前回は業務プロセスを改善するための思考法をご紹介しました。
しかし現実問題、この思考法だけでは業務プロセスを改善することはできません。改善を阻む「壁」が存在するからです。今回は、この壁は何か?と、壁を取り除く方法をご紹介します。
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現在のムダは誰のせいでもない
1つ目の壁は、改善すべき業務プロセスを発見したときの「責任の押し付け合い」です。
「この書類が必要なのは、○○部が必要と言ったから(うちの部のせいじゃない)」
「営業部からの数字が適当すぎるから、経理側からもう1度確認しなければならない」
というように。
言うまでもなく、業務プロセスを改善するのは、誰かに責任を押し付けるためではありません。ムダを省き、生産性を上げ、より良い仕事をするためです。
- 今の業務プロセスが現実としてどうなっているのか?(現状把握)
- その業務プロセスにどのような無駄が含まれているのか?(分析)
- どのように改善できるのか?(分析)
現状の業務プロセスは、これまで仕事をしてきたなかで培われてきた結果に過ぎません。ですから、現状把握・分析をした後に、誰かに責任を押し付けるのではなく、ただ現実を受け入れれば良いのです。
部分最適ではなく、全体最適へ
2つ目の壁は「部分最適」に走ろうとすることです。
業務には、必ず関わる人が存在します。
そして「自分のところさえ良ければ良い」という部分最適が働きやすくなります。
これは悪意があってそうしているわけではなく、組織が大きくなったり役割分担が明確になるほどに、他部門が何をしているのか?が把握できなくなるからです。
しかし、前回の記事でお伝えしたように、業務プロセスの改善をするのであれば、まずはその目的を明確にしなければなりません。その上で、部分最適ではなく全体最適が必要なのです。
前回の住民票の異動の例で言えば、A市・B市・住民全てにとって最適な状態を目指さなければなりません。現状の住民票の異動が面倒くさいのは、自治体側の都合によって、住民に余計な負担が押し付けられているからです。
この意味で経営者・役員を名乗る人は、自部門の部分最適に走ってはなりません。それは担当者レベルの仕事です。経営者は特定の部門に肩入れするわけにはいかず、全体最適できる人材が選ばれなければなりません。
日本の大企業の改善が進まないのは、特定の事業部門出身者が経営者になっているからです。特定部門の視点しか持っていない、他の事業部門に意見が通せない。それでは全社的に改善が進まないのは当然のことです。
もっと規模の小さい中小企業は、全体最適を目指して改善する「覚悟」が必要です。
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変化に対する抵抗感を取り除く
では、なぜ「覚悟」が必要なのでしょうか?
あらゆる改善・変化に言えることですが、「変化したくない」という人間の本能が3つ目の壁になるからです。
例えば、今までエクセルに入力していたものを別のシステムに入力するようにする。紙に書いていたものをWebで入力するように変更する。このような変化には、必ずと言って良いほど反対意見が出てきます。
「紙で書いた方が速い」
「新しいシステムは使いにくい」
というように。
こういった意見には理解・共感を示す必要はありますが、全てに従えば良いわけではありません。全体最適を目指す結果、ある人にとっては今までより負荷が掛かることもあります。
それでも全体をより良くするためには経営者が説明し、反対する人にも協力を得られるよう、根気よく働きかけ続ける必要があります。ときには変化に対応できずに辞めていく人が出てくるかもしれません。
それでも理想の状態に向かって進まなければならないので、経営者には「覚悟」が必要なのです。
このように業務プロセスの改善に現れる「壁」は全て、人間の気持ちに関するものです。組織を変えようとするときに壁となるのは、コストやシステムよりも、感情面であることを理解し、理想の状態に向けて進んでいきましょう。
- 業務プロセスを改善しようとすると「壁」が現れる
- 「責任の押し付け合い」「部分最適」「変化を拒む」、全て人間の感情
- その感情に共感・理解を示しつつも、変えていく覚悟が経営者には必要
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