30人くらいまでの中小企業経営者と話をすると、「IT人材なんて関係ない」という方が、まだまだ多いようです。しかし、世界や大企業・中堅企業の動きに目を向けると「このままではマズいことになる」のが目に見えています。
「IT人材白書(2019年)」のデータを元に確認しましょう。
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一般企業のIT人材不足が、イノベーションの足かせ
「IT人材はIT企業から借りてくれば良い」という意見が、日本においては経営者の共通意見です。中小企業のみならず、大企業も。
しかし、それこそが日本の失われた20年・30年を物語っています。
この図表は、IT人材がどこにいるか?を示したものです。
日本のIT人材は72%がIT企業にいることが分かります。
逆に言うと、一般企業(ユーザー企業)にはIT人材が十分に行き渡っていないのです。
他国と比べると、その偏りが目立ちます。
アメリカやドイツなど、ITを活用して経済構造を変えようとしている国は、IT企業よりも一般企業の方にIT人材が多くいるのが分かります。
しかも割合だけでなく、日本はIT人材の絶対数が少ないです。
GDPが日本の3分の1程度のカナダと大して人数が変わりませんし、イギリスやドイツよりも人数が少ない。
いかに日本だけ一般企業にIT人材がいないのか?を物語っています。
大企業ですら、IT企業以外にはIT人材が少ないので、中小企業に関しては言うまでもありません。
実際、私が良く見る従業員数30名以下の会社では、IT担当がいることは稀です。
いたとしても総務などとの兼任で、片手間でパソコン雑用をやらされている、というのが実態です。
これからのことを考えると、危機的状況であると言わざるを得ません。
ITを活用できなければ、イノベーションを起こせないからです。
悲観的に感じられたかもしれませんが、これだけIT人材を活用できていない国なので、ITを少し活用できれば、競合他社に大きく差をつけることができます。
一般企業もIT人材の採用を強化している
このような状況において、一部の一般企業でもIT活用(デジタル化)の可能性を知っている企業においては採用・教育を強化しています。既にデジタル化に取り組んでいるためです。
ちなみに、IT人材を採用・定着する上で必要な組織文化や風土があります。
言うまでもなく、IT(情報技術)の進化は速いです。
次々と新しい端末・OS・サービスを含め、様々な技術が出てくるのに、対応しているからです。
そのような変化に対応している人だからこそ
- 風通しの良い情報共有
- 成長し学び合う、助け合う土壌
- 多様な価値観
- ビジョンが行き渡っている
などなどの組織文化や風土が求められるのでしょう。
単にIT人材を採用すれば良いのではなく、そういう人材を活かせる組織文化や風土を育てていかなければならないのでしょう。
特に足りないのは「IT企画人材」
それでは、一般企業(ユーザー企業)において、どのようなIT人材が必要なのでしょうか?
IT人材と言っても、医者と同じように、実に幅広いのです。
内科・外科・産科・耳鼻科・歯科・獣医師など、様々な専門を持った医者がいます。
また現場で活躍する臨床医に対して、基礎医学を専門にする医者もいます。
IT人材も同様に幅広く、細かく分類されています。
細かな分類はさておき、大きく2つに分類すると「IT企画人材」と「ITサービス提供人材」に分かれます。ザックリとした役割は以下の通りです。
- IT企画人材:ITを活用して新たなビジネスを創造する人
- ITサービス提供人材:ITインフラや業務システムなどを提供する人(いわゆるシステムエンジニア(SE))
IT人材白書を見ると、一般企業(ユーザー企業)にて活躍が期待されているのは、特にIT企画人材です。
データを活用し、ビジネスの知識・知見を活かし、企画を行う。
企画に基づいて人や組織を動かしていく。
そういう人、すなわち「IT企画人材」が重点的に採用されていることが分かります。
技術面で言えば、データサイエンスやAI(機械学習)に注目が集まっています。
また、この図表にはありませんが、セキュリティ人材が不足していることも指摘されています。
中小企業では、経営者自身がIT企画人材になるべき
ところで、こういう「IT企画人材」は、実は市場にはほとんどいません。
日本にIT人材は100万人以上いますが、IT企画人材は、その10%程度です。
したがって、そういう優秀な人材は、好待遇を示せる大企業に取られてしまうのです。
中小企業としては、採用したくてもできないのが現実です。
その辺も含めて、中小企業においてはIT教育(採用を含む)に投資すべきだと考えています。
中小企業においては、経営者自身がIT企画人材になるしかありません。
社長がそこまで踏み込めない場合には、社長の右腕や後継者になる人が、率先してIT活用スキルを磨いていくのがベストです。
実際、事業承継の好事例を見ていると、後継者が高いITスキルを持っていて、ビジネスを劇的に変えているケースが多く見られます。
- 倒産しかけた老舗旅館「陣屋」が急成長(父の後を継いだ四代目の宮崎社長)
- 日本酒業界に革新を起こした「獺祭」(父の後を継いだ三代目の桜井会長)
どちらもいわゆる普通の中小企業でした。しかし、経営者がIT企画人材になると、業界を変えるほどのイノベーションを起こすことができるのです。(どちらの企業も検索すると様々な事例記事が出てきます)
また、私のお客様でも、経営者自身がITスキルを持っている場合には、良いアプリを探してきたり、kintoneのようなノーコード開発ツールを活用するなどして、高い成果を上げています。
経営者自身がIT企画人材になる。
中小企業が変化し、生き残るための重要な道です。
- 日本の一般企業には、IT人材が少ない
- IT人材が活躍する組織には、オープンな組織文化・風土がある
- 中小企業は、経営者がIT企画人材になるしかない
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【編集後記】
「継続コミュニティ」におけるIT部の動きが活発になってきました。
色んな議論や事例が生まれてくると嬉しいですね。
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