IT・システム全般

アップルの新CPU「M1」は何がすごいのか?(経営者なら知っておきたいTips)

アップルの新しい CPU「M1」が話題ですよね。
Macbook Air/Pro、Miniなど、購入した人の反応を見ていると「速い」という声が多いようです。

ところで、アップルの M1は何がすごいのでしょうか?
経営者として知っておきたいことをお伝えします。

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CPUにおける2つの系統

M1の何がすごいのか?の前に、前提条件として巷にあるCPUは大きく2つの系統があります。Intel系とARM系です。

インテルはパソコン市場の拡大と共に成長してきた会社。
昔は「インテル入ってる」というCMがありましたよね。(オッサンしか知らない??)
マイクロソフト Windowsと共に市場を席巻していました。

ちょっと専門的な話になりますが、CPUのアーキテクチャ(設計)には大きく2つあります。
CISC(Complex Instruction Set Compute)とRISC(Reduced Instruction Set Compute)です。

CISCで成長してきたIntel

前者は1つの命令で様々なことをさせることができるCPU。
インテルのCPUはCISCです。
ひたすら性能を重視して、ここまで成長してきました。

「トランジスタの集積度(≒CPUの性能)は、18ヶ月毎に倍になる」という「ムーアの法則」というものがありました。
この成長速度を活かして、パソコン・コンピュータ業界は成長してきたのです。

10数年前くらいまでは、パソコンを自作する人を中心に、CPUのクロック数を争うことが1つのステータスになっていました。
現在でもパソコン・サーバー市場の主役はインテルです。

ただ、このムーアの法則には限界が来ています。
既に集積度が原子レベルに近づいているためです。
昨今では、インテルCPU単体の性能は、かつてほど伸びなくなってきました。

スマートフォン・タブレットに活用されているRISCのARM

一方のRISCは、1つ1つの命令を単純化することにより、効率化を追求してきたCPUです。

現在はスマートフォンやタブレット、その他組み込み機器に利用されています。
一般の人にはあまり知られてない存在ですが、「ARM」という会社が採用しているのがRISC。
(2016年にソフトバンクが買収したとき、少しだけ話題になりました)

インテルのように自社でCPUをつくっている会社ではなく、ARMアーキテクチャを他者へライセンスしています。
私たちは気づかないうちに、ARMとの関りを持っているのです。

スマホ・タブレット・組み込み機器に使われていることから、単なる性能ではなく「消費電力当たりの性能」が重視されてきました。
昨今、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の広がりと共に、注目を集めています。

また、地球規模でのエネルギー対策が必要とされていることからも、ARMへの期待は高まっているのです。

M1はARMの流れ

ここで アップルの M1に話を戻しましょう。
アップルは現在のMacには、Windowsパソコンと同様にインテルの CPUを採用してきました。

より遡ると、CISCのモトローラ68系(1984年)→RISCの PowerPC(1994年)→インテル(2006年)という変遷です。そして2020年に自社製の M1が投入されました。

2006年から10年以上、インテルの CPUを採用してきましたが、ここで大きな変更をしたことになります。

M1は ARM系のCPUです。
インテルに別れを告げて、単なる性能というよりは消費電力当たりの性能を重視する姿勢に変わったといえます。

なお、CPUが CISCから RISCに変わっているので、ソフトウェアはそのままでは動かなくなります。
過去2回、大きなCPU変更を経験してきたアップルですから、今回もできる限り顧客に不便が起きないよう、手を打ってきているようです。

パソコン・スマホ・タブレットがシームレスにつながる世界

アップルは、テクノロジーよりも、顧客体験を重視する会社です。
Macや iPhone/iPad が美しい箱に収められているのも、アップルストアの雰囲気も、顧客体験を重視していることの現れでしょう。
(業界標準の技術を構築して、それを世に広めようとするグーグルとは、対極的な会社です)

そんなアップルですから、単に消費電力当たりの性能を高めるためだけに、CPUを変えたりしません。
上述のように、これまで使っていたソフトウェアが動かなくなるリスクもありますので。

そんなリスクを冒してまでアップルが M1 にシフトしたのは、パソコン(Mac)・スマートフォン(iPhone)・タブレット(ipad)がシームレスにつながる世界を目指したからです。

具体的には、スマホ・タブレットで使っていたアプリが、Mac上で使えるようになっていきます。
利用者にとっては非常にありがたい世界ではないでしょうか。

新型Macを使っている人から聞く限り、消費電力当たりの性能を高めたと言いつつ、実際に「速くなった」と感じている人が多いようです。
この辺りを妥協しないあたりが、アップルらしいですね。

業界再編が起きるのでは?

パソコン・コンピュータ業界

私は、このアップルの動きがキッカケになり、パソコン業界が大きく変わっていく可能性すらあると考えています。

今回は話がややこしくなるので、CPUのことしか書きませんでしたが、M1は以下のような変化も起こしました。(機会があれば、別記事で書こうかと)

  • CPUだけでなく、GPU(Graphics Processing Unit)業界の主要プレーヤーも変え得る
  • スマホ・タブレットでは一般化していた SoC(System on Chip)をパソコンに持ち込んだ

これは他社が簡単に真似できることではありません。
年間2億台もの iPhone 販売が見込めるアップルだからこそ、打てる手段なのです。

パソコン・スマホ・タブレットがシームレスにつながる世界をつくれるのは、今のところアップルだけです。
グーグルも Androidのスマホ・タブレット、Chromebookのパソコンをつくっていますが、ハードウェアを含めたトータルな設計をしてくる気配はありません。

少なくとも消費電力当たりの性能でアップルに追いつく会社は、1~2年は現れないのではないでしょうか。

自動車業界にも影響が?

影響はパソコン業界だけには留まりません。
次に影響を受けるのは自動車業界かもしれません。

アップルがパソコン・スマホ・タブレットのCPU(と言うよりCPUを含んだSoC)の覇者になったとすると、組み込み機器市場においても圧倒的なポジションを取ることになります。

アップルは自動運転車へのプロジェクトを動かしていることが度々ささやかれています。
つい先日、こんな記事も出ました。

https://jp.techcrunch.com/2020/12/22/2020-12-21-the-apple-car-chatter-is-back-with-new-reports-pointing-to-a-2024-launch-date/

自動運転車の頭脳がアップルの CPUになる。
ユーザーインターフェースは使い慣れた iPhoneや Mac に近いものになる。
そんな可能性が、M1の登場によってグッと引き上げられたように感じています。

日本の自動車業界は、足元ばかり見ているのではなく、このような大きな動きに対応しないと、市場を根こそぎ持っていかれる可能性があると考えています。

パソコン業界に関わる人も、それ以外の業界・特に自動車業界や電子機器業界などに関わる経営者は、アップルの動きから目を離さない方が良いでしょう。

まとめ
  • アップルのM1は消費電力当たりの性能を極限まで高めたCPU
  • パソコン・スマホ・タブレットがシームレスにつながる世界を実現する
  • パソコン業界だけでなく、自動車業界などにも影響を及ぼすのでは

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【編集後記】
M1、私も体験したいのですが、既に我が家はパソコンが余っている状態でして。
そろそろセカンドパソコンを家族に譲って、私は新しいMacを・・(笑)


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渋屋 隆一
プロフィール
マーケティングとITを駆使した「経営変革」「業務改善」を得意としています。コンサルティングや企業研修を通じて、中小企業の経営支援をしています。中小企業診断士。ドラッカーや人間学も学び中。趣味はトライアスロン・合気道。 詳細はこちらです。
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