人間学

なぜ組織における致命的なミスはなくならないのか?

グループシンク(集団浅慮)という言葉があります。
「三人寄れば文殊の知恵」が示す通り、人が集まることによって、より良いアイデアが出てくるはずが、逆に集団になることによって致命的なミスをしてしまうことです。

なぜ組織による致命的なミスがなくならないのか?
深いテーマですが、私が最近感じたことをお伝えいたします。

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東日本大震災で大川小学校で起きたこと

東日本大震災における津波で、現地に居た70数名の児童のうち、74名が死亡あるいは行方不明となった石巻市立大川小学校。教職員も11名中、助かったのは1名だけです。

大川小より海に近い学校はもちろん、もっと海から遠い、上流の学校や保育所も逃げています。大川小学校だけが、周囲と比べても甚大な被害を出し、学校の管理下にある子どもが犠牲になった事件・事故としては戦後最悪の惨事となりました。

大津波警報が発令され、防災無線やラジオ、市の広報車がさかんに避難を呼びかけていました。スクールバスは待機していましたし、体育館裏には小さな子供でも登れる山がありました。その山では体験学習も行われており、子ども達は実際に登ったことがありました。

(震災当日、山に逃げた子ども達もいましたが、指示によって校庭に戻されてしまっています・・)

地震発生から51分、大津波警報発令からでも45分。
ずっと校庭に居続けて、移動を開始したのは津波が来る1分前。
しかも、津波が来る川に向かって移動してしまいました。
そして15時37分、津波が大川小を飲み込みました。

避難するための時間、情報、手段は、十分にあった。
しかし、実際には命を守ることができませんでした。
なぜ、50分間も校庭にとどまってしまったのでしょうか?
なぜ、子どもを守る組織として機能できなかったのでしょうか?

(悲しすぎる子ども達からのメッセージ。私たちが行動しなければならないでしょう)

グループシンク(集団浅慮)が起きていないか?

私は、この事故で次女を失い、小さな命の意味を考える会 代表を務められている佐藤 敏郎さんの話を聴く機会を頂きました。
事実など詳細は、こちらのページを参考にしていただけたらと思います。

佐藤さんからは、次のような言葉がありました。

「先生が11人ではなくて1人だったら、事故は起きなかったのではないか?
そうだとしたら、組織の問題です。」
「そもそも先生が1人も居なかったら、助かったのではないか?
そうだとしたら、学校の問題です。」

この言葉が、組織における問題の核心を突いていると感じます。

1人1人の先生は、子どもを大切に想う人ばかりでしょう。
でなければ、小学校の教員などやりません。
しかし、それが組織になった途端、正しい判断ができなくなったのです。

さらに、市教委や検証委員会も、証言のメモを廃棄したり、記録を改ざんしたりと、まともに事故に向き合おうとする姿勢はありませんでした。
これも1人1人の意思ではなく、組織になった途端におかしな方向へ向かった結果でしょう。

一言でまとめれば、「責任を問われないようにする組織構造・文化」です。
子どもの命を最優先するはずの組織において、責任を問われないようにすることが、第一優先となっていたのではないでしょうか。

組織が本来担うはずの使命、すなわち本質を忘れ、ズレた方向へ意思決定されていく。
なぜそんなことが起きてしまうのか?
私たちが、この問題を正面から受け止めなければなりません。

同じ構造の問題が散見されている

今回、大川小学校の話をじっくりと聴く機会に恵まれました。
失った子ども達の命が戻ってこない以上、私たちはせめて、できることをしなければならない。そう痛感しました。

大川小学校の話を聴いて、同じ構造の問題がどこでも起きているのでは?と感じました。

  • 森友学園の事件で自殺した官僚
  • 電通で長時間労働を強いられて自殺した社員

表面的には全く異なる学校・行政・民間企業の出来事ですが、根本問題は全て同じなのではないでしょうか。

組織は本来、何らかの目的を持って生まれているはず。
しかし、いつの間にか、その組織や組織の重鎮を守る・私腹を肥やすことが目的にすり替わっている。

大川小学校の件では、当日不在だった校長の方針(事なかれ主義)が、当日の判断を鈍らせたと考えられています。
震災の2日前にも大きな地震が起きて津波警報が出ていたものの、避難しなかったそうです。

日頃、色んな組織とお会いしますが、同じような問題を日々感じています。

「社長の言った通りにしないと怒られる」
「あの人(上司)には、何を言っても無駄だから、言われた通りにやるしかない」
「上司に提案をしたけれど、『オマエは言われたことをやってればいい』と却下された」

このような組織文化・価値観の結果が、大川小学校という場所で表面化してしまったのだと感じています。

単に防災をしっかりしようとか、そういう表面的な問題ではありません。
組織をマネジメントする立場の人はもちろん、組織に関わる私たち全員が、もっと本質を大切にする。
誰もが意見を言える対話型の組織をつくり上げていく。

組織の存続や、特定の人の私腹を肥やすことを目的とするのではなく、組織の存在意義・理念・ミッションを果たすことを目的に行動する。

1人1人が組織とは何なのか?を本質的に考えることが、求められています。
もうこれ以上、犠牲者は要りません。

まとめ
  • 大川小学校で起きた事故は、組織のグループシンク(集団浅慮)が原因
  • 同じ構造を持った問題は、社会のあちらこちらで散見される
  • 組織のマネジメント層だけでなく、全員が組織の本質を考えるべき

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【編集後記】
佐藤 敏郎さんの話は、涙なしには聴けませんでした。
ほぼ同じくらいの子どもを持つ親として、同じような構造の問題を抱える組織を見ることの多い者として、深く考えさせられました。
私にできることを、小さな行動でも、起こしていこうと思います。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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