前回は、受託開発や派遣/SESと比べると、SaaSはお金の流れが大きく変わるビジネスであることをお伝えしました。
この違いを理解頂いた上で、改めてSaaSが提供しているものは何か?を考えてみます。
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受託開発が売るのはシステム、SaaSは・・?
受託開発が直接的に提供しているのはシステムそのものです。契約は請負であることがほとんど。すなわち、IT企業・ベンダーがシステムを完成・納品させることを約束します。顧客が、その仕事の結果に対して報酬を支払う、という契約を交わしています。
このような契約を双方が合意して結んでいる以上、どんなに綺麗ごとを言ったとしても、IT企業側の責任はシステムを完成させて納品することです。納品後に、顧客がシステムを使いこなせなかったとしても、この請負契約上は、一切問題ありません。(もちろん、ビジネス的にもモチベーション的にも、納品したシステムは上手く使って欲しいのですが)
一方、SaaSを中心とするクラウドの契約は、あくまでも利用権です。IT企業側がシステムを構築・保有して、その一部を顧客に使っていいよ、と。月払いで利用権を得ているという意味では、スポーツクラブと同じようなものです。
顧客を維持しないと投資が回収できない
スポーツクラブは、最初に土地・建物・設備を準備してから営業を開始します。大きな投資が必要です。この投資を回収するためには、会員を増やさなければなりません。
SaaSも同様です。最初にシステム開発とマーケティングに投資をします。この投資を回収するためには、顧客を増やさなければなりません。初期の開発を回収するまでに、何社(何人)の獲得が必要なのか、開発を始める前に算出しておきましょう。
初期開発に対する投資を回収しつつ、月々のランニング費用を上回る収益を得るための顧客数を獲得するのが、当面の目標になります。このように投資回収の視点から見ても、SaaSでは顧客に使い続けていただくことが、非常に大切になります。
利用継続のため、販売後に何を提供するか?
使い続けていただくためには、単に顧客にシステムの「利用権」だけを提供しても、足りません。顧客に成果を上げてもらうには、システムを使いこなしてもらう必要があります。
そのために、例えばサポートが重要になります。システムの利用権だけでなく、質問への対応など、サポートが含まれていることが多いのはそのためです。例えば、私の利用しているSaaSで言うと、以下のようなサポートがあります。
- クラウド会計freee:チャットで質問に答えてくれる(かなり迅速)
- Zoho CRM:サポートWebから質問を投稿すると回答が得られる
クラウドは月額単価が安いので、何でも人が対応してしまうと、いつまで経っても赤字のままです。利益確保のためには、ある程度、利用者が自分で解決できるように誘導する仕組みも必要になります。
例えば、以下のような例があります。
- Web上にQ&Aが充実しており、利用者が検索すると多くの疑問が解決する
- 利用シーンに応じて、利用ガイドのようなコンテンツが準備されている
- 利用者同士が集まって、ノウハウを共有する場がつくられている
(サイボウズ社のサイボウズ・カフェが有名) - ツールを活用するための教育プログラムが準備されている
有料のものもあれば、無料のものもあります。ツール・システムの利用料は安く抑えて、教育プログラムなどで稼いでいるサービスもあるようです。
システムをどうすれば上手く使い続けていただくか。どうすれば成果を挙げていただけるか。SaaSの提供ベンダーは、そこに向き合い続ける必要があるのです。
- SaaSは使い続けてもらわないと利益がでない
- 使い続けてもらうためには、顧客が成果を実感できなければならない
- そのために必要なサービスをツール/システム以外にも用意する
この連載の目次です。
- 受託開発からサービス(SaaS)へシフトできない理由
- サービス提供型ビジネス(SaaS)へのシフトで注意すべきスキルの差
- SaaSにシフトするために超えるべき「お金の流れ」
- SaaSが提供しているもの(価値)は何なのか? (←この記事)
- 実例から学ぶ、受託開発からSaaSへシフトするために大事なこと
- SESや受託開発からSaaSへ移行するための第1ステップ
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