ITツールを選ぶときには、クラウドを前提に選ぶべきです。逆に言うと、自社でサーバーなどのハードウェアを購入して運用する「オンプレミス」は、よほどの理由がない限り、推奨できません。この記事ではクラウドを選ぶべき理由をお伝えします。
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クラウドとオンプレミスの価格差
仮に会計ソフト(ここでは弥生会計ネットワークを3名で使うと想定)を検討しているとします。ちなみに会計ソフトは多くの企業が利用しているので挙げただけで、特に意味はありません。他のソフトを利用するときでも、これからご紹介することは、概ね同じになります。
弥生会計のページでは丁寧に価格算出のシミュレーションを行ってくれます。
いきなり出ました100万円超え。会計ソフトですよ。事業において、新たな付加価値を生むものではありません。20年前だったら、選択肢はこういう形しかありませんでしたので、致し方ありませんでした。でも、クラウド時代なら、このように変わります。こちらはクラウド会計freeeの場合です。
小さく始めたとすると、ミニマム版で年間23,760円/年を3人で利用するので、71,280円。かりにベーシックプランを選んだとしても、3人で年間143,280円。さらにこのプランで3年間使い続けたとしても、429,840円。
価格で見ると、全く比べ物にならないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。なぜこのような価格差が生まれてしまうのか?その理由を次に述べたいと思います。
クラウドとオンプレミスでは買っているものが違う
では改めて、クラウドとオンプレミスで購入しているものの差を見てみましょう。
オンプレミスで購入するものを図式化すると、以下のようになります。
一目で分かるのですが、会計ソフトを使いたいだけなのに、それとは直接関係ないものに、多くのお金を支払う必要があります。では、1つ1つ解説していきますが、正直長いので、飽きたらすっ飛ばして下さい笑
サーバー
会計ソフトを動かすためのサーバー(ハードウェア)が必要になります。普通のパソコンにインストールする方法もありますが、その場合は、そのパソコンでしか使えなくなってしまいます。つまり、ひとりビジネスでしか、事実上、使えなくなってしまいます。
必要な機能(例えばハードディスクの容量)によって価格は大きく変わります。後述するデータベースを動かす必要があるので、最低でも20万円くらいは見ておいた方が良いでしょう。
OS(Windows Server)
次にサーバーの上で動かすOSです。個人が使うパソコンと異なり、従業員みんなで利用するのでWindows 10ではなく、Windows Serverが必要になります。スタンダード・エディションでも10万円以上します。
データベース・サーバー
OSの上に、更にデータベース・サーバを動かさなければなりません。会計データはデータベースなので、その情報を収納する器が必要になるからです。ちなみに弥生会計19ネットワークを使う場合には、Microsoft SQL Serverが必要になります。これもライセンスによりますが、最低でも10万円ほどは掛かります。
会計ソフト
弥生会計の場合は、データベース・サーバーを含めた価格になっています。合計で30万円のようです。さらに、弥生会計の場合は、安心保守サポートなる年間8万円の費用もかかるようですね。(上記シミュレーション結果より)
やれやれ、やっと全部揃った・・と思ったら大間違いです。上記の弥生会計のシミュレーションにはこれ以上のことは書かれていませんが、実は他にもまだ必要です。
UPS(無停電電源装置)+UPS管理ソフト
サーバーはみんなで使っているものですから、突然、電源が落ちたりしたら大変です。特に決算処理などをしている最中に、突然ダウンしてしまったら・・目も当てられません。
そのような悲劇を避けるために、サーバーにはUPSと呼ばれる大きな電池のようなものをつけます。これで急な停電や落雷があったとしても、安全にサーバーをシャットダウン(電源断)するまで電力供給を維持するのです。サイズによりますが、安いものだと2万円くらいです。
さらにその管理ソフトも必要です。ざっくり1万円。
バックアップソフトウェア
もう飽きてきましたね・・ですが、まだあります。
データベースに蓄積された大切な会計データを失うわけにはいきません。ちゃんとバックアップをとっておき、地震・火事・台風などの災害や、盗難などからデータを守る必要があります。
単なるファイルのバックアップと異なり、データベースと連携する専用のバックアップソフトウェアが必要になります。ざっくり1.5万円以上。
ウンザリしませんか?
