改善は、新規受注を目指す川上からではなく、受注後のサービス提供(川下)から行うべきことをお伝えしました。
IT受託開発など、受注後にサービスを提供するビジネスの場合、プロジェクトマネジメントの有無がサービス品質・顧客満足度に直結します。
では、プロジェクトマネジメントを行う上での最重要事項は何でしょうか?
ビジネスとは期待値コントロールである
プロジェクトマネジメントの話に入る前に。
全てのビジネスパーソンに必要な、ビジネスの基本をお伝えします。
ビジネスとは期待値コントロールです。
病院に通うときのことを想像してみましょう。
風邪をひいた・熱がある・頭が痛いなど、「具合が悪い」から私たちは病院に行きます。
そして、病院に行く目的は「健康になる」ことです。
そのための手段として、薬・注射・点滴、あるいはお医者さんからのアドバイスがあったりします。
- 現状:具合が悪い(熱がある etc)
- 解決策:薬・注射・点滴、あるいはお医者さんからのアドバイス
- 目的・目標:健康になる
図にすると、こういう関係です。
このような目的を持って病院に行くにも関わらず、
- 病名や原因をちゃんと教えてくれなかった(現状が正しく分からない)
- 薬をくれなかった(解決策がない)
- 混雑した待合室で待たされて、余計に具合が悪くなった(現状が悪化)
というようなことがあれば、私たちは病院のサービスに対して不満足を覚えます。
同じように、私たちは全てのサービスについて、一定の期待値を持っています。
病院の例であれば、すぐさま健康にはならなくとも、病名が分かり、解決策が提供されることで、目的(健康)に近づく兆しを感じられることでしょう。
もしここで、患者(顧客)が無茶な目的・目標を持っていたらどうなるでしょう?
「病院から出る頃には、完全回復してバリバリ動けるようになっている」
などと期待されていたら、どんなに素晴らしい治療を提供したところで不満を持たれてしまうかもしれません。
これではお医者さん・看護師さん・スタッフがどれだけ頑張ったところで報われません。
「病院は病気を治すところだけど、その場では治らないからね」と患者(顧客)の期待値を事前にコントロールしておく必要があります。
期待値が高すぎると裏切られたと不満の要因になりますし、期待値が低すぎると仕事を受注できません。
その意味で、自社ができること・できないことを認識し、正々堂々と顧客に伝える必要があります。
プロジェクトの最重要事項(現状把握とゴール設定)
プロジェクトを通じて、顧客に提供するサービスも同様です。
- 正しく現状を把握すること
- ゴール(目標)を明確にすること
この 2つが非常に重要なのですが、「何となく」で済まされてしまう例が非常に多いです。
例えば「〇〇システムを開発・納品すること」がゴールになっている例です。
それは病院の例で言えば薬を提供することであり、あくまでも解決策。
- そのシステムを使うことで、お客様が達成したいことは何なのか?(目的・目標・ゴール)
- 現状はどういう状態なのか?これまでどのような活動をしてきたのか?(背景・現状)
このような基本情報を確認しないままプロジェクトを始めてしまうから、後でトラブルが起きるのです。
どんなプロジェクトであったとしても、まずは現状とゴールをしっかり整理しましょう。
目標を過度に高すぎたり、低すぎたりしないよう、先述の期待値コントロールが必要です。
そして、現状と目標のギャップが課題です。
その課題を解決するために、〇〇システムのような解決策が必要となります。
解決策を実現するために、プロジェクトマネジメントでは、以下のような対象を見ていきます。
- タスク(内容・進捗)
- 人(タスクの担当者、ステークホルダー)
- 予算(コスト)
- スケジュール
- 品質 etc
これらは全て、上記のゴールに達成するためです。
タスクの進捗が遅れたり、予算が足らなくなったりすることが起こりますが、何を捨てて・何を優先させるのか?判断基準になるのは、このゴール設定です。
つい急いでプロジェクトを進める方に走ってしまいがちですが、現状把握とゴール設定こと、プロジェクトマネジメントの最重要事項と認識しておきましょう。
- ビジネスの基本は、顧客の期待値をしっかりとコントロールすること
- プロジェクト開始前に必ず「現状把握」と「ゴール設定」を行う
- プロジェクトを進める上での判断基準は、この現状・ゴールが元になる
【編集後記】
PMBOK(プロジェクトマネジメントの世界標準となっている体系)を学ぶだけでは得られにくい、実践的な内容をこれからお伝えしていきます。
シリーズとして、何記事も積み重ねていく予定ですので、お楽しみに!
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