前回はAI(人工知能)の基本をご紹介しました。
また人工知能を使う人と使われる人の格差が広がっていくことも。
今回はその内容を踏まえて、人間、特に経営者が注力しなければならないことをお伝えします。
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AIが間違って使われると、バカが加速する
AIは進化し続けており、それと同時に使いやすくもなってきています。
とは言え、一般人がサクッと使えるかというと、現時点ではそこまで簡単にはなっていません。
もっと多くの人がAIの恩恵を受けるためには、もっと簡単になって欲しいものです。
ただ、その一方で、一気に簡単になってしまうと間違った使われ方をされる恐れがあります。
極端な例を挙げると、軍隊で「とにかく敵を殲滅することが最適な状態」というポリシーでAIが利用されてしまったら。敵を殲滅すると同時に、人類および地球そのものを破壊してしまいかねません。
もう少し身近な例を挙げると、ビジネスの多くはマッチングで成り立っています。
例えば、人材派遣元が紹介する人材と、派遣先が望む人材のマッチングです。
今は営業やキャリアコンサルタントのような人が介在してマッチングしているのが大半です。人材をデータベース化して、条件検索するのは一般的に行われていますが。ここにAIを活用すると、より効率的に最適な人材マッチングができるようになるでしょう。
しかし、AIの判断基準が「いち早く売上を上げること」だったら、どうなるでしょうか?
マッチングは成立したとしても、「その後は知らない」ということになってしまいます。
「派遣される人と派遣先の双方が幸せになること」や「お互いのパフォーマンスが最大化されること」という判断基準の方が、中長期で見たら、物事は良い方向に進むように思います。
AIは何らかの大きなポリシーにしたがって、アルゴリズム(判断基準)を発見・最適化していきます。そのポリシーが「敵の殲滅」や「目の前の売上」だったら、ロクなアルゴリズムは生成されないでしょう。
従来は、そのような倫理観に欠けた指導者や経営者が居ても、その影響範囲が一定範囲に留まっていました。しかしAIという「超・作業の効率化」「人類の能力拡張」ツールが間違って利用されてしまうと、バカが加速してしまうのです。
正しいことを判断する倫理観・審美眼
このようなバカが加速するのを防ぐためには、指導者層や経営者が正しいことを判断する倫理観や審美眼を磨くことが欠かせません。
かつての経営者は目の前の利益を稼ぐことに判断を誤り、工業排水を河川に流したり、排気ガスを撒き散らしたりしました。当時の社会が公害を無視してでも工業化に向かう流れがあったにせよ、倫理観を失っていたと言わざるを得ません。
あるいは現代においても粉飾決算がなくなりません。何年かに1度は大きな事件が出てくるのも、何が正しいのかを見失った経営者が後を絶たないことの何よりの証左です。
より過去を遡れば、日本には良い参考になる考えがいくらでもあります。
例えば、近江商人の三方よし(売り手によし、買い手によし、世間によし)です。自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを願う「三方よし」の精神は、現代のCSRやSDGsにつながるものではないでしょうか。
江戸の街はどんな不用品もリサイクルした徹底したエコ社会であったという記録があります。あらゆる自然や物に神が宿っている、と考えていた日本人らしい社会と言えるのかもしれません。
これからAIを使う指導者層や経営者には、本当に正しいものを見分ける倫理観・道徳観が必要です。真に美しいビジネスを見分ける審美眼が必要とも言えるでしょう。
ドラッカーはこんなことを言っています。
- (マネジャーには)根本的な素質が必要である。真摯さである。
- (真摯さのない人に対して)そのような者は人として未熟であって、しかもその未熟さは通常治らない
ドラッカーの言葉で言えば「真摯さ」。
人の上に立つ人には絶対的に必要なものです。
AI時代には、このような素質が間違いなく求められるようになっていきます。ドラッカーは「通常治らない」と断ち切っていますが、それでも私たちは人間力を高めるべく、努力すべきではないでしょうか。
- AI時代は、間違った判断がそのまま加速してしまう
- 倫理観・道徳観・審美眼・真摯さが指導者・経営者には求められる
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