中小企業でIT活用が進まない理由を考察します。
その際、こちらの記事でご紹介した仕事の考え方(現状・目指す姿・課題)と関連付けて考えてみます。
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Contents
仕事を計画する方法
まずは前回の復習です。
あらゆる仕事は、現状を把握し、目指す姿(=目標)を設定することから始まります。
そして、現状と目標の間のギャップ(課題)を埋めるために、仕事を計画します。
その際に良く起こる問題については、前回の記事でご紹介しました。
中小企業がITを導入・活用できない理由
平成30年 中小企業白書によると、ITを活用できない理由は、このグラフのようになっています。
このようなアンケート調査は、その裏側にある背景までは汲み取れないことが多いもの。
今回の考察は、中小企業がIT活用できない真の原因を追求するのが目的です。
そのため、これらの(表面的な)理由を、現状・目標・課題に当てはめてみます。
1位から順番に、当てはめていきましょう。
中小企業でIT活用が進まない理由の考察
①コストが負担できない(30.6%)【課題】
現在のITツールは非常に安くなってきました。
その認識が出来ていないのは、情報収集をしていないからです。
あるいはITベンダーからの見積を鵜呑みにしているからでしょう。
現状と目標のギャップ(=課題)が明確であれば、そのギャップを埋めるために必要なコストを認識することができます。
その課題を解決することによって得られる効果が1,000万円相当なら、ITツールに300万円掛かってもやるべきです。
しかし、そういう課題設定ができていないので、単にITツールの金額だけを見て「高い・安い」と言っているケースが多いように感じています。
つまり、真の問題は以下の2つです。
- 現在のITツールのコストを知らない
- 課題設定が甘いので、期待効果が不明確
②導入の効果が分からない、評価できない(29.6%)【課題】
これも課題設定の問題です。
「IT導入・活用」を目的とするから、効果が分からなくなってしまうのです。
本来、目的(課題設定)があるからITを導入・活用するのです。
その目的に向かって進んでいるかどうか?を評価すべきで、それが出来ていれば「効果が分からない」ということは無いはずです。
多少時間がかかるとしても、現状・目標そして課題を明確にすること。
それなくして、ITに限らず、仕事を計画することなどできません。
③従業員がITを使いこなせない(21.5%)【現状】
この場合、背景にある問題は大きく2つあると推測しています。
どちらも現状(より正確に言えば、これまでの取り組み)の問題です。
過去に非常に使いにくいシステムを導入してしまい失敗した経験がある。(過去~現状)
この場合、原因はシステムにあり、従業員にはありません。
使いこなせないのが問題なのではなく、使いにくいシステムをなぜ導入してしまったのか?を追求する必要があります。
従業員のIT経験値が低すぎる。(過去~現状)
ITに限らず、どんな道具であれ、使いこなすまでには時間が掛かります。
果たして、今までどれだけパソコンやスマートフォンに触れてきたでしょうか?
1日1時間触ったとして、1年で2~300時間。
これでは明らかに少なすぎます。
そもそも経験が少なすぎれば、いきなり新しいITツールを与えたところで使いこなせないのは当然です。
教育環境も整えないまま「使いこなせない」と切り捨てる企業が多すぎるように思います。
④業務内容に合ったIT技術や製品がない(18.0%)【あるべき姿】
これは目標設定の問題です。
自社の業務内容にITツールを合わせるのは、コア業務だけです。
逆にどの会社でも行っている一般的な業務(例:会計・人事など)は、広く使われているITツールに業務を合わせるのがお勧めです。
「今のやり方に過剰にこだわり過ぎていて、変化を認めない」というのは、IT活用する上で非常に良く見る失敗パターンです。
コア業務だけは、自社に徹底的に合わせた開発が必要になるかもしれません。
ただ、その割合は全業務の数%程度ではないでしょうか。
バックオフィス(経理や人事など)や営業・マーケティングなど、多くの業務は、既に広く使われている業務で十分対応できるはずです。
また業務をできる限り細かく分解しつつ、ITツールを選択すると良いでしょう。
今は様々なITツールが非常に小さく設計されているからです。(マイクロサービスと言います)
⑤IT導入の旗振り役が務まるような人材がいない(17.0%)【課題:インプット】
⑥適切なアドバイザー等がいない(9.7%)【課題:インプット】
この2つが一番悩ましく本質的な問題だと感じています。
実際、課題を元に仕事を計画していくときには、以下の3つを明確にします。
- インプット(人員や予算)
- プロセス(タスクの設計)
- アウトプット(何を成果物とするか)
中小企業では、特に人材に関するインプットが枯渇するケースが多いです。
単に「時間が足らない」という量の問題と、「適切な人材がいない」という質の問題があります。
この2つは、どちらも質の問題です。
時間をかけてでも育てていく必要があります。
また、その前段階として外部の人材を見つける必要があります。
経営者はWebなどを中心に、良さそうなアドバイザーを探してみると良いでしょう。
じっくり探し続ければ、良さそうな方が少しは見つかるのではないでしょうか。
⑦個人情報漏洩の恐れがある(9.2%)【現状】
⑧技術、ノウハウの流出の恐れがある(6.6%)【現状】
これら2つは現状認識の問題です。
個人情報漏えい事故は、「紙媒体」での発生件数が最も多いです。
また原因別でも、「紛失・置き忘れ」が1位です。
つまり物理的にモノを持ち歩く方が、よほどリスクが高いのです。
ITを適切に活用した方が、個人情報などの重要情報の漏えいリスクを抑えることができます。
ここまで理由 8つについて、現状・目標・課題への分類を行いつつ、真の原因を推測してきました。
改めて、仕事を計画する際、この3つを定義することの重要性が分かりますね。
(ほとんどの理由が、3つの定義が出来ていないことが原因ですので)
ここまではアンケートの理由について、それぞれ現状・目標・課題のどこに原因があるのか?を掘り下げてみました。
ただ、この他にも、IT活用できない理由はあるはずです。
次回は、私の現場経験を踏まえた理由なども含めて、考察してみます。
- 仕事を計画するためには、現状・目標・課題の設定が必要
- 中小企業がITを活用できない理由も、これら3つに関連付けられる
- 表面的な理由の背景には、真の原因が隠れている
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【編集後記】
残暑の季節ですが、まだまだ暑いですね。
昨日までよりは、少しマシになった気がしますが・・
エアコンがあまり好きではないので、汗をかきながら仕事をしています。
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