日々の気づき

場当たり対応(対処療法)にとらわれるのは何故か?

様々な経営の現場に携わっていると、「根本的な原因を解消するための取組み」よりも、「場当たりの対応」が優先されがちだと感じています。
なぜ、そんなことになってしまうのでしょうか?

熱中症を材料に考えてみましょう。

正しい熱中症対策は?

「水分を多めにとりましょう」
「エアコンをつけて過ごしましょう」
「塩分をとりましょう」

この時期になると、こんな熱中症対策が案内されます。
私はこういう案内(特に大手メディア)を聞くたびに、少しモヤっとするのです。
ここで挙げられていることは、確かに個人レベルで見たときには正しい対策なのでしょう。

しかし、社会全体で見たときには根本原因を解消する取り組みにはならないのではないでしょうか?

熱中症は名前の通り、暑い時期(高温・多湿)に発生しやすいです。
では、実際にどれだけ温度が上がっているか?
よく「地球温暖化」と騒がれているので、何℃も上がっているような印象を受けますが・・

実は地球全体で見ると、平均気温はこの100年間の間に約1℃しか上がっていません。
にも関わらず、熱中症がこんなに増えている理由は何でしょうか?

気温上昇の差

同じ東京都でも、千代田区と八丈町の100年の温度上昇には差があります。

  • 東京都(千代田区):2.4℃
  • 東京都(八丈町):0.7℃

都市開発がされ過ぎているコンクリートジャングルが暑くなっているだけ、と言えるのかもしれません。いわゆるヒートアイランド現象です。
気象庁のグラフを見ても、3都市(東京・名古屋・大阪)の方が、他の地域に比べて温度上昇幅が大きいです。

気象庁のページより抜粋)

だとするなら、個々人に熱中症対策を促すだけでなく、ヒートアイランド現象を解消することの方が、よほど大切なのではないでしょうか?

高齢化と熱中症の関係

また、総務省が発表しているデータを見ると、熱中症にかかるのは半数以上、高齢者です。

総務省データより引用)

このデータに都道府県別の救急搬送人数が含まれていました。
人口10万人当たりの救急搬送人数を調べたところ、高齢化率の高い都道府県の数字が大きく出ています。(高齢化率との相関係数は0.56です。これは中程度の正の相関と言えます)

また、発生場所は住居が40%前後を占めています。

総務省データより引用)

生データが無いので詳細は不明ですが、高齢者が自宅で熱中症になるケースが最も多いなら、そこに手を打たない限り、解決には向かいません。

ちなみに、このデータには認知症を患っているかどうかは書かれていません。
もしそうだとするなら、マスコミを総動員して「熱中症に気をつけろ」とアナウンスしたところで効果がないことが予想されます。

ここまで熱中症の素人なりに課題分析を行いました。
(話を単純化するために、要素を気温・高齢化だけに絞りました。真面目に分析するなら、もっと他の要素も分析すべきです)

このような根本原因の分析をせず、単に個人の努力に委ねる(ように聞こえてしまう)アナウンス(=対処療法)を続けても、問題は解消しないと考えます。

なぜ、場当たり対応が優先されてしまうのか?

ここまで、熱中症を例として、根本原因の分析・解決がなされていないのでは?と疑問を呈してみました。
一般の企業活動においても、「その場しのぎ」と思われるような対応を、よく見かけます。

  • 故障した商品を交換するだけで、なぜ故障したのか?を追求しない
  • クレームに対して、丁寧にお詫びするだけで、根本的な改善をしない
  • チェック(確認)を増やすだけで、チェック自体が不要になる仕組みを導入しない

なぜ、根本原因を解決せず、場当たりな対応だけで済まそうとするのでしょうか?
それは企業文化・仕組みに問題があるからです。

典型的なのは役所です。
2~3年くらいで異動させられてしまうので、3年以上かかるような活動をやる気になれません。
その他にも、以下のような理由が挙げられます。

  1. 短期目標(1年以下)しか設定されてない
  2. 長期の取組みが評価される仕組みがない
  3. 根本的な原因を解消するための知識・スキルが不足している

1と2は、表現を変えただけで同じことを言っています。

3は、「知識・スキル」と書きましたが、それ以前に「認識がない」ことも多いです。

熱中症対策と言えば、水を飲んで涼しいところで過ごすことですよね!というように。
そもそも、なぜ熱中症にかかってしまうのか?その根本原因を追究し、解決しようとする認識がなければ、そこに意識が向かうことはありません。
意識が向かった上で、原因を追究・解決するための知識・スキルが必要となります。

企業活動は 1年単位で区切られることが多いですが、本当に価値のある問題解決が 1年で終わるとは限りません。
長期間の取り組みが必要な事項こそ、しっかり取り組んだ企業は、他者との違いを生み出せるでしょう。

なお、緊急性が高いときには、対処療法が必要なこともあります。
対処療法が悪いのではなく、どちらも必要です。

まとめ
  • 問題解決には、対処療法と根本的な解決がある
  • 企業は対処療法ばかり行い、根本的な解決を忘れがち
  • 目標設定や評価制度などの仕組みや、認識・知識に問題があるため

【編集後記】
久しぶりの更新になってしまいました。。
もう少し頑張らないと。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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