自社に直接影響するミクロ環境だけでなく、世の中の大きな動き(マクロ環境)を知ることは、経営者にとって重要です。そのなかでIT(情報技術)の動きを知るのに良い材料の1つがガートナー社がリリースしている「ハイプサイクル」です。
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ハイプサイクルとは何か?
8月30日にガートナージャパンは「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表しました。(プレスリリースはこちらです)
ハイプサイクルとは「新技術がいかにして・いつ次の段階に進み、実際に利益を生み出し、そして広範に受け入れられるか」示すモデルです。
新技術は過度の興奮や誇張(hype、ハイプ)がされやすいです。例えば最近の5GやAIに関するメディアやネットにおける解説を聴いていると、明らかに過度の期待がなされていると感じます。また、過度に期待してしまうがゆえに、それに続く失望も大きくなりがちです。
そのような感情を考慮して、ハイプサイクルでは、各技術が置かれている状況を以下の5つに割り当てています。
- 黎明期(技術の引き金)
- 流行期(過剰期待の頂)
- 幻滅期(幻滅のくぼ地)
- 回復期(啓蒙の坂)
- 安定期(生産性の台地)
上述の8月30日のプレスリリースでは、先進テクノロジーのハイプサイクルは下図のようになっています。
これによると自律走行(レベル4)は、「過度な期待」のピーク期を超え、実用が近づいてきていることが示されています。5Gは正に「過度な期待」のピークにある状態です。半端な理解をして採用するのではなく、その本質を見抜くことが求められます。
また自律型飛行機/空飛ぶ車は、まだ黎明期です。基礎技術を積み上げている段階と考えて良いでしょう。
ハイプサイクルの良いところは、各技術の状態がひと目で分かるので、自社で採用するかどうかをザックリと・瞬間的に決定できることです。もちろん、後述するように弱点もあるので、他の情報を補完する必要はあるでしょう。
魔の川、死の谷、ダーウィンの海とは?
ハイプサイクルはガートナー社が出しているものですが、技術経営全般に関して言うと「魔の川・死の谷・ダーウィンの海」という有名な考え方があります。
- 魔の川:「研究」から「開発」に至るまでに存在する障害
- 死の谷:「開発」から「事業化・製品化」に至るまでに存在する障害
- ダーウィンの海:「事業化・製品化」から「産業化」に至るまでに存在する障害
「研究」という基礎技術の追求をしても、必ずしも「開発」につながるとは限りません。むしろ「開発」まで至る基礎技術は少なくて、魔の川に多くの基礎技術が阻まれているのです。同じことは死の谷・ダーウィンの海にも言えることです。
研究や開発を行っている企業は、例えば「開発に移るときに失敗しやすいこと」を知ることで、自社の失敗を避けて、いち早く成功に結びつけることができます。このように、「魔の川・死の谷・ダーウィンの海」の考え方は、自社で研究や開発から事業化・製品化まで担う事業に合っているでしょう。
一方、ハイプサイクルの方は自社が取り扱っていない技術を含めて、網羅的に調査するのに適しています。
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ハイプサイクルから何を読み解くか?
ハイプサイクルで注意すべきことは、各技術が置かれている5つの状態は、客観的な根拠に基づいたものではないことです。「ハイプ=過度の興奮や誇張」が示すように、報道のされ方などが評価の中心にあることは否めません。
また日本市場に特化したハイプサイクルでない限りは、あくまでも世界全体における評価になっています。ハイプサイクルを見たときに「この技術、そんなに進んでないでしょう!」とツッコミを入れたくなるときがありますが、それは私の視点が日本市場に特化しているからです。
このような注意点はあるものの、ひと目で最新技術の状態・トレンドが分かるハイプサイクルには価値があります。詳細な資料はガートナー社と契約しないと見られませんが、ニュースリリースなどで公開されるものを、ざっと見るだけでも得られるものはあります。
最後に可能であれば、ハイプサイクルは単年で見るのではなく、複数年で見ましょう。前年からの変化を見ると状態が進んだ技術・消えた技術などを読み解くことができます。
- ハイプサイクルは最新技術の状態をひと目で把握できる
- 各技術を黎明期・流行期・幻滅期・回復期・安定期の5つの状態に分ける
- 注意すべき点を知りつつ、上手に活用したい情報源
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