理由は会計ソフトを使いたいだけなのに、それ以外のことに余計な気を遣う必要が多すぎるからです。実は、さらに問題があります。これらの機器やソフトウェアは購入しているので、使う必要がなくなったとしても自社の資産になっているため、簡単には手放せません。
ここまでをまとめつつ、追加の情報を加えますと
- 本当に必要なもの以外が多いため、初期投資額が高くなる
- 使わくなっても、残った資産が重荷になる
- オフィスの一部をサーバー用に空けなければならない
と、ハッキリ言ってデメリットだらけなのです。
一方、クラウド会計の場合、購入するのはクラウド会計ソフトの利用権のみです。資産は購入しません。これがクラウドを利用することが「資産から経費へのシフト」とか「BS(貸借対照表)を軽くしましょう」などと言われる理由です。
サーバーやデータベース、電源の管理などはクラウド事業者がやってくれています。それらを含めてサービスとして利用権を提供してくれているのです。
補足をしておきますと、データのバックアップはクラウド事業者がやってくれていますが、念のため、自社でもやっておいた方が良いでしょう。月に1回とか、決算の前後など重要なタイミングではデータを手元にダウンロードしておきましょう。(特に追加費用は掛かりません)
価格・経費化以外のクラウドのメリット
ここまででオンプレミス(自社購入・運用)を選ぶ理由は、ほとんどなくなったと思います。さらにクラウドを利用することで追加のメリットが得られます。
どこからでも、スマホでも利用できる
インターネットにつながる環境でしたら、どこからでも利用できます。スマホアプリが提供されている場合には、スマホでも利用可能です。
オンプレミスの場合は自社内にサーバーがあるので、外出先から使うことは厳しいです。可能にしてしまうとセキュリティ上のリスクが大きくなりすぎてしまいます。
パソコンのスペックを落とすことができる
クラウドで提供されるソフトウェアを利用するのは、ブラウザやスマホアプリです。データを保持したり処理したりするのはクラウド側で行いますので、操作をする端末側はスペックを落とすことができます。
極論言えば、ブラウザさえあれば良いので、安いChromebookを活用することで調達コストを下げたり、セキュリティレベルを上げたりしているケースもあります。
お試し期間がある
多くのクラウドサービスにはお試し利用期間があります。上述のクラウド会計freeeの場合は30日です。試しに使ってみることで、本当に自社にとって良いソフトなのかどうかを的確に判断することができます。
セキュリティレベルが高い
「クラウドはセキュリティが不安」と言われることがありますが、的外れです。一般的な中小企業が入っているビルと、クラウド事業者が運用している強固なデータセンターと、どちらのデータが盗難に遭いやすいかは、言うまでもありません。
データセンターに入るには、事前に入館申請をして、指紋などで個人特定し入館して、金属探知機を抜けないと入れないことが多いです。また、サイバー攻撃に対しても、専門家がチームを組んで対策をしています。たった1人のIT専門家すらいない中小企業と比べて、どちらがセキュリティレベルが高いかは、全く議論の余地がありません。
・・とここまで良いことばかり書いてきましたが、クラウドではない方が良いケースが無いわけではありません。私のお客様でも、ごく稀なケースでオンプレミスを選んでいることがあります。ただ、この記事では「まずは迷いなくクラウド・ファースト!」を認識していただくために、このようなまとめをさせていただきます。
- オンプレミス(自社で購入・運用)は、本質的な価値以外の重荷が多すぎる
- クラウドは利用したいものを手軽に、素早く利用することができる
- 特に中小企業にとって選択肢は事実上、クラウドしかない
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