経営

私を育ててくれた3人のお客様

前回ご紹介しましたが、良いお客様(=高い顧客リテラシーを持ったお客様)は、売り手を育ててくれます。

「顧客リテラシー」が企業の命運を分ける「顧客リテラシー」によって、企業は大きく2つのグループに分かれつつあります。相手企業を「業者」扱いする会社には、ブラック企業しか近寄ってこなくなり、「パートナー企業」として相手を尊重する企業には、良い企業が集まってきています。...

私自身、独立前の会社員時代を振り返ってみると、私の潜在能力を引き出して下さった3人のお客様を思い出します。

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3人の感謝すべきお客様

私は心から「お客様によって育てて頂いた」と考えています。
もちろん、独立後もお客様に育てていただいているのですが、この記事では会社員時代に大きく影響を受けたお客様を振り返ります。

3人の共通事項は、それぞれがお客様の会社内で成果を上げている人だったことです。
前回の記事でも書きましたが、高い顧客リテラシーを持っている方は、顧客自身がやるべきことを責任をもってやり遂げます。

その上でパートナー企業に対して、高いレベルの要求をしてくるのです。
要求の背景には、「これを成し遂げたい」というような夢・希望だったり、「やり遂げないとヤバイ」という責任感だったりがありました。

私はそんなお客様の強い想いに惹かれて、ついつい当時の会社には存在しないサービスまで提供したのでした。

お客様の想いを形にするスキル

1人目のお客様は、私が20代、ITエンジニアの頃に出会ったお客様です。

「自社のシステムをゆくゆくは、こういう形に変えていきたい。」
世の中の技術トレンドや、自社のシステムを把握して、あるべき姿を描く方でした。

お客様が描くあるべき姿を、より具体化することに、私は力を使いました。

  • 自社の守備範囲から外れるものを含めて、技術や製品情報、事例などを集めまくり
  • お客様のシステムに使えそうなものをピックアップし
  • 3年間程度かけてシステムをあるべき姿に向かわせるステップを描く

そんなことを繰り返しました。
その結果、自社の持つ技術に特化し過ぎず、幅広くシステムを俯瞰できるようになりました。

その後、マーケティング部門に移動したときにも、後に『ITトレンド』の本を執筆することになったときも、このスキルが活きました。今現在にも活きているスキルです。

当然システム面でも活きていますが、社長がボヤっと描く未来像をより具体化する役割を果たすときにも、同じようなスキルを使っていると感じます。

このお客様には、私が担当した約7年間、一度も競合他社に見積依頼されることはありませんでした。もっと言うと、提案書を出したこともありません。お客様と一緒にポンチ絵を描いていたのですから、ある意味では当然です。

お客様の構想段階から二人三脚することの大切さを感じたのでした。

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ITエンジニア集団の責任を追求した経験

2人目のお客様は、私が自分のチームを預かる管理職になってからのお客様です。
実力のある若手2名が担当しているお客様でした。

順調に取引も伸びているお客様にて、大型プロジェクトが立ち上がりました。
技術的な難易度はそう高くないものの、懸念点がいくつか。
そして何よりも、様々な事情により、超短納期のプロジェクトだったのです。

普通にやれば半年はかかるようなことを、3ヶ月で終わらせなければならない。

若手2名だけでは限界があると判断して、プロジェクトマネージャーに自分自身をアサインしました。普段なら問題のない些細な食い違いも、納期が短いことから致命的になっていきます。

お客様側はお客様側で、やらねばならないことが山積みで、お互いに火の手が上がっていきます。そんな中、お客様側のエースの方から、まだ片付いていない技術的な課題をグイグイと追及されることになりました。

私は普段以上に、1つ1つの小さな課題を俊敏に潰していきました。お客様も頑張っている。若手も頑張っている。何とかプロジェクトを成功させたい。エンジニアチームを預かる身として、やれることは徹底したのです。自らの責任を追求したプロジェクトとなりました。

そして本当に3ヶ月でプロジェクトをやり遂げたのでした。
自分たちで言っておきながら、3ヶ月で終わったことに驚いた様子(笑)

お客様には満足いただけたようで、この直後に始まることとなった、さらに巨大なプロジェクトに関しては、「次のプロジェクトに渋屋さんを入れてくれたら、他社には声をかけない」とまで仰っていただけました。

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能力を引き延ばす、乗せてくるお客様

3人目のお客様は、これまでの2人と違って、優秀なタイプと言うよりも、飄々としたタイプでした。自分の社内はうまい具合にコントロールしつつ、私を上手く乗せることで潜在能力を引き出していくのです。

これは私がITエンジニアとして経験した中では、金額も期間も、最大規模のプロジェクトでした。当然、システムが複雑に関係しあうので、技術的な懸念事項はもとより、他システムベンダーとのコミュニケーションなど、心配事だらけでした。

そのような複雑なプロジェクトにおいては、誰も担当できないようなグレーゾーンが必ず現れます。そんなとき、飄々としたお客様が言うのです。

「こんなことに困っていて埒が明かないんですけど、渋屋さん、アイデアあります~?」
「いやぁ~、渋屋さんなら何かアイデア持っているかな、と思って」

このようにポイポイと課題を投げてくるのですが、しばらくお付き合いしているうちに、そのパターンが読めるようになってきました。おかげで「ここ、来るな」と思ったときには事前に調査をして、自分なりの意見を出すようになりました。

「さすが~、こういうの待ってたんですよ!」

私はさらに乗せられていきます。
次第に私が作成した資料がお客様内のみならず、他ベンダーにまでまわされるように。

私の会社からは6名以上のエンジニアが入っていたのですが、このグレーゾーンを埋める役割、そして自社のエンジニアを取りまとめる役割は、完全に私となりました。お客様の期待していることを先読みすることや、資料化することの力を感じたプロジェクトでした。

他にも私を伸ばしてくれた、支えてくれたお客様は数えきれないのですが、最も印象に残っているのは、この3人です。これらのお客様とは、「また一緒に仕事をしたい」と思わせる関係性を構築できました。

ときに無理難題も言われて大変だったときもあるのですが、それが私の力を引き出してくれました。良いお客様とは、こういうお客様なのだと思います。ちなみに、1人のお客様とは、つい先日、10年以上ぶりに再会し、お酒を交わしたのでした。

このように良いお客様を知っているからこそ、「業者扱い」してくるような人とは、残念ながらお付き合いできないのです。

「顧客リテラシー」が企業の命運を分ける「顧客リテラシー」によって、企業は大きく2つのグループに分かれつつあります。相手企業を「業者」扱いする会社には、ブラック企業しか近寄ってこなくなり、「パートナー企業」として相手を尊重する企業には、良い企業が集まってきています。...

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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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