IT・システム全般

プログラミング・コードやアルゴリズムが法律になる社会

『サピエンス全史』などで知られるイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏と、最先端のコロナ対策で注目を集めた台湾のIT推進大臣、オードリー・タン氏。
この2人の対談が非常に示唆に富んだ内容ばかりだったので、気になったことを元に記事にしてみました。

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対談のYoutubeと、和訳記事はこちらです。

ユヴァル・ノア・ハラリ、オードリー・タン対談「民主主義、社会の未来」全和訳

個人情報をどこまで政府・行政に預けるかは戦略

1つ目。私は少しずつ政府・行政に個人情報を預け始めています。
10年前と比べたら、私たちは個人情報を国に渡しているのです。

私の場合で言えば、

  • 厚生労働省、新型コロナウイルス接触確認アプリ
  • 持続化給付金(Web)
  • 確定申告(Web)

などを通じて、

  • スマホの位置情報(Bluetooth)
  • 銀行口座

は少なくとも伝えています。
個人的には、このくらいの情報を知られても何とも思いません。
もっと情報を与えることで便利になるなら、もっとやって欲しいと思っています。

一方、例えば中国では学校で、授業中に子供の目の動きや表情を元に、どこまで集中して授業に参加しているか?などが把握されています。
銀行口座やクレジットカードのお金の動きを見られて、国民に得点が付与されています。
得点が高い人ほど信用が高く、お金を借りたりしやすいのです。

台湾の新型コロナウイルスの対策で、マスクの在庫状況などが一目瞭然になりました。
これは各店舗でのマスク在庫状況を政府・行政が把握しているということです。

ここまで突っ込まれると、人によっては「嫌だ」と思う人もいるでしょう。
私の意見では、少なくとも授業中に目や表情まで見られていたら落ち着きません。
子供の頃なんて、授業聴いているより、カワイイ女の子観てる方が、多かったのではないでしょうか(笑)

つまり、どこまで個人情報を活用するか?
マスクのような業界を通じたサプライチェーンのデータをどこまで政府・行政に預けるか?
これらは全て戦略になります。

国として、あるいは社会として、どこまで突っ込むべきなのか?
逆に個人情報をどこからしっかりと守るのか?
政治家を見ていると、そういうビジョンを持った人は、まだ少なそうです。
さらに民間企業の動きを見ていても、一部の企業以外は、データ活用は進んでいません。

戦略レベルで、国も企業も、そして私たち個々人が、それを考える時期に来ていると感じています。

プログラミング・コードは法律になる

中国や台湾のように、AI(人工知能)が社会に浸透してくると、コード・アルゴリズムが私たちの生活を規定することになります。
まるで憲法や法律・条例が私たちの生活を規定しているように。

国民IDによってマスクの購入数がカウントされ、販売店での在庫状況が把握されると、「あなたには2枚までしか販売できません」ということが行われます。
薬局の前に行列ができることもなくなりますし、転売する悪者が現れることもありません。

非常に便利な社会に感じますが、私たちの行動がコード・アルゴリズムによって規定されるということです。
つまり、コード・アルゴリズムが法律になるということです。

法律を犯すと罰せられます。
自転車は右側通行してはならないし、勝手に人のものを奪ってはならないし、人を殺してはいけない。
法律によって規定されているからです。

それと同じように、国民の総意で決まったコードやアルゴリズムの方針に、私たちの生活は規定される時代がやってきます。
便利になる一方で、制限が課されるのです。

過去の歴史を振り返っても、どんな独裁国家の時代であっても、ここまで個人情報を国に握られることはありませんでした。

国のシステムこそ、オープンソースでつくられるべきだ

そう考えると、私は国や地方自治体のシステムこそ、オープンソースでつくられるべきだと感じています。

国民の総意でコードやアルゴリズムが決まると言っても、そのコードを読める人は1%もいません。
だからこそ、国が特定企業に発注してヒソヒソとやるのではなく、堂々とオープンソースで行うべきです。

(だいたい、今までは利権が絡み過ぎです。
だから国や行政のシステムはダメダメなものが多い。
ハッキリ言って税金の無駄遣いです。
例のCOCOAとか、ひどすぎますよね)

政治で方針を決めたら、その方針にしたがってシステムをつくっていく。
その過程も、成果物であるコードもオープンソースで行う。
そのためには官僚は、もっとシステムのことを学ぶべきです。
東大法学部などばかりでなく、情報系出身者を官僚に誘わなければなりません。

今までのように大手システムインテグレーター(IT企業)がロビー活動や接待で受注するのではなく、実力のある少数精鋭のプログラマーが、コードを世の中に公にしながらシステムをつくり上げていく。

興味のある人は、そのコードにツッコミを入れたり、改善するなどの貢献を行います。
Linux(OS)やApache(Webサーバ)、MySQL(データベース)のように、興味ある人たちの貢献によって、コードがつくり上げられていく。

もちろん、国防・軍事システムなど、用途によってはオープンにしにくいものもあるでしょう。
しかし、その他の多くのシステムはできる限りオープンにするべきです。
私たちの生活を規定するコードをブラックボックスにしてはならないと思うのです。

まとめ
  • 個人情報をどこまで守るか?活用するか?は国の戦略そのもの
  • コードやアルゴリズムが私たちの生活を規定する「法律」になる
  • 国や行政のシステムはオープンソースにすべき、ブラックボックスにしてはならない

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【編集後記】
この記事、今朝のメルマガネタにしたのですが、長すぎて書き切れなかったので、ブログネタとして改めて整理してみました。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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