことですから、厳密に描けないのは、ある程度仕方ありません。
ただ、この後、課題を設定して、実際の仕事の計画をする上で、困らない程度には具体化する必要があります。
課題を設定する上での問題点
現状と目指す姿のギャップが課題です。
したがって、現状と目指す姿が設定できていなければ、課題を設定することはできません。
いきなり課題解決(手段)から入ってしまう
しかし世の中には、いきなり手段から入るケースが非常に多く、混乱を招いています。
「うちも、AI(人工知能)や IoT(モノのインターネット)で何かやらねば」
「これで御社もDX(デジタル・トランスフォーメーション)できるようになります」
自ら手段から入ってしまうこともあれば、外部からの提案がいきなり手段ということもあります。
このような動きは、目指す姿が共有されていないため、ほぼ確実に失敗してしまいます。
目的がない状態で、手段から入っても上手くいくはずがないのです。
変化することへの抵抗
続いて、現状・目標・課題は設定できたものの、活動を開始するときに出てくる「抵抗感」が問題になることがあります。
組織の場合は、抵抗勢力としてあからさまに出てくることも。
「現状のままでいたい」というのは人間が生物として持っている本能です。
その本能に逆らって変化しようとするのですから、経営者のリーダーシップが欠かせません。
課題認識の立場による相違
このとき、経営者と従業員で課題に対する認識が異なることが多いです。
経営者が「ITが使えないこと、ITリテラシーが低いことが課題」と認識したとします。
しかし、従業員の立場だと「IT使えるようになって給料上がるの?」と。
組織には様々な考えの人が居ます。
そんな組織を変えていくためには、それぞれの人が、最低限納得をして課題に取り組んでいく必要があります。
単に経営者の考えを押し付けるだけでなく、従業員にとってのメリットを示しつつ、対話を重ねていくことが大切なのでしょう。
課題を自分事として捉えられたときに、初めて人は動きますので。
- 仕事を進める上では、「現状」「目指す姿」「課題」の設定が重要
- それぞれ設定する上で、起こりがちな問題がある
- 経営者が押し付けるのではなく、全員が自分事として捉える必要がある
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【編集後記】
なぜIT活用が進まないのか?を考える前に、フレームワークの解説だけで1記事になってしまいました。。
本題は追って解説します。
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