戦略の重要なポイントは「絞り込むこと」です。
この記事では、新型コロナウイルス対策に対して、私が疑問に感じることを挙げてみます。
(なお、私は医療・政治については素人です)
その疑問を通じて、データに基づいた組織運営をするためのヒントになればと思います。
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限られたリソースをどこに投入するか?
戦略の基本は「絞り込む」ことです。
リソースは限られている
大企業でさえリソース(人材や時間・お金)は限られています。
中小企業に関しては、言うまでもないでしょう。
市場(対象とする顧客・地域)や商品を絞り込むことによって、貴重なリソースの投下先を集中することができます。
今、新型コロナウイルス対策を見ていると、この考え方ができていないように感じてなりません。
限られた医療リソース、特にワクチンの投下先を絞り込んでいないからです。
少なくともワクチンを接種することで、感染率は10分の1以下に抑えられるという報告も出ています(例:本日の日本経済新聞1面)。
このような効果が得られる貴重なリソース(ワクチン)を、どこに集中させるか?それが戦略です。
現在、47都道府県、人口に対して比例配賦するような展開です。
これは「公平」なやり方なのかもしれません。いかにも役人らしい。
しかし、戦略的に考えれば、申し訳ないですが「愚策」でしょう。
リソースをどこに集中させるか?
貴重なリソースをどこに集中させるか?は、期待される効果が高いところです。
このケースでの「期待」とは、重篤者数・新規感染者数を減らせること。
ここ最近、首都圏を中心に感染者数・重篤者数が増えています。
人口が多く、人の流れが活発な地域ほど、リスクが高まるので当然の結果です。
特に海外からの流入が多い地域はデルタ株などのリスクが高くなるのではないでしょうか。
つまりワクチン接種は、これらの地域から優先させるべきではないでしょうか?
私が政府・行政の立場だったら
- 重篤者が多い地域(=医療リソースが逼迫しがち)
- 新規感染者が多い地域(=同上)
- 人口・人の移動が多い地域
を中心にワクチンを集中投下します。
具体的には【緊急事態宣言・まん延防止の地域の40~50代をワクチン接種の最優先にする】でしょう。
それが最も期待効果が高いからです。
逆に言えば、新規感染者も重篤者も少ない地方は、ワクチンは後回し。
医療リソースに余裕があるうちは、新規感染が出てしまうのは致し方ない。
それよりも首都圏を中心に感染拡大を防ぐことに(ワクチン投下という意味では)全力を尽くすのです。
役人よ、「公平」などという夢を捨てろ!
「不公平だ!」などという声が上がるかもしれません。
しかし、そもそも世の中に公平などあり得ないのです。
極論、私たちが日本という国に生まれている時点でラッキーなのですから。
(もちろん、差別を許容するものではありません)
リソースは限られています。
それを優先順位をつけながら活用しなければならなりません。
だからこそ、意思決定する人は自分のためではなく、社会の全体最適を目指す「徳」が求められます。
戦略的な思考を持つ。
その前提として、社会全体を良くするという徳を持つ。
「不公平だ!」などという無意味なクレームをスルーする胆力を持つ。
そんなことを、私は政治家や役人に求めたいです。
リソースの有効活用
せっかくリソースを投下するのであれば、できる限り無駄にせず、有効な効果を得たいところ。
ワクチンを首都圏に配賦したところで、実際に接種されなければ、何の意味もありません。
ニューヨーク市長は、ワクチン接種1回当たり100ドルを給付すると発表しました。
ワクチンを避けていた人たちにインセンティブを与えた形ですね。
日本でこれをやったら「既に打った人たちに不公平だ!」という声が上がりそうですが・・
個人的には「うるさい、黙ってろ!」で良いと思います。
だいたい、高齢者から優先接種している時点で不公平なのですから。
歴史的に見ても、政策に対して世代・タイミングによって、差が出てきたのはワクチンに限った話ではありません。
きっと、1回100ドルを配ったとしても、それ以上の効果が得られると試算したのでしょう。
私だったら、ワクチン接種済みの人は、飲食店でお酒を飲めるようにするかもしれません。
飲食店にとってはプラスになりますし、あまり追加コストもかかりません。
何れにせよ、何らかのインセンティブを考えるのは、戦略を実行する上で、必要なことです。
施策実施後のモニタリング
さらに、戦略を実行した後、データをモニタリングする必要があります。
期待された効果が得られているかどうかを確認するためです。
このとき、どのデータをKPI(重要業績評価指標)にするでしょうか。
報道や政府、行政の発表を聞いていて違和感を感じることはないでしょうか?
なぜ未だに、一番最初に「新規感染者数」を発表するのでしょう?
私は論理が破綻している(戦略と矛盾している)と感じています。
ワクチンの投与が可能になったとき、専門家からは「高齢者だけでなく現役の若者にも並行して投与した方が新規感染者数は押さえられる」という提言がありました。
しかし、国や多くの自治体では高齢者の命と、それを守る医療リソースを確保することを最優先して、高齢者からの接種を選択しました。
これは良い・悪いではなく、何を優先するか?という戦略です。
その選択をしたということは、極論言えば、新規感染者数の増加については「捨てた」ということです。
それよりも、高齢者の命と医療リソースを優先した。
繰り返しですが、これは良い・悪いの問題ではなく戦略です。
その選択をした結果、今、見るべき数字は「重篤者数」と「医療リソースの逼迫具合」のはずです。
もちろん、関連パラメーターですから「新規感染者数」も継続ウォッチしますが、最優先する指標ではなくなっているはず。
もし新規感染者数が最優先指標なら高齢者と現役世代を並行してワクチン投与する選択をすべきだからです。
※もっと言えば、単純に新規感染者数を減らしたいなら、移動の少ない高齢者は後回しで、現役世代や若者を優先すべきでしょう。
にも関わらず、政府・行政、そして大手報道の発表を見る限り、いつまでも新規感染者数に固執しているように見受けられます。
自分達の選んだ戦略の意味を、数字的に理解していないのではないか?と思ってしまいます。
※もちろん、デルタ株の脅威など常に新しい動きがありますので、一度決めたKPIだけ見ていれば良いわけではありませんが。
このように戦略を決めた(=どこかにリソースを集中投下する)なら、それに伴ってKPIが決まります。
そのデータをモニタリングしながら、次の意思決定をしていきます。
逆に言えば、どの数字を重視するか?という基準で戦略を選ぶことになります。
戦略と数字(KPI)の関係について、新型コロナウイルス対策を例に考えてみました。
- 戦略とは、貴重なリソースをどこに集中させるかを選択すること
- 新型コロナウイルス対策の実情は、リソースが分散してしまっている
- 戦略を決めたら、それに関連する重要指標をモニタリングする
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【編集後記】
私の住む横浜市は、今後の計画が全く不明です。
神奈川県も感染者が増えていますが、正直、行政の動きは遅いと言わざるを得ません。
もっとデジタルに強い都市になって欲しいものです。
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