新たなITツール・システムを企画する際、最初にコンセプトをつくります。ただ、そのコンセプトの時点で経営者と担当者の間に乖離が起きやすいので、注意が必要です。この記事では中小企業におけるシステム化企画の注意点をお伝えします。
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経営者(意思決定者)に伝わらないコンセプトでは意味がない
中小企業では、ITツール・システム導入にゴーを出すのは、ほぼ経営者です。ですから意思決定者である経営者が理解できないコンセプトでは意味がありません。
しかし、中小企業のシステム担当者は非常に忙しい現実があります。専門の情報システム部門など、無い会社がほとんどです。そもそもシステムの知識がないまま、総務の延長上の位置づけで兼任させられているケースも多いのです。
にも関わらず、パソコン・スマートフォン・プリンターなどの導入・運用から、販売・会計システムに関することまで、正に端から端まで対応せねばなりません。
たまに自ら外に出て、システム関連の知識を身につけるような、積極的な方にお会いすることがあります。しかし、そのような方々であっても、ひとり、もしくは少人数で世の中の情報を網羅するのは現実的ではなく、苦労されているようです。
そのような状況なので、コンセプトがついつい現場寄り(システム寄り)になってしまうのです。困っている現場のことが常に頭にあるので仕方ないのです。また、経営者ではないので、経営視点でコンセプトをつくろうというのも無理があるのですが・・
でも経営者に期待通りの意思決定をしてもらうためには、経営者に理解してもらえるような工夫をすることが大切です。
課題や目的は3つの視点で考える
経営者に理解してもらえるような具体的な工夫とは、3つの視点を持つことです。システムを導入・活用しようとする背景には、何らかの課題や目的があるはずです。その課題や目的を「経営」「業務」「システム」の3つの視点から整理してみましょう。
「経営」は良く「ヒト・モノ・カネ」と言われます。システムを活用することによって、これらがどのように変化するのか?を考えてみるのです。お金に関してはBS(貸借対照表)・PL(損益計算書)の変化が表現できると良いでしょう。QCD(品質・コスト・納期)がどのように変わるのか?が効くこともあります。
「業務」については、業務プロセスの連載をご覧下さい。(早く続きの記事を書かねば・・汗)
端的に言えば、以下の点を押さえればOKです。
- いつ、誰が、何をやっているか?
- インプットとアウトプット(業務の目的)は何か?
システムの導入・活用によって、これらがどう変化するのか?を整理しましょう。
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クラウド型勤怠管理システムの例
例えば、自社サーバーにインストールされている(オンプレミス型)勤怠管理システムが老朽化しているため、クラウド型の勤怠システムへの入れ替えを検討しているとします。
経営視点
勤怠管理自体は、その事業の付加価値を高めることではありません。いわゆる守りのIT投資です。
ですから、できる限り効率化したい(時間短縮・コスト削減)のが経営者の意見でしょう。
- 勤怠入力の頻度が高くなることから、従来よりもリアルタイムで労働時間が確認できる(労務の最適化や、残業抑制)
- 資産(サーバーとソフトウェア)がなくなり、システム費用を経費化できる(BSの変化)
- 勤怠管理から給与計算までが迅速化できる(納期Dの変化)
業務視点
勤怠システムに関わる人を列挙しながら、その人たちの業務プロセスが、どのように変化するのかを挙げてみましょう。
- 従業員が外出先にスマホからでも勤怠入力できるようになる
- それによって勤怠入力のためにオフィスに戻るなど、無駄な残業を減らすことができる
- GPSによる位置情報との連携や、LINEなどチャットツールとの連携もできるようになる
- 管理職は外出先からでも残業や月次締めの承認処理が行える
- 給与計算システムと自動連係することで、給与担当者の業務を減らすことができる
システム視点
オンプレミスからクラウド型になることで、以下のような変化が発生します。
- サーバーが不要になる(資産管理が不要になる)
- 無停電電源装置が不要になる(同上)
- 認証方式やバックアップの取得方法など、運用が変わる
このように3つの視点で変化することを挙げながら、最も大切な変化は何なのか?をまとめてコンセプトにします。
- システム企画は、経営者に伝わらなければ意味がない
- 経営・業務・システムの3つの視点で変化をまとめる
- 最も重要な変化を中心に企画(コンセプト)をまとめる
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