組織

中小企業の教育との向き合い方は・・?

「会社は学校ではない」という社員向けのコメントを書きました。
「手取り足取り教えてもらわないと何もできない」というような情けない声を良く聞くからです。

会社は学校ではない?「会社は学校ではない!」 このところ、何度か聞いたコメントです。 こんなコメントが出てしまう背景や、社員側・会社側がそれぞれ認識...

一方で、会社としては教育にどう取り組めば良いのでしょうか?

残念な実態

まず、残念な実態からお伝えします。
日本語をマトモに読めない人が増えているようです。

「日本語くらい読めるわ!」という人が多いでしょうが、文字面を追うことと知識体系として理解し実践できることは全くの別物です。

最近は YouTubeでは日本語を話しているのに字幕がついていることが増えました。
動画の時間は短くなる傾向にあります。
「今、話していること」を瞬間的に理解できたとしても、「全体として何を言っているのか?」が分からないのです。

例えば、1冊の本を(文字面をなぞるだけでなく)知識体系として整理し、理解できる人が減っているような気がしてなりません。

(私も偉そうなことは言えず、本を読むのに四苦八苦していますが・・)

文化庁の「国語に関する世論調査」(2018年度)での「1カ月に大体何冊くらい本を読んでいるか」に対して、本を1冊も「読まない」と答えた人が、全体の47.3%にものぼっています。
日本人の半数近くが本を読む習慣がないのです。

文章を読めないので、どれだけ社内の資料・マニュアルを充実させても意味がなくなってしまいます。
資料ではなく、実際に教えてあげる必要が出てくるので、教育コスト(時間・労力・お金)が増大してしまうのです。

この傾向は、高学歴の人を採用しにくい会社になるほど、顕著であるように感じています。
(個人的に学歴社会には反対ですが、最低限の読み書きができるという意味では、現時点で機能している部分があると・・)

つまり、高学歴者(文章が読める人)を採用できる企業と、そうでない企業の間で、教育コストに大きな差がついてしまうのです。

現実問題として

前回の記事で、このような原則を書きました。

  • 学校:個別スキルだけでなく、学習法・思考法や基礎学問などから教えてくれる場所
  • 会社:仕事に直結するスキルを教えてくれる場所

会社は本来(というか少なくとも最初は)、仕事に直結するスキルを教える場所です。
しかし、上述の通り、原則が成り立たなくなっています。
仕事に直結するスキルを伝えようにも、文章が読めないため、伝わらないのです。

したがって、教育する際には「仕事のやり方」だけでなく「文章の読み方」も伝えていく必要があります
本を読む習慣を促すために「図書購入支援制度」を取り入れたり、「読書会」を催すのも良いでしょう。

また、仕事で読む文章は論理的なものが多いので、ロジカルシンキングを鍛えることも効果的です。
ロジカルシンキングを学ぶと、言葉の1つ1つに対する感度が高まり、抽象度の高い言葉・具体的な言葉を使い分けられるようになっていきます。

もちろん、一朝一夕で身につくようなものではないので、継続的な学び・実践が必要です。

教育しなければ、成果は上げられない

言うまでもなく、現代は知識社会です。
それぞれの専門知識を持った人たちが協力して、初めて成果を上げられる社会。

会社が成果を上げるためには、社員一人ひとりが高い専門知識を持っていることが前提条件となります。
つまり、教育は必須であり、中小企業も避けようがありません。
むしろ積極的に行うべきでしょう。

教育への投資・計画・実施しなければ、確実に利益率は落ちていきます。
逆に言えば、今利益率が低くて苦しんでいるのは、社員一人ひとりの専門知識が低いためかもしれません。

その一方で中小企業の現実問題として、そんなに教育に割ける時間・お金がないことが多いのではないでしょうか。

  • まずはできるところからやる
    (読書会くらいなら、本代と1回1時間程度の時間で済みます)
  • 業務として行う
    (時間外などの「やる気」に期待しても、上手くいかないケースが多いようです)
  • 全員を等しく教育しようとしない
    (全くやる気がない人まで何とかしようとすると、全く前に進めません)

このように小さく始めて、成果が上がってきたら、少しずつ投資額・時間などを増やしていくと良いでしょう。
何よりも大切なのは、教育を経営の重要事項として社員に伝えること。
と同時に、経営者が社員以上に学び続ける姿勢を見せること。

「企業は人なり」と松下幸之助さんは仰いました。
知識は人に付随するものです。
当時よりもさらに、人、すなわち教育の重要性は増しているように思います。

まずは小さくでも始めてみましょう。

まとめ
  • 仕事に直結するスキルだけでなく、もっと基礎から教える必要がある
  • まずは、かけるお金や時間を小さく、やる気のある人だけでも始めてみる
  • 成果を出しながら、範囲を広げていく

【編集後記】
組織として成長している企業は、教育を継続して行っている印象です。


メルマガ『経営は100種競技!』を毎日配信しています。
マーケティングやITを身につけたい。
ビジネスを楽しみたい。
変化・成長したいというビジネスパーソンにお読みいただいています。

渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
\ Follow me /