中小企業がIT(ツール・システム)を導入・活用できない理由トップ3は、以下の3つです。
- コストが負担できない
- 導入の効果が分からない、評価できない
- 従業員がITを使いこなせない
三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱「人手不足対応に向けた生産性向上の取組に関する調査」(2017年12月)・平成30年中小企業白書より
この記事では2つ目の導入の効果をどう評価すれば良いのか?をお伝えします。
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Contents
IT投資には攻めと守りがある
経営には「攻め」と「守り」があります。新規事業をつくりだしたり、新規顧客を獲得することは攻め。キャッシュフローを安定させたり、事業継続性に備えたりするのは守りです。同様に、IT投資にも攻めと守りがあります。
何が具体的な攻めのIT投資・守りのIT投資かは、以下の記事をご覧下さい。
例えば、攻めには「ビジネスモデルの変革」「商品・サービスの差別化・高付加価値化」があり、守りには「企業としての社会的責任の履行(セキュリティ確保、個人情報の保護等)」「業務プロセスの効率化(省力化、業務コスト削減)」があります。
攻めと守りで評価指標は異なる
IT投資を評価するときには、攻めと守りでは評価指標は全く異なります。守りは既存の業務や仕組みがあるので、ITを導入・活用する前後での比較がしやすいです。例をいくつか挙げます。
- ある業務プロセスを行うのに掛かる時間が3時間から3分になった(時間的評価)
- 外注していた業務プロセスを内製化した(金額的評価)
- 機械設備の稼働率が20%向上した(生産性評価)
数字での評価以外にも、定性的に評価することもできます。
- 会社に戻らないと見積り作成できなかったのが、外出先でもできるようになった
(→数字に直すなら、営業の業務時間における内訳を評価するなど) - 個人情報を持ち出さずに業務ができるようになり、顧客に安心していただけるようになった
なお、時間の削減効果を評価するときに、いくつか問題になることが多いです。
従業員の1時間当たりのコストが不明確
従業員の1時間当たりのコストが不明確なケースが結構あります。製造業の直接人件費を除いて、不明確な中小企業が多い印象です。社内で1時間当たりのコストを算出するルール(式)を決めてしまい、いつでも一律で評価できるようにしておきましょう。
厳密な時間単価よりも、ある程度、ざっくりとした基準があれば十分です。一般社員が5,000円、管理職が10,000円、経営層が20,000円というような。(数字は適当です)
時間を削減することが効果と捉えられない
もう1つは時間を削減することが得られた効果として認められないことです。「時間が空いても、やることがなければ意味がない」という話です。日本の場合、時間を大幅に削減できても人件費をカット(つまりリストラ)できるわけではないので、こういう意見が出てくるのでしょう。
確かに仰る通りで、時間を削減していても、従業員がヒマで遊んでいたら、何の意味もありません。「時間が空いたら○○に取り組もう」と前もって決めておくことが大事です。
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攻めの投資は「いくらまで出せるか?」が起点
攻めの投資は、これから始める新たな取組みなので、既存と比べることができません。起業経験のある方ならお分かりですが、最初からいくら効果が出るかは分かりません。
一応、事業計画はあるけれども、本当にそうなるかは、やってみなければ分かりません。事業計画どおりに売上が上がった会社を、私はいまだ1度も見たことがありません。攻めの投資とは、そういうものです。
それでも起業する方が次々に現れるのは、何かを成し遂げたいからです。同様に、攻めのIT投資も何かを成し遂げるために行われるものです。ですから、その実現したいことに対して「いくらまでなら払っても良いか?」が1つの起点になります。
- 社内の情報共有を促進するなら、払えるのは月に10万円までだな
- ECサイトを始めたいけど、最初は月20万円までで小さく始めて、合計200万円以上掛かっても軌道に乗らなければ撤退しよう
- 新しいWebサービスを開始するのに、初期投資は300万円、ランニングコストは30万円まで
上の例にも触れましたが、攻めに対しては撤退基準を設けておいた方が良いでしょう。掛ける金額と時間(人手)はここまで。それで目標にしていたことが達成できなければ、撤退したり方向修正したりします。
IT導入・活用を検討するときに必要な目線
攻めでも守りでも、実際の評価基準は、導入・活用するツールによって、大きく異なります。大切なことは評価基準は経営者目線で決めることです。ですから何らかのツールを検討するときには、以下のようなことを気をつけると良いでしょう。
- 経営者は、経営がどう変わるのか?を定性面・定量面から評価する
(そのためには、ITを理解しようとする姿勢が必要です) - IT担当者は、できる限り経営者が分かるように提案をする
(技術的な話よりも、経営者目線の方が大切です)
- IT投資の評価基準は攻めと守りで全く異なる
- 攻めは金額上限の基準を持ち、撤退基準を設ける
- 守りは既存と時間やお金などを比べる
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