中小IT企業が危機を迎えています。
以下は、ニュース記事の抜粋です(2025年2月27日:日本経済新聞)。
東京商工リサーチ(TSR)の 2025年1月発表では、2024年におけるソフトウエア業の倒産数が223件と2015年以降、過去10年間の調査で最多となった。
帝国データバンク(TDB)の調査でも倒産数が189件と、こちらも過去10年間の調査で最多だった。
中小IT企業経営者の現状
- 「日々の業務に追われ、目の前の案件をこなすのに精一杯で・・」
- 「利益率は低いが、今のところ安定しているから・・」
IT企業の経営者から、新たなビジネスを立ち上げたいとは考えているものの、なかなか進めることができないという悩みを頂くことが増えてきました。
以前から SES/受託開発企業の経営者からは、ご相談がありました。
ただ、冒頭のニュースのように、中小IT企業(ソフトウェア業)の倒産件数が、ここにきて増えているようです。
最近のご相談は「どうしたら進めることができるのか?」具体的なものが増えてきました。
実際、新サービスを企画したり、マーケティング支援に入っている企業もあります。
この記事をお読みの方は、おそらくIT企業経営者か、それに近い方でしょう。
果たして、あなたの会社のビジネスモデル・その働き方は、5年後・10年後も本当に通用するでしょうか?
SES・受託開発の構造的リスク
SES や受託開発そのものが悪いわけではありません。
ただ、その構造上、リスクがあることは把握しておくべきでしょう。
SESのリスク
SES(System Engineering Service)は、顧客に対して、エンジニアの技術力・労働力を提供するサービスです。
システム開発企業(受託・自社プロダクト)に入り込むことが多いのではないでしょうか。
- 代替手段の高まり
言うまでもなく、生成AI やローコード/ノーコードツールの進化により、単に手を動かすだけの仕事は大きく減ってきています。結果として、価格決定権を持てず、言われるがままの価格でしか受注できないケースが増えているようです。 - 人材採用の困難
SES では、1人月(1人を1ヶ月単位で派遣)がビジネスの単位になることが多いです。
つまり、人を増やさない限り、売上を伸ばすことができません。
上述の代替手段の高まりから、価格を上げることは、困難になってきていますので。 - 社員が育ちにくい
SES ではクライアント先に派遣されてしまうので、自社への愛着を持ちにくいです。
たまに全社ミーティングのようなイベントを行っても、「クライアント先がホームで、こっちの方がアウェイ」みたいな雰囲気になってしまいがちです。
結果として、長く事業を継続していく上で大事な「柱となってくれる社員」が育ちにくいです。
優秀な人間ほど、他社に移ってしまうというリスクが高いです。
SES は、ビジネスとしては比較的、立ち上げが容易です。
案件を取れる営業力さえあれば、何とかなりますので。
その営業力があることは、今後、別の事業を立ち上げる上でも武器になります。
ただ、こういうリスクがあることは、認識しておきたいですね。
受託開発のリスク
顧客から要件をヒアリングして、求められたシステムを開発・納品することが一般的です。
- 代替手段の高まり
ここでもやはり、代替手段(生成AI・ノーコードなど)が増えていることが挙げられます。結果的に工数で見積もった提案に対して、顧客が満足・納得しないケースが増えているようです。 - 顧客依存
中小IT企業の場合、特定数社からの依頼を受けているケースが多いです。
IT企業に限った話ではありませんが、中小企業では売上の8割を上位2割(数社)の顧客に依存しているのは、普通にあることです。
ただ、受託開発というビジネスモデルだと、顧客が離れてしまってからリカバリーするまでの間、ずっとお金が入ってこなくなります。 - プロジェクトによる疲弊
受託開発の場合、どうしても稼働状況に波が出てしまいます。
納期直前になると残業が続くなどして、それが人材流出につながってしまうこともあります。
SESに比べると、要件定義・設計・プロジェクトマネジメントを経験していることが強みです。
自社の経験・強みを活かすことが、新規事業では求められます。
例えば、特定の業界・業種に対して強みを持っているのだとすれば、それを是非、活かしていきましょう。
ここまでの SES/受託開発のリスクについては、もう十分に認識されているかもしれません。
ただ、改めて新規事業を立ち上げて、ビジネスモデルを転換していきたいという想いを持っていただくために、改めてリスクを列挙してみました。
- 中小IT企業(ソフトウェア業界)の倒産件数が増えている
- SES/受託開発のリスクを改めて認識しておく
【編集後記】
久しぶりのブログ更新です。
書きたいことは山ほどあるので、少しずつ更新していきます。
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