引っ越しをして、住民票を異動させたとき、「面倒くさい」と感じたことはないでしょうか?私は恐ろしく無駄が多くて辟易したのを覚えています。
業務プロセスを改善するための思考訓練として、この住民票の異動を対象に考えてみましょう。
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引っ越しに伴う住民票の異動で面倒くさいこと
引っ越しして、A市からB市に移った場合には、以下のような手順が必要になります。
- A市で転出届を出し、転出証明書を発行してもらう
- B市で上記の転出証明書を添付して、転入届を提出する
より細かく見ると、A市でもB市でも同じような書類を何度も書かされます。
- 書類提出の年月日
- 転出・転入年月日
- 住所
- 家族人数分の氏名、性別、生年月日、世帯主との関係・・etc
引っ越しをすると電気・水道・ガス・インターネットなどの生活インフラの変更をするだけでも大変なのに、役所に対してこんな面倒な手間を取らされるのです。
同じ作業の繰り返しは、業務プロセスで最初に潰すべきこと
国や自治体から見た場合、転出・転入届を出してもらう目的は、住民台帳を正しい状態に維持することです。それによって納税や人口動態統計、選挙の案内などの行政を運営しているからです。
ただ、その目的を達成する割には、非常に無駄が多いです。業務プロセスを改善する上で最初に着目すべきは、同じような作業を何度も繰り返していないか?です。
この例で言えば、A市とB市の両方で同じような作業が必要になることです。これは各自治体で台帳が別々に存在しているからです。しかしそれは自治体の都合であって、住民から見たら「A市とB市でいい具合に情報共有してよ」と言いたくなります。
引っ越しの前、あるいは後に、どちらかの市の窓口に行けば一括で情報更新してもらえる。そんな仕組みの登場が待たれます。マイナンバーカードが有効活用されれば、それを提示して新しい住所を伝えるだけで、旧住所・家族の氏名・生年月日などを伝えなくても済んで欲しいもの。
マイナンバーを発行している時点で、住所や氏名などの個人情報は自治体が把握しているはずなので、同じ情報を転出届・転入届に書かせるのは無駄です。ここでも同じ作業を何度もさせないことが作業効率の改善につながります。
(マイナンバーを持ってから引っ越ししたことがないので、経験者の話を聴いてみたいものです)
業務プロセス改善の鉄則:ECRSの原則
このように業務プロセスの改善には、鉄則とも言える流れがあります。
最初はその業務の目的を明確にすることです。この例で言えば、住民の引っ越しに伴って住民台帳の情報を正しく更新することが目的です。
多くの企業で見かけるのは、担当者が何度も変わってしまった結果、その業務の目的が不明確なことです。目的が不明確なまま業務を進めることを「気持ち悪い」と感じるようになりたいものですね。繰り返しですが、目的を明確にします。
続いて「ECRSの原則」を適用します。ECRSの原則は業務を改善する上での順番や視点を与えてくれるものです。以下の順序・視点で考えていきます。
1. Eliminate:無くせないか?
最初に、この業務プロセスそのものを無くせないか?です。
この事例で言えば、A市とB市で似たような作業を繰り返すのは意味がないです。というより、2つの市の職員に同じような作業をさせているので、少なくともコストが倍かかってします。
さらにマイナンバーに情報が登録されているのであれば、転出・転入届に同じ情報を書かせるのも無駄です。無駄を省いても目的を達成できるように仕組みをつくりましょう。
例えば、A市における転出という業務プロセスはなくしてしまえないでしょうか。
2. Combine(一緒にできないか?)
2つの業務を一緒にできないでしょうか?
この事例ですと、B市で転入という手続きを行うだけで、A市における転出手続きも済んでしまうようにするという手があります。住民台帳がシステム化された現代なら、本来はできるはずです。
それができないのは法律・システム・自治体の姿勢自体のどれかが、古いままだからです。
3. Rearrange(入れ替え、代替できないか?)
3つ目。作業順序を入れ替えたり、作業場所・作業担当者を入れ替えられないでしょうか?
ネットにつながることが当たり前の時代、転入・転出のたびにわざわざ役所に足を運んだり、郵便を送る意味は何でしょうか?紙で提出すると、誰かがそれを入力する業務が発生してしまいます。郵送で送った場合も同様です。そんなことに職員の人手を介する仕事をさせるのは、昭和の匂いがプンプンします。
私だったら、マイナンバーカードを持っている人に対しては本人認証をした後で、パソコン・スマホからの申請を可能にします。そうすれば、データの入力作業は本人の1回きりで済みます。(マイナンバーカードの情報を流用すれば、入力に必要な項目も新住所だけです)
4. Simplify(簡素化できないか?)
最後に検討するのが、もっと簡単にできないか?です。
ここまで考えてきても、まだ無駄な業務が残っている場合には、もっと簡素なやり方で目的を達成できないか?を考えます。
- 業務プロセスを改善する最初は、その業務の目的を明確にすること
- 同じ作業を繰り返す業務プロセス(例:転記など)には、必ず無駄がある
- ECRSの原則を活用して、業務を改善していく
この記事では業務プロセス改善のやり方をお伝えしました。ただ、実はそれでも上手くいかない組織が多いのはやり方以前の「準備」ができていないからです。次回は、その準備についてお伝えします。
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