経営

マネジメントの本質とは何なのか?(どうやって望ましい状態を実現するのか?)

「マネジメント」というと堅苦しい印象を受けませんか?
特にそれが管理職を示した場合、私にとってはやりたくない仕事の代表例でした。
この記事では、そもそもマネジメントとは何なのか?具体的に何をすれば良いのか?をご紹介します。

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マネジメントとは対象の望ましい状態を何とかして実現していくこと

ドラッカー学会年報『文明とマネジメント(2018)』に興味深い論文が掲載されています。32ページからの『マネジメントのメタ理論MDPS(マドプス)の構築』です。

マネジメントは「経営」や「管理」と訳されることが多いものの、その本質が良く分かりません。この論文を読むと英語の manage to~に関連させて、

マネジメントの役割とは、対象の望ましい状態を何とか実現していくことである

と書かれています。
これならば、ライフマネジメントやアンガー(怒り)マネジメントに対しても、しっくりくるように思えます。

さらにマネジメントの対象は複雑系であると重要な指摘をしています。
「料理をマネジメントする」とは言いません。
一方、「プロジェクトマネジメント」「会社のマネジメント」「タイムマネジメント」とは言います。

この違いは対象が複雑系であるかどうか?です。
具体的には、各要素が相互作用しながら変化し続けることです。

料理の対象となる具材は単純系です。
トマトを切ったからと言って、ピーマンは変化しません。

一方、プロジェクトであれば、1人が休んだことによってタスクに遅れが生じます。
それをリカバリーするためには、別チームのタスクを調整して・・というようにお互いが深く関連しているのです。

  • 対象は複雑系である(しかも人間に関わる)
  • その複雑系の対象を何とかして望ましい状態にすること

これがマネジメントの本質です。

具体的に何をすれば良いのか?

ここまでは言われてみると、「確かにそうだよな」で終わります。
マネジメントの本質が分かったからと言って、実際にマネジメントできるようにならなければ意味がありません。

本論文では「マネジメントの原理」として、どのようにマネジメントするか?を説いています。

どのようにマネジメントすればよいかは、マネジメントする

  1. 目的と
  2. 状況と
  3. 対象

によって変わる

これも言われてみればその通りです。
ただ、これまで様々なプロジェクトや事業、組織に関わってきて感じるのは、上手くいかないプロジェクトほど以下のような特徴がありました。

  • 目的が不明確(「望ましい状態」が不明確ならば、そこに到達できるはずがない)
  • 現状が正しく把握できていない(現在地が分からなければ、地図は機能しない)
  • マネジメント対象が狭すぎる(外注担当部分は丸投げして、マネジメントできていないなど)

少なくとも、「望ましい状態」を明確にして、それを組織内で共有する。
状況を正しく把握する。
望ましい状態にもっていきたい対象を明確にする。
という取り組みは必要に思えます。

複雑系のマネジメントにコントロールパラメータを導入する

さらに、複雑系をマネジメントするためには、コントロールパラメータ(CP)を挙げることが説かれています。

単純系であれば、何かの原因に対して、直接的な結果が生まれます。(図の左側)
しかし複雑系では、1つの要素が変化すると、それが他の要素を変化させます。(図の右側)

経営を例にとると、人・モノ・お金・情報などがコントロールパラメータになるでしょう。
そしてこれらが相互作用しているのです。

複雑系の科学(DSA:ダイナミック・システムズ・アプローチ)をマネジメントに適用したものとして、本論文ではMDPS(Management based on Dynamical Parameter Systems)として提唱されています。

具体的な進め方を見てみましょう。

  1. マネジメント対象に応じて、事業や自分が実現したい望ましい状態を決
    める
  2. それを実現するために必要なパラメータを考え得る限り挙げていく
  3. そのパラメータの現在の充足度を推定する
  4. 見出したパラメータと推定値をExcelなどの表計算ソフトに入れて、グ
    ラフを作成する
  5. 足りないパラメータについては、どうすればそれらのパラメータを向上
    させ、望ましい状態を実現するラインをクリアすることができるのかを
    検討し、具体的な方法や仕組みを実装していく
  6. 定期的に状況の変化に応じたパラメータの見直しを行い、望ましい状態
    を実現するために必要な調整を行っていく

先日、実際にMDPSを使っている3人の方から、お話しを聴くことができました。

  • 自分の幸せを実現するための個人の方
  • 20名ほどの歯科医院を経営されている方
  • 800名ほどのIT企業を経営されている方

印象に残ったのは以下の点でした。

  • 個人から大企業まで、同じ考え方で活用できるので、MDPSは使いやすい
  • 全員がコントロールパラメーター(CP)の洗い出しには時間が掛かっている
    対象が複雑系なので、サラッとCPは整理できない。
    むしろ大企業では一緒にCPを洗い出してもらうように働きかけることが重要。
  • CPの達成度合いを主観だけでなく客観で評価できるようにすることが重要
    特に人数が増えるほど。

3人の話を聴いた後、私も自分であることに対して CP が何か?を探し始めました。
単に「ありたい姿」を描くだけよりも、CPを探すことで、それを「何とかして実現する」という思考に入りやすくなります。
「絵にかいた餅」で終わらせずに実現させるためには、MDPS活用をお勧めします。

まとめ
  • マネジメントの本質とは、何とかして実現していくこと
  • マネジメントの対象は、要素が相互作用しあう複雑系である
  • MDPS を活用して、実現に向けてコントロールパラメータをチェックする

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【編集後記】
こんな感じで、最近は論文を読むことが増えてきました。
学生のうちから、こういう勉強をちゃんとやっておけばなぁ~と、毎度思うのです。。


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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